この記事をまとめると
■新型のクラウンは4つのモデルから構成される
売れなくなった「クラウン」から脱却……はわかるけどココまで様変わりしても「クラウン」を名乗る意味とは
■世界40カ国でも販売されることが決まっている
■賛否が多い話題のクラウンをデザイン面で考察する
デザイン面から新型クラウンが持つ”らしさ”を考えてみた
7月15日、4つのボディスタイルで発表となった新型クラウンが話題です。この16代目は40カ国・地域での展開と、これまでの国内専用から世界戦略車へ脱皮しましたが、では、それぞれのボディに「クラウンらしさ」はあるのでしょうか? ここではデザインの視点でチェックしてみましょう。
●正常進化のセダンと対になるクロスオーバー
あらためて4つのボディを見ると、スタイリングとしては明確に「セダン」とそのほかの3車型に分けることができます。もともとは15代目のマイナーチェンジが予定されていたそうですが、なるほどセダンは先代のクーペルックをそのまま踏襲しており、よりシャープな面構成が新しさを打ち出しています。
大きな変更点としては、今回のシリーズに共通した薄型ランプ類による顔つきでしょう。LEDをフル活用した横一文字のライトと巨大なグリルは、「キーンルック」と「アンダープライオリティ」を掲げた近年のトヨタデザインを代表する表現です。それでも、セダンは先代の正常進化版といえるでしょう。
では、そのほかの3つのボディはどうでしょうか。まず、トップバッターとなる「クロスオーバー」ですが、これが新世代クラウンの本命であったか、そうでなくても3車型のキーデザインであることが見て取れます。
ついに5メートルを超えたセダンに近い4930mmの全長や、SUVでありながらトランクを持つ3ボックス的なパッケージが、これ1本でも完結できることを示しています。また、派手なバイトーンの展開も、とびきりの勢いや目立ち度という点で本命感があるのです。
1番の本命はクロスオーバーと考えられる
●横展開でコマをそろえたスポーツとエステート
さて、巷では顔がフェラーリに似ているという「スポーツ」ですが、クロスオーバーより200mm以上短く、20mm高くなったボディは、どちらかというと欧州を中心としたハイパフォーマンスSUVに切り込む役割があるように見えます。BMWの「X6」やアウディの「Q6」、あるいはメルセデス・ベンツの「GLE」もカバーしそう。リヤのクセのあるランプ形状なども、そこで生き残るための個性と考えられます。
残る「エステート」も、かつてのクラウンワゴンの後継というよりは、これもまたドイツプレミアム勢のワゴンタイプや、あるいはボルボなども仮想敵なのでは? と思わせます。クロスオーバーと同一の4930mmの堂々とした全長や、スポーツとは異なるスッキリしたリヤランプまわりのデザインもその理由です。
3つのボディはいづれも曲面基調で、躍動感を持つエモーショナルな面構成がセダンと異なる特徴です。とくに、小さく見せたキャビンや、ドアからリヤに向けて大きく張り出したフェンダーが共通の造形。いずれも、近年のトヨタ的なアグレッシブさを前面に出したスタイリングです。
●どのボディがクラウンらしいのか?
では、どのデザインもクラウンらしいか? と言えば少々疑問で、商品企画的には、先述のとおり流行のSUVとセダンを融合したクロスオーバーに説得力を感じる一方、セダンはこれに対する保険であり、スポーツとエステートは華々しいデビューを演出する予備駒なのでは? と思えます。
つまり、クロスオーバーには可能性を感じるものの、セダンの存在がそこを曖昧にしてしまっているのです。もちろん、4つものボディを用意する手法はトヨタでなければできない芸当ですし、4枚のカードを提示してユーザーに選択させ、今後のクラウンの方向性を確認するところにも、トヨタらしいリサーチ力を感じます。
ただ、クラウンという名前を継続すると決めた以上、個人的にはもう少しメーカーの「自信」を期待したいところ。マツダの「VISION COUPE」ではないですが、「トヨタが目指す未来の高級車はこれだ!」という明快なアナウンスがあってもいいのではないでしょうか。
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