メルセデス、BMWの両ブランドが擁する、いわばハウスチューナーのボトムエンドを支えるコンパクトクーペ対決。AMG CLA45SとM2 CSはともに昨年発表された高性能モデルだが、その志向と仕立て方は180度といっていいほどに異なる。ようやく経済の立て直しを探り始めた本国ドイツで両車を借り出し、そのあたりを鮮明にするべく比較試乗を敢行した。
BMW M2 CSはストイックなセミレーシング仕立て
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マルクス・フラッシュを新社長に迎えたBMW M社の2019年における総販売台数は、前年比32.2%プラスとなる13万5829台と記録的な実績をマーク、メルセデスAMGの13万2136台を上回り、ついにセグメントのトップに立った。成功の要因は新社長の戦略に基づくMパフォーマンスモデルの追加設定やSUVへの本格参戦などが挙げられる。さらに、彼はこれまで不規則な販売戦略だった「CS」を、Mモデルの1バリエーションとしてカタログモデルに加えると発表している。すなわち、オープンロード向けのM3やM4、M5に設定している「コンペティション」に加えて、サーキットユースをも前提とするのが「CS」ということになる。
その最新モデルが昨年のLAショーに登場したM2 CSで、M2コンペティションをベースに、セミレーシング仕立てとするべく様々なチューニングを施している。
エンジンは開発コードS55、M4コンペティションのそれをコンバートした3L直6ツインターボで、最高出力は450ps/6250rpm、最大トルクは550Nm/2350−5500rpmを発生。組み合わせるトランスミッションは標準で6速MT、オプションで7速DCTとなる。0→100km/h加速はMTで4.2秒、DCTで4秒フラット、最高速度は標準で両車250km/hだが、ハイスピードトレーニング込みのMドライバーズパッケージをオプションで購入すれば280km/hまで上限を高めることができる。
全長4.46mの2ドアボディはルーフ、ボンネット、ドアミラー、前後スポイラー、ディフューザーをカーボン強化プラスチック製に換装。インテリアではドアグリップやセンターコンソールなどを同様の素材として、全体で計50kgの軽量化を果たしている。
走り出した瞬間、スロットルの動きに俊敏に反応するS55ユニット、カーボンボンネットを通して耳に伝わる吸気音、そして後方から響き渡るエキゾーストノートが全身を刺激する。比較的小径のタービンによってターボラグはほとんど感じられず、パワーが淀みなくスムーズに湧き上がってくる。若干気になるのはテスト車が搭載する6速MTで、ギア比は適正なのだがシフトストロークがやや大きく、素早い操作を妨げる。レブシンクロサポートも好き嫌いがあると感じた。というわけで、個人的なお勧めは7速DCTで、およそ35kgの重量増加にもかかわらず、前述のとおり100km/hまでのスタートダッシュはMTよりコンマ2秒も速いのだ。
M4譲りのコンペティティブなシャシーは率直に言ってハードな設定で、特に低速では路面からのショックを正直に伝えてくる。フラットな路面コンディションであれば速度を上げるにつれてスムーズさを増してくるが、基本はダイレクト。もちろんハンドリングは鋭く、指1本分の動きに対してノーズはリニアに反応する。フロント400mm、リア380mmのM専用のベンチレーテッドディスクブレーキも余裕綽々で、あらゆる状況下でコントローラブルかつ確実な制動を約束してくれる。
このようにストイックなまでのハイパフォーマンスがM2 CSの魅力であり、だからこそ一般ユーザーに手放しでお勧めできないというのも正直なところだ。この点はもう少し詳しく後述しよう。
日常性を加味すると選択は大きく左右
M2 CSのコンペティターとして取り上げたのは、アストン・マーティンへ移籍した前社長トビアス・メアースの置き土産、世界最強を謳う2.4気筒エンジン搭載のAMG CLA45Sだ。開発コードM139のシングルターボは最大過給圧2.1バールで、最高出力421ps/6750rpm、最大トルク500Nm/5000-5250rpmを発生。トランスミッションは8速DCTが標準で、0→100km/h加速は4秒フラット、最高速度は標準で250km/h、AMGドライバーズパッケージを選べば270km/hまで引き上げることが可能だ。
ハイテクデジタルディスプレイに囲まれたコクピットに収まりスターターをプッシュすると、ハイチューンユニットであることを隠そうともしない、ややラフな、それでいて安定したアイドリングを開始する。ドライブモードをスポーツにセットしてスタートすると、すぐさま電光石火のダイナミックな加速を披露。ただしこのモードでのターボラグはM2 CSの方が明らかに小さく、比較的大径のタービンと過給圧でパワーを稼ぐCLA45Sは、特にノーマルモードでは加速に一瞬のためらいをみせる。一方のシャシーは柔軟な設定で、レースモード以外なら、引き締まってはいるものの快適な乗り心地を提供してくれる。
そう、こと日常性を加味すると、M2 CSはスパルタン、ピューリスティックすぎで、見方によっては控えめなアピアランスから想像するより、そのパフォーマンスはずっと過激だ。近くにサーキットがあり頻繁に通える人のサードカーなら最適、ハードな乗り心地を我慢すればセカンドカーとしても使えなくはない。限定生産ではなく、需要がある限り生産を続けるというM社の姿勢は、いたずらに投機家の介入を煽ることがないはずで好感は持てるのだが。
一方のAMG CLA45Sは、後席にアクセスしやすい4ドアボディ、ハイテクでモダンなインテリアが魅力。4マチックによる卓越したトラクションとロードホールディングを発揮するシャシーは、日常での使用においても大いなる利点だ。もちろんその気になればレースモードでサーット走行もこなせる。つまり左脳、理詰めでいえばがお勧めだ。
ただし、決定的なのは価格と販売台数で、AMG CLA45S 4マチック+は856万円なのに対して、M2 CSは6速MTが1260万円、7速DCTは1287万円。さらにM2 CSは本国の方針とは異なり日本ではわずか60台の限定発売、すでに完売といわれている。これが現実なのだ——。
【Specification】BMW M2 CS
■全長×全幅×全高=4461×1871×1414mm
■ホイールベース=2693mm
■車両重量=1575kg
■エンジン種類/排気量=直列6気筒DOHC24V+ツインターボ/2979cc
■最高出力=450ps(331kW)/6250rpm
■最大トルク=550Nm(56.1kg-m)/2350-5500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ダブルウイッシュボーン:5リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク/Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/35ZR19:265/35ZR19
※数値はすべて本国仕様
【Specification】MERCEDES-AMG CLA45S 4MATIC+
■全長×全幅×全高=4693×1857×1413mm
■ホイールベース=2729mm
■車両重量=1675kg
■エンジン種類/排気量=直列4気筒DOHC16V+ターボ/1991cc
■最高出力=421ps(310kW)/6750rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/2350-5500rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:4リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク/Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/35ZR19:255/35ZR19
※数値はすべて本国仕様
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みんなのコメント
2.4気筒とは何?笑
カタログモデルでいいのの。。