いまやスーパーカーブランドもSUVを世に送り出す時代。そんな中、クーペSUVの元祖といえるX6の現在の立ち位置はどこにあるのだろう。最近では2023年4月に大幅改良を受け、全車ハイブリッド化した。それはここでご紹介するX6 Mコンペティションも例外ではない。他にはない強い個性とインパクトをもつ、この最新モデルの真価を試した。(Motor Magazine2023年11月号より)
X6 Mが見せた加速感はまるでレーシングカー
今でこそ多くの車種が存在しているが、BMWではSAC=スポーツアクティビティクーペと呼ぶSUVクーペというカテゴリーを開拓した元祖が初代X6だ。
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大柄なSUVの下半身にクーペの上半身を組み合わせた異様な姿を年前に初めて目にしたときの衝撃は今でも忘れない。
登場当初は4人乗りで、利便性が大事なはずのSUVをクーペにしたことへの驚きと、このカタチがカッコいいのかどうかという不思議な気もしたものだが、斬新なものを好む筆者は、いつのまにかすっかり引き込まれていった。
ほどなくライバルが続々と現れ、BMW内に弟分が増えても、元祖であるX&6はカテゴリーを代表するモデルとして君臨する。
現行型は2019年に登場した第3世代となり、このほど内外装をよりモダンなデザインとしたほか、機能面でも進化をとげた。2種類のMモデルを追加したのち、ディーゼル車も発表された。
外観デザインでは、ヘッドライトにBMWとして初採用となる矢印型デイライト機能を有したLEDヘッドライトが与えられたほか、フロントバンパーが大型化された。さらに、暗闇で光を放ち存在感を増すアイコニックグローキドニーグリルとされたことで、夜間の存在感が増している。
インテリアにおいては、現行世代のBMWのラインナップでおなじみになった、カーブドディスプレイが採用された。12.3インチのメーターパネルと一体化させた14.9インチのコントロールディスプレイにより、iDriveコントローラーまわりがすっきりとまとまったのもありがたい。
始動する瞬間から高揚感をかき立てる演出
試乗したピュアMモデルの「X6 Mコンペティション」は、Mパフォーマンスモデルとなる「X6 M60 iDrive」と400万円近い価格差があり、エンジン形式は同じながら100ps近く最高出力が高く、装備も全体的に差別化されている。
4.4L V8ツインターボ+8速ATのパワートレーンには、新たに48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされた。
Mモデルといえば、何よりまずエンジンが命に違いないが、始動する瞬間から高揚感をかき立てる演出があり、常用する2000rpmあたりの低回転域でも野太く響く迫力のサウンドが楽しめる。踏み込むと4000rpmあたりからトップエンドにかけての音や加速感はレーシングエンジンのような雰囲気になる。
625psで750Nmのとてつもないスペックから期待できるとおり性能も申し分ない。どこからでもついてくる瞬発力と、突き抜けるような爽快で豪快な吹け上がりをいつでも味わうことができる。さすがはBMWのMモデルらしい、刺激的きわまりないフィーリングである。
48Vマイルドハイブリッドシステムは、ジェネレーターが駆動システムとして機能することで、エンジンの負荷を軽減したり、電気ターボ的に加速を上乗せさせる。
どこまでがその効果なのかはっきり体感できるものでもないが、心なしか発進時の出足や緩加速時に軽やかに感じられ、巡航時にコースティングする頻度が増えたように思えた。少しでも効率が良くなるようにと縁の下で働いてくれていることには違いない。
2.4トンの車重を感じない切れ味鋭いハンドリング
電動化が求められる世の中で、BMWもすでに多くの完全電動車を送り出し、既存ラインナップの電動化を進めてきた。一方でBMWは電動化が言われるようになった当初から、内燃機関の可能性をもあくまで追求していくというスタンスを示していた。
Mモデルの醍醐味であるエンジンの魅力を最大限に追求しつつも、できることから電動化の要素を積極的に取り入れる姿勢は歓迎すべきことに違いなく、世の中の理解も得やすくなることと思う。
シャシにも特別なアイテムがいくつも与えられる。そのひとつが、電子制御ダンパーとアクティブロールスタビライザーを備えたアダプティブMサスペンションプロフェッショナルだ。さらに操舵機構についても、前輪の切れ角を車速に応じて可変制御するアクティブステアリングに後輪のステアリング機能を組み合わせ統合制御するインテグレイテッドアクティブステアリングを搭載している。
その切れ味鋭い走りは、とても2.4トン級の車高がそれなりに高いクルマとは思えないほど。まさしく目線だけ少し高くしたクーペのような走りっぷりだ。
回頭性は極めて俊敏で、ハンドリングもまた刺激的なこと、この上ない。操作に遅れなく応答し、コーナーでもほぼロールすることなく、イメージしたラインをオンザレール感覚でトレースできる。
しかも、普通ならその引き換えに乗り心地が硬くなりそうだが、そうなっていないのも大したものだ。無駄な動きは排除しながらも、タイヤが路面にしなやかに追従していてカドが立った感覚もなく、快適性は損なわれていない。
とてつもなく高性能でありながら、いたって乗りやすい。従来では実現しえなかったような走りを現実にやってのける。数あるBMW車の中でも、その見事な両立は最たる存在かもしれない。
対価に見合うだけの価値はもちろんとして、ましてやこのクラスに興味を持つ層に訴求するには、他にはない強い個性とインパクトがあったほうが良い。その点でX6 Mコンペティションは、現時点における模範解答例のように思えた次第である。(文:岡本幸一郎/写真:井上雅行)
BMW X6 Mコンペティション主要諸元
●全長×全幅×全高:4955×2020×1695mm
●ホイールベース:2970mm
●車両重量:2400kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:4394cc
●最高出力:460kW(625ps)/6000rpm
●最大トルク:750Nm/1800-5500rpm
●モーター最高出力:9kW(12ps)/2000rpm
●モーター最大トルク:200Nm/0-300rpm
●トランスミッション:8速AT 機
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・83L
●WLTCモード燃費:7.8km/L
●タイヤサイズ:前295/35R21、後315/30R22
●車両価格(税込):2012万円
[ アルバム : BMW X6 Mコンペティション はオリジナルサイトでご覧ください ]
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