手軽にラリーに参加できる
関東デイラリーシリーズの第4戦「ソネット・ラリーin日光」が2024年9月1日に栃木県・日光で行われました。ビギナーが自分の普通のクルマで参加できて、ラリーの基本を学べて、さらに競技ライセンスも取得できるイベント、「デイラリー」を紹介します。
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普通車ならなんでもOK!
「デイラリー」は日本のモータースポーツを統括するJAFの公認イベント。2024年は関東の茨城・栃木・福島でシリーズ5戦が組まれました。競技者は走りめぐる100kmほどの総走行距離のルートにおいて、設定された区間それぞれを指定されたアベレージ速度で走行していきます。
イベント運営者は競技者には知らされていない各所に出現する通過チェックポイントで、競技車の走行タイムを計時します。そして、指定されたアベレージ走行との差異を秒単位のタイム差で審判し、指示速度通りにパーフェクトに走り切っているかどうかということで、差異の少なさが競われていきます。
ルートは公道ですので大前提として道路交通法が守られるなか、ラリー競技規則に規定されるスポーツ性を追求してゆけば、運転技術感覚、状況把握力も磨かれ、日頃のさらなる安全運転にも通じてくる競技です。
参加車両は車検に通っている普通車ならなんでもオーケー。ラリー・コンピューター搭載車両、10数年以上前の製造されたクラシックカーなど、参加競技車両でクラス分けされていますが、本格的、年代的な競技車はもとより、普段乗っているSUV、ワンボックス、軽自動車などの愛車そのままでも手軽に参加できるクラスまであるのです。
JAF公認競技で、競技ライセンスを持つ参加者が多数ですが、競技ライセンスがなくても参加でき、完走すれば競技用の国内Bライセンスを申請し取得もできるという、モータースポーツ・ビギナーにとっては至れり尽くせりの競技です。
チェックポイントに行くまで心臓バクバク!
ベテラン揃いでもある関東デイラリー・シリーズ。その中のひとりに今回、芸術家・岡本太郎の「芸術は爆発だ」にもシンクロする「ゲージュツはラリーだ」こと、ラリーアートの元社長である田口雅生さんも参戦しておりました。
田口さんは、このところ少し遠ざかっていたラリー現場への参戦で、コ・ドライバースキルを磨き直す場としてこのデイラリーをセレクトしたとのこと。べつに水戸黄門のようなお忍びではなく、数週間後の参戦を控えているクラシックラリーへの準備でもあるとのことでした。
勝手ながら、かのモリゾウさんことトヨタ会長の豊田章男さんを凌ぐほどの熱血ラリー漢、「ラリーダーゾ」さんが参加していた! とでも申し上げておきましょう。
1980年代あたりには全日本ラリー選手権で三菱ワークスチームと称せられていたタスカエンジニアリングからの藤田哲也さんのコ・ドライバーとして「スタリオン」や「ギャランVR-4」をナビゲートしていた田口さんですが、今回のフォロー競技車は「ブルーバードSSS-R」。1980年代終盤の全日本戦ラリー選手権でも真っ向から三菱車勢のライバルであった日産車で、1990年には綾部満津雄さんによりチャンピオンマシンとなっています。
ボディカラーは当時のスポンサー「カルソニック」ブルーそのもの。今回の隣席ドライバーは愛車ブルーバードのオーナーで、ひと昔前には田口さんの競技ライバルでもあったナビゲーターの永瀬浩一さん。年が経って同じクルマでラリーを楽しんでいるという光景にも、デイラリーの門戸の広さがうかがえるわけです。
「50年もラリーやってますけど、何年やっていてもいまだに、第1チェックポイントに行くまで心臓バクバクしてますよ」
と変わらぬラリーの魅力を語る田口さん。
クルーを苦しませ楽しませていた区間もあった!
今回のソネット・ラリーには、ある林道でアベレージ18km/h走行の指示があり、チェックポイントが出現するまでは長距離ともいえる8.6Kmほどがあったという、クルーのみなさんを苦しませ楽しませていた区間がありました。いつチェックポイントが出現するかに対処するべく、30分近くスポーティな緊張ドライブを続けて行くことになったわけです。
「運転手が大変。ちょっとアクセルを踏んでしまうと18km/hでは走れない、林道路面状況でブレてしまうこともあり、把握しなければならない走行距離も合わない。これといった走行メーター数値の調整などしてはいないんですが、今回の同じルートの往路復路でも数値が違ってくるんです。お互い信頼してひたすらアベレージ速度を貫くだけでした」
登り下りの山道で長々と続けなければならない低速ドライビング。その駆け引きは、まさにドライビングの技量と集中力とコミュニケーション力を鍛えることのできる指示速度だったようです。
かのサファリラリー・レジェンド・ラリーストの岩瀬晏弘さんも、昨年来、関東デイラリーにチーム・サファリの呼び名で参加し続けています。今回も友達が友達を呼び込む自然現象となり、10クルー近くが集ってラリーの楽しさを分かち合っていました。
ラリーは様々なシュチュエーションを乗り越えるオリンピック競技の馬術
1950年代後半にラリー競技が日本で始まって以来、アベレージ走行のラリーは、日本の道路交通環境がもたらした日本独自の計算ラリーとも言えます。JAF公認競技ですからもちろん世界選手権のFIAのラリー競技規則に準拠したものです。公道に占有したスペシャルステージを設けてスピードを競うWRCのようなシーンはありませんが、乗り込んだドライバーたちとクルマとのスポーティなやりとりの基本が身に付くモータースポーツ競技なのです。例えて言えば、スピードを競うダービーがレースならば、ラリーはさまざまなシュチュエーションを乗り越えるオリンピック競技の馬術のようなもの。
時代は変わりゆくものです。規則が定められているクルマでのスポーツとして、日本独自の公道環境のなかでの発展を遂げていたとも言えるアベレージ・ラリーは、興行の競技イベントであるF1などとは違って、誰もが挑戦できるモータースポーツともいえます。ですからひょっとして、オリンピック競技のひとつの種目になる日がいずれ来るかもしれないような気もします。
ともあれ、気軽に参加してモータースポーツを味わってみるに最高なラリーがデイラリーシリーズでしょう。参加料金も2~3万円と、他のイベントと比べてみてもコスパの良さがあります。おまけにJAFの競技Bライセンスが申請できます。座学講習でライセンスを取得するより実体験で学べる貴重なものがあります。
ビギナーからベテランまでが“同じ土俵”で戦っているデイラリー、「鮒に始まり鮒に終わる」という釣りの名言になぞらえるとしたら、デイラリーからラリーの世界に入り、どんなに経験をつんでもまたデイラリーに戻って来るとでもいいましょうか、そんなイベントでした。また、生活にいちばん近いモータースポーツであるラリーですから、ラリーから始まりラリーに戻るのかもしれません。デイラリーのひとコマひとコマから、ラリーの奥深さが垣間見られました。
スズキ「キャリィ」、マツダ「CX-5」、スバル「レガシィ」、「ヴィヴィオ」、「ギャランGTO」、ランチア「デルタ」、ローバー「ミニ」、ダイハツ「コペン」……参加車両もなんでもありで賑わってましたので、写真ギャラリーをご覧ください。
関東デイラリーシリーズ公式サイト
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