YouTuberが制作したガチで走破性の高いEV四駆
東京オートサロン2022の北ホールにおいて、不思議な存在感を漂わせていた極小粒サイズの正体不明な1台。これこそ、チャンネル登録者数18万人以上、さらに「世界に影響を与える100人のYouTubeクリエイター」にも選出された「くっすんガレージ/KGモータース」による「T-BOXプロト」なのです。このようにYouTubeで見ていた実物とそれを作った人々に会えるというのも、オートサロンの新たな楽しみとして今後ますます定着していくでしょう。
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プロジェクト発表からわずか2カ月弱でカタチに
その成り立ちを知らなければ、おそらくDA62型「エブリイ」あたりをベースに切り詰めて作ったのでは、なんて無粋な勘繰りをしてしまいそうですが、それは大間違い。じつはベース車両というものは存在せず、なんと完全にゼロから生み出されているのです。
そのためEV作りの第一歩は、40mm×80mm・厚さ2mmちょっとという角パイプを切断し、フレーム制作に取り掛かるところからスタートしています。驚きなのはその制作期間の短さで、YouTube上で「自分たちの電気自動車を作りたい」とゼロからのEV制作が宣言されたのはなんと昨年11月。実際に動画でも、陽の短さと肌寒さが伝わってくるような時期から制作の様子がスタートしていることから、本当に極めて短期間で成し遂げたプロジェクトなのは間違いありません。
ラダーフレーム×前後2モーター・リジッドアクスルの本格性能
また短期間とはいえ、徹底的に作りこまれているのも驚異的。パワートレインは前後にモーターを持つ四駆を採用。モーターならではの瞬発力と制御をオフロードユースでも発揮させたいということから、たっぷりとしたストロークを確保させた前後サスペンションのジオメトリーには、経験に基づくこだわりがギッシリ。「大人が乗って遊べるプラモデルのような乗り物を目指したい」という言葉の通り、ちゃんと大人も満足して楽しめるよう、手を抜かずしっかりと作り込まれています。
またボディ構造に関しては本格的なラダーフレーム構造を持っており、将来的には多彩なカスタマイズが可能となる拡張性も考えられているようです。ボディについては当初3Dプリンターによる制作が計画されていたものの、機械の都合で間に合わず、そのため建築用の断熱材一枚一枚にマジックで設計図に基づく断面を下書きして切断、それを積み重ねて型を作り、FRP製のボディを作るという作戦に変更。もちろんお正月は返上で作業、ようやくオートサロンの会場への搬入にこぎつけてからも、照明が落ちる最後の最後まで作業は続き、ギリギリセーフで完成に漕ぎ着けたそうです。
EV時代の本格SUVの先駆け的存在となる可能性は十分
あらためてそのスタイリングを見てみると、どことなく1967年にデビューした2代目「フォード・エコノライン」をうまく咀嚼して、絶妙にスケールダウンさせたよう。これがまたアメリカ車をそのスタイリングの範としていたころの日本車に通じるものがあり、嫌味のない自然なノスタルジーをうまく醸し出す、という大変難しい作業を成功させているのがお見事です。
短期間のうちに完成させた「くっすんガレージ/KGモータース」のセンスと制作能力の賜物である、この独創的な「T-BOXプロト」で思い出したのは、「ジムニー」の礎となった軽四輪駆動車「ホープスターON」のこと。これが「ガチで走破性の高い実力派EV」という新たなジャンルの幕開けとなる可能性は十分にあります。55年前はせっかくの発想や開発力が商売や事業の継続には結びつきにくかったですが、幸いながらこの令和の世はそうとも限りません。量産化を目指すというKGモータースのこれからに大注目です。
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みんなのコメント
このお車の今後も期待しながら続報を待ちます。
つまり、自動車を作り出したは良いが、撤退フラグが立つんですね。