参加者車両は宝石のような名車ばかり
トロフェオ・タッツィオ・ヌボラーリ(「タッツィオ・ヌボラーリ杯」の意 以下TTN)のステージとなっている北海道は、スタート日の7月16日には35度を超えるなど、全国で一番の暑さを北海道の各地で記録する猛暑となった。
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この好天の下、スタート場所となった千歳市のトランスウェブ北海道営業所に集まったのは、北海道から九州までのエントラント28名と全14台。主催者は「コロナ禍での開催ということもあり数を絞った」ようだが、参加者車両はどれを取っても宝石のような名車ばかりだ。
この宝石のようなクルマたちを先導、後追いするオフィシャル車両には、今年で創業110周年迎えたアルファロメオ2台がFCAジャパンから提供された。さすがは歴史と伝統、そしてブランドを大切にするFCAならではのイベント協力だ。
参加車両は豪華な顔ぶれ
毎年、TTNの参加車両は豪華な顔ぶれとなっているが、今年はとくにすごかった。というのも、世界中のマニア垂涎の的となっているブガッティは、希少なビンテージカーというのは誰でも知るところ。ブガッティは、1929年のモナコGP第1回大会から3年連続で優勝、そのほか公道レースで知られるタルガフローリオでも勝利するなど、高性能スポーツカーを輩出しモータースポーツの世界で名を馳せた名車中の名車だ。
超稀少な名車が参加!
今回のイベントには1928年式と1929年式のT40が2台、直列8気筒のT44が一台という豪華布陣だ。その性能は折り紙つきだが、エンジンの造作にも「拘り」を尽くす芸術品なのである。
さらに白眉は世界耐久選手権用に作られた希少なマセラティ A6 GCSだ。当時、レース用に製作されたのは4台のベルリネッタ(高性能2ドアクーペボディ)と1台のスパイダー(高性能オープンボディ)と言われており、今回参加したスパイダー車両は、世界に1台のマセラティ A6 GCSモデル(!)ということになる。
いまから約60年前に作られたドライサンプ仕様の2L 直列6気筒DOHCエンジンから170psを発揮するのだが、このエンジンの造形美も芸術品の域だ。その真鍮製ラジエータとラジエータからエンジンに伸びる真鍮製の機能美溢れる水路、そしてDOHCらしいカムカバーなどは、まさに見せるために作られたようだ。
また戦前車両で「小型スポーツカーの傑作」と言われたイタリアのフィアット508Sバリッラ・スポルトもエントリー。わずか1LのOHVエンジンから36psを捻出し、最高速110km/hをマークするなど、当時欧州各地で開催された公道レースで大活躍を果たした希少なマシンもエントリーするなど多様な車種が勢ぞろい。
今年は奇遇にもここまでのブガッティ3台にマセラティ、フィアットに加え、今年創立110周年を数えるアルファ・ロメオのエントリーも目立った。
アルファロメオも多数参加
まずは1959年製の特別なジュリエッタだ。アルファロメオが、カロッツェリア・ザガートに依頼したのは、ジュリエッタのスパイダー用シャーシとツインカム1300ccエンジンを組み合わせたものへのボディ架装だ。この依頼に対してザガートは、オールアルミ製の軽量ボディとした。
またリヤの大きな窓にアクリル製を採用するなどした結果、700kg台という超軽量ボディに仕上がった。この愛くるしい見かけとは違い、スパルタンで高性能なマシンは、ジュリエッタSZ(スプリント・ザガート)として正式にデビュー。
今回の参加車両は珍しい前期型で、リヤデザインが丸い形状をしていることから通称「コーダ・トンカ(伊語で丸い尻尾の意)」と言われ、翌1960年の後期型はさらに空力を意識してロングテールとし、スパッと切ったような形状をしていることから「コーダ・トロンカ(伊語で切り捨てられた尻尾の意)」と呼ばれ車名の「ジュリエッタSZ」以上に愛称として親しまれたモデルであり、しかも総生産台数はわずか210台だ。
そして日本では大変珍しい「ジュリエッタ」の最後期のベルリーナ(セダン)モデルもエントリー。なんといってもこのクルマのトピックは、1950年台当時はレース専用エンジンとも言えた高性能DOHCエンジンを4ドアセダンの大衆車に搭載してポピュラー化したことだ。同時に、戦後のアルファロメオ社をそれまでの高級車路線から大衆車路線へと牽引した傑作モデルでもある。
アルフェスタの中でも、未だに人気がある通称「段付き」と言われる1963年に登場したベルリネッタ(2ドアクーペ)ボディの初代ジュリア スプリントGTが、2台出場した。この愛くるしいジュリアのデザインを担当したのは、当時ベルトーネに在籍したジョルジェット・ジウジアーロである。
1300からスタートしたジュリア スプリントはGT、GTV、レース専用のアルミボディを架装したGTA(限定モデル)などをラインアップ。のちに1600、1750、2000へと昇華し、フロントデザインなど意匠を変えながら高級化を求める時代のニーズに適合させたモデルである。
国産車は1台のみだったが注目度抜群!
このほかT5ボディと呼ばれる前期型のポルシェ356Bカブリオレが2台、そのうちの1台はスーパー90と呼ばれるハイスペックモデル。またBMWは2台がエントリーし、1台はヘッドライトが印象的な2000CS、さらにもう1台は希少な2002Turbo。
唯一の国産車での参加は、ホンダS800クーペだ。実はS800のクーペボディは、わずか231台しか生産されておらず、国産車の中でも超希少なモデルである。全天候型であるクーペボディは、当時「ビジネスマンズ・エキスプレス」と呼ばれ、遊びにも通勤用の足としても重宝されたスポーツカーだった。
2泊3日のコースをクラシックカーで堪能
これらの参加車両が辿った7月16日から18日まで北海道を2泊3日したコースは、全行程549.88km。初日は、千歳空港からほど近いトランスウェブ北海道支店で昼食を済ませてからをスタートし、支笏湖班を右手に見ながらワインディングを抜けてウポポイ(民族共生象徴空間)へ。ウポポイからは海岸線を通り、登別温泉地獄谷でゴール(165.21km)。
2日目は登別温泉をスタートし、水平線が見える地球岬展望台まで海岸線を走り、地球岬展望台でレストコントロール。その後も海岸線を走りながら内陸に入り、洞爺湖畔の「わかさいも本舗」でランチ休憩。ここでも昼食を含めてレストコントロール60分を経て羊蹄山を左手に見ながら回り、この日の宿泊場所となるヒルトン・ニセコビレッジでゴールとなる(163.15km)。
最終日はニセコから岩内に出て、積丹半島を回り神威岬から余市にあるキャメルファームというワイナリーで、昼食のレストコントロール。昼食後は余市のインターから一気に道央道で江別まで走り、この旅の最終目的地となる江別にある蔦屋書店を目指した(221.52km)。
参加車両はみなさん無事に、ゴールとなった蔦屋書店に到着したが、残念ながらマセラティは電気系のトラブルで最終日にスタートできず、急遽用意した別車両にて最終日を走りきった。ドライバーの佐藤氏は「来年、マセラティでリベンジを果たしたい」と熱く話していた。
コロナ禍でのイベント開催ということもあり、主催者側はもちろんだが、常連のエントラントも「今回は断腸の思いで欠席するが、コロナウイルスが落ち着いたらまた参加したい」という連絡が多く届いていたという。主催者もエントラントも「来年こそは」を合言葉に、蔦屋書店を後にした。
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