日産は2021年11月23日、はたらくクルマの取材会を日産グランドライブ(神奈川県横須賀市)で行った。当日は10モデルの出展があり、はたらくクルマの奥深い世界が堪能できた。以下で出展車両をご紹介したい。
■コアテック 再生バッテリー使用スポーツカー「eファルコン」
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2022年で創業50周年を迎えるコアテックは、工場の生産ラインに並んでいるような専用機を作る装置メーカー。開発型の企業として、クルマが好きなメンバーが集まって、クルマを開発しようということになった。装置メーカーではなく、完成車メーカーとしても名を売ってアピールをしようというわけで、このプロジェクトは5年前から始めた。環境負荷低減に世界が舵を切っているため、電気自動車を作ろうということになったのだ。
こうして誕生したのが、「乗って楽しいEVリバーストライク」をキャッチフレーズとしたライトウェイトスポーツカー。トライク(三輪バイク)は、通常、前輪が1輪で、後輪が2輪だが、アメリカ式の前2輪、後1輪タイプを採用。前を2輪としたことで、カーブを曲がるときに前1輪に比べて安定感が増し、安心感が高まっている。
スリーサイズは全長2500mm×全幅1300mm×全高1200mm。2人乗りのシート下に日産リーフの再生バッテリーを搭載し、後輪のインホイールモーターで駆動する。モーターの最高出力・最大トルクは35kW/500Nmを発揮。最高速度は80km/h、航続距離は280kmで、車体重量は485kgとなっている。
左側にステアリング/またがりタイプのシートが付いているのは、保安基準で側面から体が見えないといけないという制約(企画当時)があり、右ハンドルでは右足のペダル操作によって、体が車体に隠れてしまうからだという。
道路運送車両法では「側車付き二輪自動車」にカテゴライズされ、道路交通法上では普通のクルマの扱いとなる。従って、二輪の免許を所持していても、普通免許がないと運転できない。ヘルメットを被る必要がなく、シートベルトは非装着でOK。車検や車庫証明の必要もなく、保険は二輪車の扱いになるので安くなるという。二輪車と四輪車のいいとこ取りをしたようなクルマだ。取材車両はプロトタイプで、ナンバーも早ければ2021年内に取得したいとしている。
■宝自動車交通株式会社 タクシー車両(日産リーフ)
宝自動車交通は環境意識が高く、ハイブリッド車が一般的ではなかったころからエコカーをタクシーとして導入。電気自動車(EV)は初代リーフに続いて、2代目も導入。夜間8時間かけて充電し、昼間稼働しているという。
2代目リーフからEVタクシーの乗務員を務める中野営業所の狩野 賛氏は「リーフは加速もいいですし、音も静かですし、気に入っていますよ。お客様からは静かで快適ですねといった声をいただいています。EVに乗り始めてから3年が経ちますが、以前のクルマと比べると、仕事内容は変わっていないのに、疲れ方が違いますね」と話す。
「電気自動車に乗ることが決まったとき、LPガススタンドに行かなくていいからラクだなと思いました。タクシーの仕事ではスタンドに行くのは手間がかかりまして、並ぶときもありますから。それがないのは助かりますね。まわりの乗務員もその部分はうらやましがりますね。すぐに充電できないといったデメリットもありますが、メリットのほうが大きい感じですかね」
ちなみに、お客様から急に遠方の乗務を依頼された場合、充電の具合を見て難しければ丁重に断わるか、途中で充電しても大丈夫ですかとお客様の了解を得るという。今までそういったケースはなかったとのことで、成田空港まで行ったのが一番遠方の乗務だったそうだ。
■シンコーフレックス 再生バッテリー使用ゴルフカート(LIBCART)
日産が51%出資する4Rエナジー社製のリーフの再生バッテリーを、桜オートモーティブエナジー製のゴルフカートに搭載した。リユース事業をプロデュースする開発会社のシンコーフレックスが、選定したリユースバッテリーの供給を行っており、シンコーフレックスと桜オートモーティブエナジーの両社は共同でゴルフカート向けの「LIBパワーユニット」の開発を行っている。
従来、鉛バッテリーを積んだ5人乗りのゴルフカートは車両重量が600kg以上あり、キャディを含め5人乗り、4人分のゴルフバッグを積むと1トン近くにもなっていた。リチウムイオンバッテリーを搭載したことによって150kgの軽量化達成している。リーフは48モジュールの電池を積んで約300km走行できるが、ゴルフカートでは1日10km走行できればいいので、7モジュール(合計30kg)のバッテリーで間に合うとのこと。
桜オートモーティブエナジーの赤木和彦氏は「昔は鉛バッテリーとリチウムイオンバッテリーの価格は3倍以上の差がありました。今は1.5倍とか1.6倍ぐらいの差です。もちろんバッテリーの寿命は約2倍の5年程度。充電時間も2分の1ぐらい。重量自体は5分の1ぐらいになっているので、ゴルフ場様にとってはかなりのメリットがあります」と話す。
軽量化のメリットについて同氏は「カートはだいたい10年ぐらい使われますが、軽量化によって、タイヤの摩耗、使用部品の消耗、モーターへの負荷がかなり軽減されます。もう1つは150kg軽いので、乗っている不快感がないのです。ゴルフ場はアップダウンがありますが、上り坂では鉛バッテリーではスピードが落ちていきます。リチウムイオン電池は使用する電池を減らして軽くしていることもあり、スピードが落ちずに逆に加速しているような感じ。その点はゴルフ場のお客様にとっては大きなところなんですよね。
また、2人乗りのタイプは最軽量で、車重260kgを実現しました。日本のゴルフ場は重いカートがコースを走ると芝が痛むので、カート道路を走りますが、海外ではボールの横までカートで行けるのでプレイ時間も早くなります。LIBCARTの2人乗りタイプでは軽量にしているので、コースの中に入れるポテンシャルを持っており、欧米流のプレイスタイルとともに日本のゴルフ場に提案させていただいている状況です。プレイスタイルを変えて、日本のゴルフ人口を増やしたいという思いがあります」と語っている。
■ローソン 移動販売車両(日産NT100クリッパー)
ローソンの実店舗から商品を積み込んで販売に行くという移動販売車。軽トラックの荷台というコンパクトなスペースながら、20度C/5度C/常温/冷凍の4温度帯の商品を積載可能。最近では、高齢者の増加によって、アイスクリームや冷凍食品など冷凍のものが好まれる傾向にあり、冷凍スペースの拡大を検討中とのこと。
いわば移動式のコンビニ。高齢者施設や中山間部、学校、企業、工事現場、イベントでの移動販売を行っており、通常は立ち寄るポイントや日時は決まっているという。ローソン 新規事業本部 マイクロマーケット推進部の戸津茂人氏は「私たちも以前はお店を作って来ていただくという商売だったのですが、今は高齢化してきて、団地や集落に行ったほうがいいという風潮になりました。ちょうどコロナ禍も追い風になって、密を避けたいとか外に出たくないといった方が増えておりますので、移動販売のニーズは高まっています」と話している。
また、BCP(事業継続計画)対応ということで、ローソンの店舗が災害などで被災してしまった場合、被災していないエリアから商品を運んできてライフラインを提供することも行っている。実際に台風や洪水で店舗が被災した際に、稼働した実績がある。
移動販売車両は、北海道から沖縄まで全国で54台を導入済みで、台数は右肩上がりで増えており、問い合わせも非常に増えているという。なお、消費する電力に対処するため、サブバッテリーを積んでいる。車両は完全受注生産で、発注してから納車まで半年程度かかるとのことである。
■厚木市立病院 災害派遣医療チーム「DMAT」移動用車両(日産エクストレイル)
災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team)=DMATは、大規模災害などの現場で救命活動ができる機動性をもった医療チームで、専門的な訓練を受けた医師や看護師らで構成されている。
災害拠点病院である厚木市立病院は、2013年3月に神奈川DMAT指定病院に指定され、DMATの活動をしている。最近では新型コロナウイルス感染症の関係で、県の派遣要請によって2020年2月にダイヤモンドプリンセス号の船内活動をはじめ、数多く出動しているという。
2020年度にDMAT車両の更新に際して、クラウドファンディングで資金調達を実施。機動力を重視して4輪駆動車のジャンルのなかから選考し、競争入札によって日産エクストレイルの導入が決まったという。カラーリングは厚木市内に日産テクニカルセンターがある関係で、日産自動車にデザインの依頼をしたところ、快諾。テクニカルセンターのデザイナーによる17案の提案のなかから、唯一無二のカッコいいラッピングデザインを実現。
デザインは、十字の左右に3本ある波紋が「愛、勇気、希望」を表現。それらが医療を象徴する十字を支えるというコンセプトになっている。また、白と黒になっているのは、昼夜を問わず災害現場にいち早く駆けつけるスピード感や力強さ、信頼感をイメージしたものである。ちなみに、内装は標準仕様のままで、外観のラッピングの赤い部分が反射材タイプになっている。
厚木市立病院 経営管理課の吉川仁基氏は「公道を走っていても子供に注目されたり、カッコいいということで、隊員のモチベーションももちろん上がっております。大災害はないに越したことはないのですが、準備はしっかりしておくということで隊員の士気も上がっております」と話している。
■東京消防庁 広報車両(日産エクストレイル)
2015年に東京消防庁に導入。災害現場に出向いて災害の記録(画像・映像)を撮影し、災害に対する作戦を立てたり、防災の啓発につなげたりしている。また、イベントにも出向いて広報用素材の撮影にも活躍中。入札でエクストレイルが選ばれたが、期待に十分応えられるだけのパフォーマンスを発揮。フットワークがよく、小まわりが利くクルマであり、4駆のためタフで、悪路を含めて走破性が高いことから導入された。
カメラ機材を運搬するため、ジュラルミンケースに入ったライト一式を積み込んだりするケースがある。そういった面では室内の広さが重宝しているという。最近の活動実績では、緊急消防援助隊として熱海の土砂災害に出場している(東京消防庁では「出動」ではなく「出場」と言っている)。
東京消防庁 企画調整部 広報課広報係で実際にこの車両に乗っている谷 浩太郎氏は「熱海の土砂災害の現場では、近くなると多少路面が悪くなったりという所もありました。そういった所でエクストレイルは悪路での走破性があるクルマなので、安心して入っていけるという部分がありました。4WDで走る機会はあまりありませんが、そういった装備が付いているというだけで、安心感が違いますね」と語っている。
■「移動会議室」実証実験車両“Minimo”(日産エルグランド VIP パワーシートパッケージ)
日産、大日本印刷、ゼンリン、ソフトバンク、クワハラの5社で、クルマでの移動中に快適にウェブ会議ができる「移動会議室」の実証実験を実施。2021年6月28日から約3カ月間、東京都と神奈川県の一部で行った。
「移動時間を有意義に生かす」をコンセプトに、高級ミニバンの後部座席をウェブ会議が問題なくできる環境に整えることで、移動しながらの打ち合わせやプレゼンテーションなどを効果的に実施できるかを検証したという。
ベース車が持つ上質な車内空間をベースに、32インチの大画面モニターを前席との仕切りに設置。会議の内容を外から見えないようにするため、ボディサイドには偏光フィルムを採用し、バックドアには黒いカーテンを設けている。通信回線はソフトバンクの4G回線で、回線の安定性を重視した結果、あえて4Gを採用したとのこと。運転手とのコミュニケーションはタブレット端末で行う。
■NV350キャラバン ESモビリティコンセプト
日産自動車とトランスポーターのプロショップ「オグショー」とのコラボレーションで開発された車両。コロナ禍でより注目されている「ワーケーション」をコンセプトとし、仕事場と遊び場を自由につなぐためのカスタマイズカーに仕立てた。
現在、開発中のアイテムを採用した点もポイントで、以下のアイテムを搭載している。
〈電子シェード〉
●遮蔽状態
●透過状態
取材車両ではキャラバンに装着しているが、商品としては2021年11月24日にセレナのディーラーオプション品として発売。ワンタッチで後席のウインドウガラスを遮蔽できる業界初の後付けフィルムタイプの商品。車中泊などのシーンでも簡単にプライベート空間を作ることが可能である。セレナの取り付け費込み販売価格は、左右スライドドア/左右サイドクォーター/バックドアの5枚セットが23万8700円。左右サイドクォーター/バックドアの3枚セットが17万2700円。
〈小型スピーカー〉
天井設置した4つのスピーカーは小さいながらも音がいい点が特徴。天板とルーフライニングの間にスピーカーを埋め込んでルーフライニング自体を響かせる構造となっている。
〈ヘッドランプヒーター〉
LEDヘッドライトは、熱を発散しないため、寒冷地ではヘッドライトに雪が付着して取れないことがある。そこで、5度以下になると自動的にシステムが起動して、ヘッドライトに付着した雪を溶かす。ディーラーオプション品として間もなく発売。
■NV350キャラバン オフィスポッド コンセプト
2021年東京オートサロンの開催中止によって出展できなかった幻のクルマ。こちらも「ワーケーション」がコンセプトで、これからの自由な働き方に合わせて好きな場所でデスクワークができる「オフィスポッド」を組み合わせた。ポッドは「囲まれた空間を持つカプセル状のもの」を指し、オフィスポッドは自分の庭に置く個室の仕事部屋として欧米で一般的に知られている言葉とのこと。
室内のオフィス部分が外に引き出せる構造になっており、都会ではオフィスを車内に格納してプライベートで安全な空間に。一方で自然の中ではオフィスをリヤゲートから引き出して広々とした開放的な空間を演出。引き出した部分の足元は、ガラスになっているので、より自然を近くに感じることができる。また、仕事の合間にゆったりとくつろげるように、室内からアクセスできるルーフバルコニーを設置している。
■日産ノート 助手席回転シート
新型ノートのXグレードをベースに助手席に回転シートを取り付けたクルマ。簡単な手動操作で助手席が外側に回転する。シート自体はノートのシートをそのまま使っているので、運転席と助手席で形が変わることなく、普通のクルマとして使える点もポイント(ただしヒップポイントはノーマルのシートに比べて若干上がっている)。
体圧を分散させて疲労を軽減するという機能を持ったノートのゼログラビティシートをそのまま採用することで、長距離のドライブも快適に過ごせる。価格は228万5800円で、ベース車に対して9万9000円高の手頃な設定となっている。
〈文=ドライバーWeb編集部 写真=佐藤正巳〉
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みんなのコメント
譲渡書を書いた。持ち帰っても良いらしいけど。
BEVの所有者のバッテリーを廉価で加工して自宅用蓄電池にしてくれないかなあ。
24㎾h程度の蓄電池でも数百万するから、70%程度の残量でも非常に値打ちもの。
その内、これの加工専門業者が出てくるだろう。
BEVの所有車の使用済みバッテリーを家庭用蓄電池に再加工してくれるビジネス。
BEV時代には新ビジネスができるだろう。