新経済安保大臣は総理大臣に負けず劣らずの趣味人?
2024年10月1日、自由民主党(自民党)の石破 茂総裁を内閣総理大臣とする石破内閣が発足しましたが、新たに経済安全保障担当大臣に任命されたのが静岡県選出の城内 実(きうち みのる)衆議院議員です。
【エンジン&車内の様子も】これが城内経済安保大臣の「激シブ車」です(写真)
石破総理がプラモデルや鉄道、アイドルと多趣味なことは広く知られていますが、城内大臣も負けず劣らずの趣味人のようで、戦前や戦中に流行した日本の歌を収めたレコード、そしてミニカーのコレクターであるほか、初代三菱「デボネア」を所有するクラシックカー愛好家でもあります。
そのような城内大臣が愛する初代「デボネア」とは、どのようなクルマなのでしょうか。
初代「デボネア」は、1963年の第10回「東京モーターショー」で発表され、翌年7月から販売を開始した2000cc級の高級セダンです。
そもそもわが国の自動車産業は、トヨタ「クラウン」の初代が1955年に発売されたことで黎明期を脱し、それまでタクシーや社用車、官公庁の公用車需要を賄っていた外国車も徐々に市場から放逐していきました。
そうしたなか、トヨタ以外の各メーカーも「クラウン」の開拓した市場に参入すべく、1950年代末からは相次いで競合車を投入するようになります。なかでも少し遅れて登場したのが、三菱重工業(現・三菱自動車工業)製の「デボネア」です。
20年以上モデルチェンジなしで生産
「デボネア」のメカニズムは、モノコックボディにフロントエンジン・後輪駆動(FR)というコンポーネントを組み合わせており、サスペンションは前輪が独立式シングルウィッシュボーン、後輪が半楕円リーフリジッドという手堅い設計でした。なお、ボディは全長・全幅ともに小型車規格ぎりぎりのサイズで設計されたことから、そのスタイリングは直線基調のスクエアなものとなっていました。
デザインを担当したのは、GM(ゼネラル・モータース)出身のカーデザイナーであったハンス・S・ブレッツナーです。彼は、前後の四隅にエッジを立て、フロントグリルの面積を広く取ることで、限られたサイズながらも高級車としての押し出し感を演出しています。また、メッキを多用した装飾は、当時のアメリカ車の流儀に則ったものでした。
三菱の最高級車として誕生した「デボネア」は、三菱グループ傘下の企業で重役専用車として多用されたほか、官公庁にも納入されています。しかし、ライバル車に比べて価格が割高だったことに加え、「三菱グループ御用達のクルマ」とのイメージが強く、非三菱系企業の関係者から敬遠されたこともあって、デビュー直後から販売は低迷。モデルチェンジをしても採算が見込めないことから、その後、22年間もスタイルを大きく変えることなく、生産が継続されています。
モデル後期の1980年代に入ると、現行モデルとは思えない古色蒼然としたスタイリングからクルマ好きのあいだでは「走るシーラカンス」と揶揄されるようになります。
しかし、「デボネア」のモデル末期に、当時「週刊少年ジャンプ」で連載中だった秋本 治さんの人気マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、いわゆる『こち亀』に登場したことで、思わぬ形で脚光を浴びます。
人気マンガ『こち亀』に登場したことも
『こち亀』に「デボネア」が登場したのは1984年1・2合併号のこと。この号に掲載された「マイベストカーの巻」(コミックス38巻に収録)は、なんと「デボネア」が主役のエピソードでした。
ストーリーは主人公の両津勘吉(両さん)とその後輩である中川圭一が、ドライブ中に街で「デボネア」を見かけたことから始まります。そのオーナーは「デボネア」を愛するあまり、気に入らないクルマに「復讐」と称して執拗なまでの嫌がらせをする粘着質の男だった……という内容です。
このマンガの中で両さんは「デボネア」を見るなり、「動く60年代の生き証人。現代の反逆児。その名はデボネア!」と言い放ち、「大手町以外では走っていないと思っていたが……。こんなところを走っていたとは! う む、おそろしい。それもピッカピカ……」と続けたあと、「中川、早く逃げろ! どんな思想を持っているやつかしれんぞ!」と運転中の中川に距離を取ることを促します。
このセリフからは、当時の「デボネア」が置かれた立ち位置が読み取れます。また、それとともに、読者であった少年たち(もちろん筆者も)に、同車の印象をその名前とセットで強烈に残すことへとつながっています。
城内大臣の「デボネア」は、2代目モデルの登場を間近に控えた1986年型、つまりは最終生産型です。城内大臣は21歳のときに新車でこのクルマを買ったそうですが、当時は「ソアラ」や「マークII」などの「ハイソカー」全盛時代。それらの競合車種として、まず「デボネア」の名が挙がることはありません。
そういったなか、他人の目や流行など気に留めることなく、同車を選び、38年もの長きにわたって乗り続けているのですから、城内大臣が筋金入りの自動車好き、旧車好きであることは間違いないでしょう。
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