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ランボルギーニ ウルスを海外で初試乗! 大重量・高重心を打ち消す秘策とは?【Playback GENROQ 2018】

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ランボルギーニ ウルスを海外で初試乗! 大重量・高重心を打ち消す秘策とは?【Playback GENROQ 2018】

Lamborghini Urus

ランボルギーニ ウルス

ランボルギーニ ウルスを海外で初試乗! 大重量・高重心を打ち消す秘策とは?【Playback GENROQ 2018】

初めての衝撃。スーパーSUVのポテンシャルを探る

昨今、プレミアムなSUVは巷に溢れているが、このクルマの注目度はやはり別格だ。ランボルギーニが送り出す実質的に初となるSUV、つまりスーパースポーツカーブランドとして初めて世に送り出されるSUV。ランボルギーニとして求められる走りを、SUVのボディでどのように実現できたのか。ON&OFF、そしてサーキットでその実力をGENROQの永田編集長が試した。

「アヴェンタドールやウラカンと同様に安心してサーキットを楽しめる能力を持つ」

最近のランボルギーニのプロダクトの素晴らしさは、本誌のような自動車専門誌をはじめとする媒体でもたびたび取り上げられている。かつてのように魅力はあるけれどクルマとしての完成度はちょっと・・・、というようなことは完全になくなった。現在のランボルギーニは確かなエンジニアリングとテクノロジーに裏打ちされた高性能と信頼性を極めて魅力的なデザインでくるんだ、まさにスーパースポーツカーのお手本と呼ぶべき存在なのだ。

それもあって、ランボルギーニの業績はすこぶる順調だという。2016年の販売台数は3457台、そして17年は3815台。1年間で実に10%も増えているのである。そして同社は近い将来にこの数字を現在の倍にすると公言している。もちろん、いくらクルマが優れていても2シーター・ミッドシップスポーツカーの需要がそんなに増えるわけはない。そこで登場するのが、ウルスなのである。販売台数倍増計画の主役として、つまりランボルギーニの将来を担う存在として、ウルスの役割は極めて重要だ。何しろ、ランボルギーニはウルスの生産にあたり敷地を8万平方メートルから16万平方メートルへと拡充、従業員も新たに500名も増やしている。もう後には引けない。

ランボルギーニがウルスを開発するにあたり、最も腐心したのは「ランボルギーニの走りをいかにしてSUVで実現するか」にあったという。昨今、走りを売りにするSUVは珍しくない。いや、それどころか優れた走行性能は現代のSUVにとって、もはやデフォルトの条件だ。しかし、やはりランボルギーニの名前で出す以上、その要求レベルは通常の比ではない。

「重心の高さと重量を克服するため、ウルスは飛び道具を備える」

搭載されるV8ツインターボエンジンは650psで、基本部分を共有するグループ内のエンジンの中では最もパワフル。開発ディレクターのマウリツィオ・レッジャーニ氏によると、まず目標として設定したのが最高速300km/h。それを実現するためにはこのパワーがどうしても必要だったという。そのためにインテークまわりやカムシャフト、エキゾースト、ターボユニットなどはすべて新設計。結果としてウルスは305km/hの最高速度と0-100km/h加速3.6秒という凄まじい動力性能を実現した。

ランボルギーニの走りに必要なのはパワーだけではない。レッジャーニ氏によると、最も難題だったのは重心の高さと重量だったという。それを克服するために、ウルスはいくつかの飛び道具を備えている。それが48Vシステムで作動するアクティブ・アンチロールバーとアダプティブ・エアサスペンション、そしてアクティブ・トルクベクタリングだ。すべて既存の技術ではあるが、選択された走行モードやサスペンションなどのセッティング、そして実際の走行状況に応じてこれらを統合的にコントロールすることで、あらゆるステージで完璧な速さを実現するという。

「SUVなのにCORSAモードがしっかりあるのはさすがランボルギーニ」

TAMBURO(タンブーロ)と呼ばれる走行モードの選択レバーはセンターコンソールにあり、エンジンスタートボタンを挟んで左側におなじみのANIMAが配置される。ウルスはSTRADA、SPORT、CORSA(レース)に加えてSABBIA(砂地)、TERRA(オフロード)、NEVE(雪道)の3モードが選択可能だ。砂地や雪道が用意されるのはSUVだけに予想の範囲内だが、CORSAモードがしっかりとあるのはさすがランボルギーニ。そして右側はトラクション、ステアリング、サスペンションのモード切り替えで、それぞれ3段階の調整が可能だ。

ランボルギーニがウルスの走りにいかに自信を持っているかは、その試乗コースが物語っていた。一般道、オフロード、そしてヴァレルンガでのサーキット走行までが用意されていたのである。ドライブはいきなりサーキットから始まった。ピットロードに並んだウルスに乗り込み、ポジションを合わせてシートベルトを締める。赤いカバー付きのエンジンスタートボタン、右側のパドルを引くことでDレンジに入るトランスミッションなどは、すべてミッドシップのランボルギーニと同じだ。

「ステアリングを切るとウルスの動的資質の高さはすぐに理解できた」

インストラクターの後に続いてスタートさせる。加速は極めてトルキーでスムーズ、2トンを超える重量など微塵も感じさせない。最初の右コーナーでステアリングを切ると、スーッとノーズが気持ちよく向きを変える。この瞬間、ウルスの動的資質の高さはすぐに理解できた。とは言っても、やはりSUVである。視点の高さゆえ、どうしてもサーキットで思い切りアクセルを踏み込む気分にはなれない。しかし先導するインストラクターの速度はだんだんと上がっていく。不安は募るが、思い切ってアクセルを踏み込むとタコメーターは瞬時に跳ね上がり、ウルスは凄まじい勢いで加速して行く。

コーナー手前でブレーキングを開始すると、思った以上の制動力が発生してスピードを殺しすぎてしまった。フロント10ピストンのカーボンコンポジットブレーキは伊達じゃない。ブレーキの頼もしさを実感したら、ようやく安心して踏めるようになってきた。次のややタイトな右コーナーでは、先ほどの反省から少しブレーキを遅らせて突っ込む。ステアリングの動きに対するクルマの挙動は実に素直で、ノーズの入り方もとてもSUVとは思えない。そして姿勢が思った以上にフラットなのに気づく。決して足まわりが硬い、というのではなく一定のロールを保ちながらよく粘るといった印象だ。コーナーをクリアしてアクセルを踏み込むとあっという間に6700rpmまで回りきってしまうので、パドルを操作する間もなく勝手に変速されて行く。どうやらシフトアップはクルマに任せるのが正解なようだ。ただし、CORSAモードでは自動シフトアップは行われない。

「安心してサーキットを楽しめるブレーキを装着している」

2周目はインストラクターもさらにスピードを上げ、裏側のストレートでは210km/hを超えた。ヘアピンではフロントに十分に荷重をかけてからステアリングを切り込み、クリップを目指す。面白いように内側へと向きを変えてくれるのは、間違いなくアクティブ・トルクベクタリングの恩恵だ。外側のタイヤに最大で75%のトルクを振り分けるこのシステム、アクセルの開け具合によってクルマの向きを変えられるような操縦感覚をもたらしてくれるので、実に走りやすい。コーナーをクリアしてからの怒涛の加速もすごい。何しろ1100rpmで最大トルクの85%が出ているのだ。コーナーでの身のこなしといい、そこからの加速といい、ウルスは重心の高さと重量という課題を完全に克服している。

そして驚いたのはブレーキだ。この試乗会では各国のジャーナリストたちによって何周もラップを重ねたが、終盤になってもその効きとフィールにはいささかの変化もなかった。安心してサーキットを楽しめる能力が、アヴェンタドールやウラカンと同じように、ウルスにも与えられている。まさにランボルギーニの一員にふさわしい。

次はステージをローマ近郊の一般道に移す。こういう場所でのウルスは、実にジェントルで快適だ。23インチという超大径のピレリP ZEROを履いていたが、足さばきは実にしなやかで、乗り心地も快適。全幅が2016mmとかなり幅広なボディだが、ボディの見切りが良いので狭い道でのすれ違いも苦ではない。扱いやすさの要因は4WSに寄るところも大きい。フロントと同位相、逆位相ともに最大で3°の切れ角をリヤホイールに与えることで、小回りも容易だ。販売されるウルスのほとんどが街中で使われるであろうことを考えると、これは大きな武器だ。

「オフロードでもサーキットにおける走りを再現した」

試乗最後のプログラムはオフロードだ。サーキットと一般道での走りがあまりに素晴らしいので、うっかりこのクルマがSUVであることが意識から飛んでいたが、やはりSUVである以上、オフロード性能を試さないわけには行かない。

ANIMAのセレクターをTERRAに合わせる。ちなみにウルスは走行モードによってアダプティブ・エアサスペンションが地上高を変化させる。標準のSTRADAは173mmで、SPORTとCORSAは158mm、SABBIA、TERRA、NEVEは213mmといった具合だ。

21インチのピレリ・スコーピオンZEROを履いてオフロードに繰り出したウルスは、先ほどサーキットで見せつけてくれたパフォーマンスを再現してくれた。とにかく速い。上り坂だろうがコーナーだろうが、ステアリングを切ってアクセルを踏みつけるだけで狙った通りの方向へ突き進む。通常はフロント40%対リヤ60%、最大でリヤ85%までトルクを配分するAWDとアクティブ・トルクベクタリングを組み合わせた効果は、むしろオフロードで最大限に発揮されているのかもしれない。またサーキットとオフロードという相反する路面にこれほどしっかりとサスペンションが対応しているのは、48Vのアクティブ・アンチロールバーが相当に効いているはずだ。時間の関係でオフロード走行はわずかな時間であったが、とにかくもっと走りたい、と欲求不満を感じさせるほどの素晴らしい走りをウルスは見せてくれた。

「真のスポーツ性能を実現したウルスにランボルギーニのプライドを感じた」

ランボルギーニがスーパースポーツカーの次のジャンルとしてSUVを選択したのは、マーケティング主導の理由かもしれない。しかしその中でランボルギーニは巷に溢れるSUVたちに、本当のスポーツ性能とはどういうものかを見せつけてやろうとしたのではないか。

ウルスの走りには、ランボルギーニのプライドを感じる。それはアヴェンタドールやウラカンとまったく同質のものだ。こんなSUV、ランボルギーニにしか造れない。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/Lamborghini S.p.A

【SPECIFICATIONS】

ランボルギーニ ウルス

ボディサイズ:全長5112 全幅2016 全高1638mm
ホイールベース:3003mm
車両重量:2200kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:478kW(650ps)/6000rpm
最大トルク:850Nm(86.7kgm)/2250-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前285/45ZZR21(9.5J) 後315/40ZR21(10.5J)
最高速度:305km/h
0-100km/h加速:3.6秒
車両本体価格:2607万5730円

※GENROQ 2018年 7月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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