魅力的なフォルムを生み出してきたトリノ
1953年のイタリア・トリノ・モーターショー。真新しいランチア・アッピアや、宇宙船のようなコンセプトカー、ベルトーネBAT アルファ・ロメオが、多くの観衆の話題を集めた。
【画像】麗しいミケロッティ・ボディ ランチア・アレマーノ・アウレリア B53 同時期の個性的なクラシックも 全109枚
独自ボディを手掛けるアレマーノ社のスタンドには、麗しい2ドアクーペが展示されていた。姉妹モデルとして、センターピラーレスの4ドアサルーンも飾られていた。どちらも、アウレリアのシャシーを用いたワンオフ・モデルだった。
過去にも多くのカロッツェリアが、オリジナル・デザインのコンセプトカーを発表してきた。1950年代のイタリア北部は、創造性豊かな時代を謳歌していた。アレマーノ・アウレリア B53も、それに華を添える1台程度に受け止められたのかもしれない。
トリノの人々は、スチールの板から魅力的なフォルムを生み出す能力へ長けていた。労働力に対する対価は比較的低く、さまざまなハンマーを扱う技術は、鎧を作っていたローマ時代から連綿と受け継がれていた。
アウレリアの代表的なモデルといえば、ピニンファリーナ社が手掛けたクーペのB20やスパイダーのB24が、まず思い浮かぶ。アレマーノのB53は、バルボ社やヴィオッティ社など、それ以外のカロッツェリアによる例と同じく影が薄いといっていい。
スタイリングはジョヴァンニ・ミケロッティ
1928年にアレマーノ社を創業したのは、セラフィーノ・アレマーノ氏。フェラーリ初となる市販モデルのボディを製造するほど、優れた技術力を培っていた。
しかし、ピニンファリーナ社やベルトーネ社、ギア社といったカロッツェリアほど、量産体制が整えられていたわけではなかった。1台限りのコンセプトカーや、20台前後の特注ボディを生み出すような、伝統的なスタイルを得意としていた。
同社は1965年に廃業してしまうが、フィアットと契約しアバルトのボディを提供。誕生したばかりの日本の自動車メーカー向けに、プロトタイプも1台残した。晩年には、エキゾチックなマセラティ5000GT用のボディも手掛けている。
アレマーノ・アウレリア B53のスタイリングを描き出したのは、デザイナーのジョヴァンニ・ミケロッティ氏。彼はほかにも、以前から関係の深かったアルフレード・ヴィニャーレ社と協働し、独自ボディのアウレリアを6台生み出している。
第二次大戦が集結し、自動車への関心が再び高まりだすと、ランチアは標準仕様とは異なるボディへのニーズを満たそうとした。ピニンファリーナ社との繋がりを強める一方で、規模の大きくないカロッツェリアへも積極的に働きかけた。
世界初の量産V型6気筒エンジンを搭載したアウレリアは、発表と同時に驚くほどの評判を集めた。ランチアは、その勢いに成功を確信。金に糸目をつけない富裕層向けに、少量生産のボディを提供することへの可能性を見出した。
カロッツェリアへ提供されたシャシー
そこで、通常のアウレリアからホイールベースを伸ばした、プラットフォーム・シャシーを用意。V6エンジンとトランスアクスルの4速MT、セミトレーリング・ウィッシュボーン式のリア・サスペンションが組まれた状態で、各カロッツェリアへ販売された。
主にB50系を名乗り、オートテライオと呼ばれた、そのシャシーの価格は明らかになっていない。アウレリアのサルーン、ベルリーナは230万リラだったが、その半額以下だったと考えられる。
他方、ランチアの工場は設備が古く、作業効率が悪く、需要に応えられるだけのベルリーナを生産することが難しかった。カロッツェリアによるボディも選べるようにすることで、自社工場の負担を多少は減らすことにも繋がった。
初期のオートテライオに搭載されたエンジンは、1.7LのV6。ピニンファリーナ社へ届けられると、カタログモデルとして5シーターのカブリオレが作られた。最高出力は55psと高くなく、心地よくクルージングできたとしても、速くはなかった。
1952年にB52へアップデートされ、排気量は2.0Lへ拡大。最高出力は70psとなり、動力性能はある程度引き上げられた。さらに、ワイドなタイヤとハイレシオのディファレンシャルを組んだシャシーは、B53として差別化された。
麗しく上品なボディのアレマーノのB53
1956年までに、コーチビルダーへ提供されたアウレリアのオートテライオは774台。そのうち、86台をB53が占めた。
一部はコンセプトカーになり、一部は10台から20台程度の少量生産モデルとして販売された。1台のみ作られた、シャシー番号B531008のアレマーノ・アウレリア B53も、それに含まれる。
複数のコーチビルダーが独自デザインのボディをアウレリアへ与えたが、その結果は様々だった。ピニンファリーナ社による少量生産のボディも、必ずしもすべてが美しく仕上がったわけではなかった。個性が弱すぎるものもあれば、強すぎるものもあった。
かくして、アレマーノ・アウレリア B53のスタイリングは麗しく上品。ライト・ブルーとブラックのツートーン塗装が似合うような、華やかさはないだろう。当時の白黒写真から判断するに、オリジナルはホワイトとブラックの2色だったようだ。
フォルムは丸みを帯びており、特にテールエンドはなだらかにカーブしている。英国人デザイナーのジェラルド・パーマー氏は、ランチア・アプリリアからスタイリングの着想を得たことへ触れていたが、アレマーノのB53も影響を与えたのではないだろうか。
センターピラーがなく、グラスエリアは繊細。イタリア的な処理といえるが、アメリカンな雰囲気も漂わせる。エキゾチックな佇まいだ。
この続きは後編にて。
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