幕張メッセにて行われた東京オートサロン。そこで筆者は、ひと際個性的なカスタマイズカーを目にした。北ホールの日産愛知自動車大学校と日産京都自動車大学校の展示ブースには、セレナなのにセレナじゃない、新型ZなのにZじゃない2台のクルマが展示してあった……。
文・写真/佐々木 亘
世界最速「フェアレディZ SUV」爆誕!? 公道走行可の日産直系コンセプトカーがスゴい
■まさかの「煙」対応!? 「セレナもくもくキャンパー」
ぱっと見車種不明だが実はセレナベース。ライトはなんとY33セドリック用を流用
日産愛知自動車大学校が製作したのが「セレナもくもくキャンパー」。フロントフェイスだけでは、GFC27型セレナと言われないと分からない。セドリックの
ヘッドライトと、キューブのフロントバンパーを使用し、ボンネットとバンパーはタイヤハウスの中に塗るアンダーコートを塗り上げた。
醸し出すオーラは、本格クロカンだ。車高を少し高め、フロントに丸みのあるキューブのバンパーを使用することで、セレナの純正状態よりもアプローチアングルが深くなっている。これなら、少々の荒れた路面でも、ボディ損傷を気にすることなく、突き進んでいけるだろう。
このクルマのターゲットは30代の独身男性らしい。なぜ、このターゲットになったのか。理由は制作チームの担任の先生が、30代の独身男性だったからだ。「担任の先生に向けてクルマを作ろう」という学生の気持ちが、大作を生み出した原動力になっている。
特徴となるサイドドア。タープのようにも使えるのが嬉しい
コンセプトは、プライベートと仕事の時間の切り替えがしやすいクルマ。仕事に「もくもく」と取組み、遊びにも「もくもく」と熱中できるというのが、「もくもくキャンパー」という名前の由来の1つ目だ。
車内に目を移すと、天井には大きなガラスルーフがある。これはラフェスタからの流用。昨年4月から始まった板金塗装の勉強を、フル活用して制作にあたった。目を引いたのは、運転席側のスライドドアを跳ね上げ式にしている点。これは、キャンプなどで屋根代わりに使ってほしかったためと話してくれた。
さらに驚くのは、これまでご法度だった、「クルマの中で火を使う」のを、このセレナでは可能にしている点だ。エアコン吹き出し口の部分が煙を吸うための換気扇に変わっている。また、雨の日でもドアを開けて調理中の換気がしやすいように、先ほどの、跳ね上げ式スライドドアが生きてくるというわけだ。
車内で火を使い、煙がもくもくでも大丈夫。これが「もくもくキャンパー」という名前になった2つ目の理由だ。車両のコンセプトから制作技術、そしてネーミングに至るまで、一貫した隙の無さが、完成度の高さに繋がっている。
■新型ZがもうSUVに?超絶カッコいい「フェアレディX」
フェアレディXと名付けられたSUV。新型フェアレディの純正部品もいかしつつ仕立てた
日産京都自動車大学校が製作したのが、「フェアレディX」。ベース車両はTZ51型のムラーノ。ここにヘッドライト、テールランプ、ボンネットやフェンダーなど、あらゆる箇所に新型Zの部品を移植している。
プレスラインやチリ合わせには非常に苦労したようだが、ボディ全体の流麗なラインづくりは新型フェアレディZそのもの。パテ盛りや発泡ウレタンでの成形を行っており、板金塗装等の技術の高さがうかがい知れる。
さらに、参考出品車でありながら、車検に適合できるよう、細部にもこだわった。新型Zのテールランプは、ユニットの中にウィンカーランプが埋め込まれている。しかし、ムラーノのハッチはテールランプユニットと一体化してしまうため、ハッチを開けた状態にすると、ハザードランプが見えなくなってしまうのだ。もちろん車検適合もとれない。
リアスタイルは迫力満点。Zらしさを出すためにテールランプなどは新型Zの純正部品だ
そこで、テールランプユニット内のウィンカーランプは生かしたまま、リアバンパー下部にもウィンカーランプを追加した。驚くようなカスタマイズカーながら、法規も意識する作り込みに感服だ。
フロントフェイスもパーツはZのものをつかっている。しかし、ムラーノとZではノーズの長さが合わない。そのためパーツを切り出して短縮し、バンパー部は高さが足りなくなるため、少し長く成形し直した。
フロントバンパーを下に伸ばしたことにより、空いてしまったフロントグリル部分には、R35型GT-Rのフロントグリルを使用している。制作チームの中に無類のGT-R好きがいて、「なんとかGT-Rの部分を入れられないか」という意見を、難しいながらも取り入れたと話してくれた。
内装もZらしさが光る。レカロシートとのマッチングもナイス
さらに高級スポーツSUVの雰囲気を出すため、タイヤを迫力のあるものに変更。タイヤサイズは、なんと345/30R20。このタイヤを収めるため、フロント・リアともに、フェンダー部分の張り出しを左右5cm広げて成形した。
内装にもこだわりは続く。ドアキャッチにはR35型GT-Rのものを採用し、サイドビューがスタイリッシュに仕上がった。ステアリングは新型Zのモノを使い、シートはベージュカラーのレカロシートを入れブラックに変更、インパネにはアルカンターラを使って、ZのSUVとして相応しい高級感も演出しているのだ。
車名をフェアレディ「Z」から「X」に変更したのにも、深い理由があった。クロスオーバーモデルという意味のXと、数学的な意味のX(未知数)という意味が掛け合わされているという。
■ぜひこのまま市販化をという待望論が多かった
セレナもくもくキャンパー、フェアレディXともに、コンセプトから完成度までが非常に高い。どちらも夢のカスタムではあるが、車検適合などを意識しながら細部までこだわり、市販化の可能性を大いに秘めたクルマになっていると思う。
来場者からは、数多く市販化を熱望する声が学生たちに届けられ、制作チームの全員が、本当にうれしそうな顔をしていたのが印象的だった。
企画力はもちろん、その想像力(創造力)を具現化できる技術力の高さも光っている。こうした金の卵が、日本の自動車業界を引っ張っていく存在になってくれることは、とても頼もしいし心強い。
日産さん、学生の夢の詰まったクルマの市販化、期待して待っています。
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みんなのコメント
どんな形をしてるのかまるでわからない。
カメラマンはシロウトなのか?