■小さな車体に「日本の課題を解決する」大きな役割
ダイハツは軽自動車の代表メーカーとして、乗用向けモデルのみならず軽トラックや軽バンなど、ビジネスユースで支持される商用車を数多く展開してきました。
そんなダイハツが2019年開催の第46回「東京モーターショー」で披露した「Tsumu Tsumu(ツムツム)」は、日本が抱える問題を解決するクルマとして大いに注目を浴びました。一体どのようなクルマだったのでしょうか。
【画像】超カッコイイ! これがダイハツの「斬新軽トラ」です!(22枚)
2019年は天皇陛下が即位し、平成から令和に変わったほか、ラグビーワールドカップで史上初の8強入りを果たすなど明るいニュースがあった一方で、香港の大規模デモや米中貿易摩擦激化、英国のEU離脱など、世界情勢にも大きな変化がありました。
そんななか、2019年10月24日から11月4日まで、第46回東京モーターショー2019が開催。ショーテーマを「OPEN FUTURE」とし、さまざまな期待のニューモデルが姿を現しました。
ダイハツでは「つどい」をテーマに4台のコンセプトカーを披露。そのうちの1台がツムツムでした。
ツムツムは公開当初、「多用途に対応する次世代軽トラック」と説明されるコンセプトカーで、抜群の乗降性を持つビッグキャビンと、広い荷台を両立。用途に合わせて荷台を換装することで、多くの「コト」に対応するといいます。
ボディサイズは従来の軽トラックと同等の全長3395mm×全幅1475mm×全高1850mmです。
エクステリアはスクエアかつシンプルですが、ボディはグリーン×ブラックのキャブと低い荷台を組み合わせたポップなもの。
フロントフェイスは6つのライトが横に並び、ブラックのキャビン上部からフロント下部にかけては1本のラインが通るなど、力強さも感じさせます。
ボディサイドやリアも、飾らないシンプルな道具感を演出しており、テールは縦2本の灯体で構成されたテールランプが備わる程度です。
インテリアも実用に特化したような仕様で、直線的なインパネにグリーンの外板そのままのドア、樹脂製のフロア、Aピラー内蔵の大型グリップなど、業務用途での扱いやすさを目指したものとなっています。
次世代の軽トラックらしい、スタイリッシュでかつ十分に実用できそうなツムツムですが、実は斬新かつ画期的な機構を2つ、採用していたのです。
ドアは通常のドアではなく、荷台側にヒンジを持つ折戸タイプとし、乗降性の大幅な向上を発揮。ボンネットが存在せず、さらに非常に低床な構造としていたことから、キャビンの側面ほとんどがドアというような構造になっています。
これにより、室内空間の大幅な拡張にも役立っています。
さらに、荷台は用途に合わせてまるまる換装できる構造を採用。農業用ドローン基地や個室空間などを利用例として挙げており、大幅な改造が不要ながら多用途に対応していたのも大きなメリットでした。
このツムツムが誕生した背景として、ダイハツの奥平総一郎社長(当時)は、東京モーターショー2019の会場で以下のように話しています。
「ツムツムは、このクルマを通して働くひとへの優しさで地域の暮らしを支え、これからの日本の『働く』を応援していきたいと考えております。
地域での移動や働き方をめぐる課題に取り組み、ダイハツならではの答えを出す、ダイハツの次世代のモビリティを表現したものです」
高齢化が進み、地方などではバス路線の廃止など、移動に関するさまざまな課題が浮き彫りになる一方で、健康寿命の増進から生涯現役で働いていたいとする高齢者も多くいます。
そうしたなか、低床かつ広い空間から乗り降りがしやすく、さらに荷台を自在に変更できる軽トラックの存在は、こうした諸問題を解決する手がかりになる可能性があります。
これまで地域での生活に密着した軽自動車を数多く手掛けてきたダイハツならではの取り組みといえ、まさに、次世代の軽トラックとして大いに注目を集めたのでした。
なお、公開から5年が経過しましたが、今のところ市販に向けた動きなどはなく、今後もますます期待されるモデルといえます。
※ ※ ※
一方で、ダイハツは2023年10月、かつての「東京モーターショー」から名称とコンセプトを一新した「ジャパンモビリティショー2023(以下JMS)」で、軽トラック・バンのコンセプトカー「UNIFORM」シリーズを発表しています。
シンプルかつスクエアなデザインは、ツムツムとも共通性を感じさせますが、公開時にダイハツは「使いやすさなど働くクルマの原点を追求し、多様な働き方や用途に対応する未来の軽商用車」としており、ツムツムの進化版といった位置づけです。
2024年10月には、JMSは「ビジネス向け」回として再び開幕する予定であり、果たして次はどのような問題を解決する軽商用車が登場するのか、大いに期待されます。
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