カラーコーディネイトと素材置き換えで質感向上
速さを求めることだけがチューニングではない。クルマの魅力を高めることがチューニングの果たす役割であり、速さはその一部でしかない。果たしてBRZプレミアムスポーツパッケージは、そうしたクルマに仕上がっていたのだろうか?
スバル初代「BRZ tS」のコンプリートだけが可能だったチューニングとは? STIのこだわりが凄すぎでした【BRZ名車プレイバック】
(初出:『XaCAR 86&BRZ magazine Vol.03』)
自動車メーカー発信のカスタマイズだから完成度が高い
自動車メーカーがリリースするカスタマイズカーには、当然ながら制約が存在する。自動車メーカーという立場では踏み込めない領域が明確に存在するからだ。しかし、逆に自動車メーカーだからこそ、実現できるアイデアもある。
BRZプレミアムスポーツ・パッケージは、2013年12月から発売されていた特別仕様車だ。特別仕様車といえば、なんとなくコストパフォーマンスに優れたお買い得車というイメージもある。プレミアムスポーツ・パッケージも確かにお買い得であることは間違いないが、その意味合いは少し違う。スバルBRZのノーマルには存在しない、シックなコーディネイトを与えたバージョンなのである。
シートやインテリアのカラーをタン&ブラックで統一
ハイライトは、シートやインテリアのカラーが、タン&ブラックとなったことだろう。しかもシートのステッチはモスグリーンという、こだわりのコーディネイトだ。ステアリングの上下やドアの一部もタンカラーとなっており、インテリアの雰囲気を一変させることに成功している。シートのヘッドレストにはBRZのロゴが入っている。シートは、クルマを構成するパーツとしては高価なもので、それを入れ換えたり加工したりするのは、とてもコストがかかる。だが自動車メーカーが作れば、それほど価格を上昇せずに済むというメリットがある。
メーターバイザーには、フロントガラスへの映り込みがないアルカンターラでカバーされ、そこにタンのステッチが入れられている。センターコンソールやステアリングのスポーク、エアコンの吹き出し口などはメタル調樹脂パーツがノーマルだが、それをアルミ蒸着塗装によってサテンシルバーとしている。これだけで、高級感はかなり上昇している。
STIパーツを効果的に配置している
ノーマルのデザインはそのままに、加工や素材を変えるというのは、やはり自動車メーカーならではの手法だ。彼らはさまざまな高級車の加工を知っており、それを反映させることが可能なのだ。そうやって質感を高めているからこそ、カーボン調パネルを使ったインパネやSTIロゴ入りのエンジンスターターなど、レーシーな雰囲気が安っぽく見えない。
外観ではブラック塗装されたSTI製の17インチホイールと、それにコーディネイトした形のブラックのドアミラーが装着されている。撮影車両のようなダークカラーでは判りにくいが、ホワイトやシルバー、レッドのボディカラーでは、結構渋い感じになる。
速さだけを求めるのであればコンプリートである必要はない
動力性能やハンドリングには、一切手が加えられていない。エアロパーツも装着されていないので、性能でのプラスになる部分は軽量化されているはずのSTI製アルミホイールくらいのものだ。速さだけを求めるのであれば、コンプリートである必要はない。
自分の必要な速さの要素を選択・集中したほうが、効果的でありコストでも有利だ。あえてコンプリートである理由を挙げれば、全体のバランスのよさであり、ノーマルと同等のフィッティングのよさであり、トータルのコーディネイトである。そういう意味で、この大人のためのコーディネイトであるプレミアムスポーツ・パッケージは、コンプリートチューニングカーのひとつの方向性を示しているのである。
BRZプレミアムスポーツパッケージ [特別装備]電動格納式リモコンドアミラー(ブラック塗装)/メーターバイザー[アルカンターラ(ブラック)、タンステッチ]/カーボン調インパネパネルタンレザーシート(モスグリーンステッチ、BRZロゴ刺繍)/タンインテリア/サテンシルバー加飾/STI製17インチアルミホイール(ブラック塗装)STI製プッシュエンジンスイッチ(STIロゴ入り、レッドタイプ)
※この記事は2014年のXaCAR 86&BRZ magazine Vol.03の記事をもとに、再編集したものです。表記の数値や肩書きなどにつきましては、当時のものになります。
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