いよいよプレーオフも大詰め、ここから8名による勝負が始まる“ラウンド・オブ8”初戦となった2022年NASCARカップシリーズ第33戦『ソウス・ポイント400』が、10月15~16日にラスベガス・モータースピードウェイで開催された。
そのレース終盤、最後の16周を残すリスタートでフレッシュタイヤに履き替えたジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が、残り3周の“ウイニング・パス”でロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)を逆転し、今季4勝目を獲得。この段階で、早くも最終ステージ“チャンピオンシップ4”への進出を確定させた。
休養中のカート・ブッシュが現役引退を決意。タイラー・レディックが早期合流へ/NASCAR
またレース序盤の95周目には、バトルの余波で壁に押し込まれたダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が、その報復とばかりに現王者のカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を“撃墜”し、マシンを降りた両者が小競り合いを演じる一幕も発生している。
今季を通じてワンメイクタイヤのバーストによるアクシデントが多発し、22年導入の新規定車両“Next-Gen”の安全性が揺らぐなか、ラスベガスのレースウイークは第21戦の予選事故で長らくの欠場を強いられて来たカート・ブッシュ(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が、地元で「来季2023年のフルタイム参戦を辞退」するとアナウンスし、実質的な引退を表明するニュースで始まった。
そのカートと同じく、第30戦テキサスでタイヤ不具合による事故に遭遇したアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)も、引き続き脳震盪症状を改善するため欠場を続けるなか、最初のプラクティスではチャスティンを抑えたライアン・ブレイニー(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)がセッション最速をマークする。
しかし予選でポールウイナーを奪ったのは、来季2023年から一足早くそのカートの跡を継ぎ、23XIレーシングへの移籍が決まったタイラー・レディック(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)で、キャリア通算4度目のポールポジションのうち、今季だけで3回を記録するなど活きの良さを披露した。
「壁にぶつかるか、ぶつからないかのどちらかだったし、本当にいいラップになるはずだった。それほど接近するつもりはなかったんだけど、ターン3とターン4をうまく切り抜けなければならないことは当初予測からわかっていた。結果的に少しタッチしてしまったけど、それほど遅くならずに済んだみたいだね」
こうして始まった日曜ファイナルは、78周目にカイル・ブッシュ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)がスピンを喫したものの、戦列復帰には影響せず。そのままアンダーコーションでウォレスJr.のカムリがステージ1を制する。
しかし95周目にケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)に仕掛けた王者ラーソンが、ボトムラインに飛び込んで3ワイドのままターン3での勝負に挑むと、ミドルにいたハーヴィックはスロットルをリフトし、ここからターン4~フロントストレッチに向けハイラインを行くウォレスJr.とのサイド・バイ・サイドの状況に持ち込んでいく。
今季後半戦はカートのナンバーである45号車をドライブするウォレスJr.と、5号車カマロZL1に乗るラーソンの両者は接触こそなかったものの、アウト側のウォールに激突するしか「ラインが残されていなかった」と語ったウォレスJr.が、怒り心頭のままダメージを負ったマシンでオーバルを急降下し、シボレーの右後部を直撃。
全開からスピンモードに陥ったHMSのシボレーは、後方から迫った前戦勝者のクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)を巻き添えに、アウト側のウォールにクラッシュする事態となった。
■ロガーノ「ペンスキーは最速のマシンを用意してくれた」
アクシデント直後にマシンを降り、ラーソンに詰め寄ったウォレスJr.は、ヘルメットを脱いで直接チャンピオンと押し問答する状態となり「彼は知っている。自分が起こした行動がどれほど悪しき行為で、間違っていることかを」と、ラーソンのドライビングを激しく非難した。
「ラーソンはスリーワイドの“ダイブ・ボム”を成功させたがっていたが、僕は明らかにまだ前にいて、スロットルをリフトすることもしなかった。彼は僕をパスできてさえいなかったし、僕はリフトしなくちゃならない位置にもいなかった。でも彼はスペースを残すことをせず、僕を押し付けた。だから、これは彼の処刑に対する単なる(罵倒の)動きだ」と、憤りを露わにしたウォレス。
「僕らのチームにとっては最悪の事態だ。マクドナルド/トヨタ・カムリはとても頑丈だったし、トップランで必要なバランスを探る段階だった。まるで(カートが勝利を挙げた)カンザスのようだったが、それが今ではただのガラクタさ」
一方、詰め寄られた段階から反応や抵抗の素振りも見せなかった王者ラーソンは、彼の言い分にも「驚かなかった」と応じた。
「明らかにターン3でアグレッシブな動きをし、ボトムラインで少しルーズになり、彼は僕の右前でウォールに激突し『報復するかもしれない』と予想していた。彼には怒る理由があったが、彼が報復するまで彼のレースは終わっていなかった。それが現実さ。ただの攻撃が欲求不満と最低のリザルトに繋がった」とラーソン。
このステージ2はFPで最速だったブレイニーが制するも、その12号車マスタングも228周目にターン2でルーズになり、アウト側、イン側の双方でウォールの餌食に。同じ周回ではカイルが左前輪を失うハプニングに陥るも、コーションのおかげで事なきを得る展開となる。
さらに隊列の中でルーティン作業の進行を遅らせていたロガーノが9番手でピットロードへ飛び込むと、残り22周で13番手からリスタートしたチーム・ペンスキーの22号車ペンズオイル・マスタングは、直後の240周目にスピン車両が発生してこの日最後のイエローとなった段階で4番手にまで進出。最後のリスタートから16周での逆転に向け、続くラップではトップ3圏内に浮上してくる。
残り10周を切ってハイレーンを多用したロガーノは、周囲よりフレッシュなタイヤグリップの恩恵も受け、首位チャスティンとのギャップを大幅に削り取り、残り6周でテール・トゥ・ノーズの状態に。
迎えたラスト3周のターン3でボトムラインにスイッチしたロガーノが、チャスティンのシボレーを下から攻略。レース最高の68周をリードしたトラックハウスのシボレーを逆転し今季4勝目、自身2度目のタイトル獲得に向け早くも“チャンピオンシップ4”進出を確定させた。
「そうさ、僕らはチャンピオンシップを目指してレースをしている。このまま行くしかないね! それにしても、なんて素晴らしいクルマ。ペンスキーは最速のマシンを用意してくれた。この時点で“チャンピオンシップ4”に勝てない理由がわからないよ」と、自身5度目のタイトル候補として最終ステージに挑むロガーノ。
「最後の50周ほどは多くの逆境と戦ったし、ロス(・チャスティン)とのレースは楽しかった。彼は僕に対してエアブロックを上手くやっていて、ただ辛抱しようとしていたんだ。ここベガスでまた勝てて本当に良かったし、この段階で優勝できたのはとても意味のあることだね」
一方、併催されたNASCARエクスフェニティ・シリーズの第30戦は、同じくNASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズでも活躍を演じるジョシュ・バリー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が、65周をリードしてキャリア通算5度目の勝利を収めている。
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