最上級ミニバンの兄弟車であるアルファード/ヴェルファイアは、2022年末のフルモデルチェンジで「新型アルファード」に1本化されることが濃厚だ、という話がたびたびトヨタ大手販売店から伝わってきている。「ヴェルファイア」というモデル(車名)が消滅するかもしれない、ということだ。
一時期、一世を風靡した人気車「ヴェルファイア」が、本当になくなってしまうのだろうか。
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たしかにここ数カ月、ヴェルファイアの販売台数は急落しており、アルファードが月間1万台以上売り上げているのに対して、2020年11月は1241台、10月は1261台にとどまっている。
この販売急落には何か事情があるのか。本当の本当にこのままヴェルファイアはアルファードへ統合され、車種名として消えてしまうのか。現時点での最新情報を、販売店への取材でレポートした。
文/遠藤徹
【画像ギャラリー】元祖「ド派手顔」ヴェルファイアが消える?? アルファードとイキり具合いを比べてみると…
■現行型発売から6年で迎える転機
ヴェルファイアの現行モデル(2代目)登場は2015年1月26日であり、現時点で約6年が経過している。ヴェルファイアもアルファードも、発売当初から人気が高く、その後に何度かマイナーチェンジ、一部改良、特別仕様車を実施し、改良を加えるたびにその人気が加速してきた。
発売当初、両車で特に販売が好調だったのはヴェルファイアだった。両モデルとも名称、グレード構成の一部ネーミングが異なり、内外装のデザインに違いを持たせて仕立てに差をつけているものの、搭載エンジン、ボディパネル、グレード数、価格はまったく同一の設定となっている。
2008年5月に初代が誕生したヴェルファイア。当初の月間販売目標台数は3000台だったが、それを大きく上回ったこともたびたびあった。2015年1月に2代目へバトンタッチ
ヴェルファイアが若い層にターゲットを絞って、個性的で押し出しの強いフロントマスクを持たせたのに対して、アルファードはミドル層向けの地味でおとなしめな顔つきをしていた。
この住み分けが変わったのが2017年12月のマイナーチェンジだ。
アルファードは個性の強いいかつい顔つき、ヴェルファイアは逆におとなしい顔つきに変えた。これによって(それまではヴェルファイアのほうが売れていたのに)両モデルの売れ行きが完全に逆転してしまった。
右側手前がヴェルファイア、左側奥がアルファード。アルファードの顔が派手になり、相対的にヴェルファイアがおとなしい印象になった
【参考/アルファード&ヴェルファイア 過去5年間の販売台数】
2015年販売台数 アルファード:4万4366台 ヴェルファイア:5万4180台
2016年販売台数 アルファード:3万7069台 ヴェルファイア:4万8982台
2017年販売台数 アルファード:4万2281台 ヴェルファイア:4万6399台
2018年販売台数 アルファード:5万8806台 ヴェルファイア:4万3130台
2019年販売台数 アルファード:6万8705台 ヴェルファイア:3万6649台
それに輪をかけたのが、2020年5月からのトヨタ全系列店全トヨタ車の併売態勢実施(販売チャンネル制度の実質廃止)だった。
それまではアルファードがトヨペット店の、ヴェルファイアはネッツ店の各専売車種だった。これを、トヨタ全系列店がアルファード/ヴェルファイア両車を扱うようになり、その時点で人気が先行していたアルファードにさらに人気が集中するようになって、両車の販売台数に大差がつくようになったのである。
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■続々と消えていく兄弟車たち
トヨタはすでに「国内での(2017年時点で約60車種あった)トヨタ車の扱い車種を2025年までに半分の30車種に削減する」という方針を明らかにしている。この車種削減策の代表格は、兄弟車の統合だ。
この「兄弟車種を統合して車種数を減らす」という内容について、トヨタ自動車が正式に表明したわけではないが、販売店筋ではいろいろな情報が先行していた。
2020年9月、(OEM供給元であるダイハツ・トールのマイナーチェンジを受けて)トヨタのルーミーがマイチェンを実施。それに合わせて兄弟車であったタンクが販売を終了した。トヨタの車種削減の一環といわれる
アルファード/ヴェルファイアの場合、もともとアルファードが先に発売され、数年後に派生モデルとしてヴェルファイアが投入された経緯があるから、トヨタのスタンスとしてはアルファードに統合するのが自然な流れとなる。そこにマイナーチェンジでのデザインの実質的な入れ替えで両モデルの販売実績が逆転し、トヨタ車全店併売が両モデルの格差拡大を加速させることにつながった。
最近はその格差をさらに広げる事象も生じている。
多くのディーラー店舗では試乗車を配置して来店者にハンドルを握らせる、あるいは商品説明用のデモカーに使ったりしている。
アルファード/ヴェルファイアの場合、アルファードは多くの店舗に用意されているが、ヴェルファイアは置いてない店舗が目に付くようになった。カタログは用意しているが、展示車も試乗車もヴェルファイアはなく、現物チェックを希望するユーザーにはアルファードで説明するケースが多くなっているのである。
個々の店舗で試乗車を持つのではなく、近隣のディーラーで融通し合うことが増えたが、それでもヴェルファイアの試乗車は減少気味にあるという
このうえさらに、値引き条件にも差が出てきた。
車両本体にナビ、ETC、ドライブレコーダー、ボディコーティングなど50万円程度のオプション&付属品をつける際の商談条件は、アルファードで35万円以上値引きで購入できるが、ヴェルファイアだと30万円程度に引き締まるケースが多い。
同じ店舗でもこうした差が生じるのはなぜか。アルファードのほうが売りやすいので、好条件を出す傾向が強くなるといった事情があるようだ。
最近の両モデルの人気差が、リセールバリューの格差にまで顕在化していることにも注目したい。両モデルの売れ筋グレードに50万円程度のオプション&付属品をつけて購入し、5年程度乗って手放す場合の査定額ないしは下取り額で、アルファードのほうが10万~20万円ほどリセールバリューが高くなっているのである。
購入する時に安く買えて、手放す時に高く売れるのであるから、多くのユーザーは当然のようにヴェルファイアを敬遠し、アルファードを選ぶようになっている。
この傾向は、今後一段と強まるのが必至の情勢だ。
こうしたことから、もしかしたら2022年末の世代交代(フルモデルチェンジ)を待たずにヴェルファイアはモデル廃止になる可能性がある。今後取材を続けて、新情報が入ったらすぐにお知らせしたい。
■証言「クラウンからアルファードへ」首都圏トヨペット店営業担当者
アルファードは2017年末のマイナーチェンジでフロントマスクを押し出しの強い個性的なデザインを採用してから、ヴェルファイアよりも売れ行きがよくなった。逆にヴェルファイアは以前のアルファードのようにおとなしめのマスクにしたことで、売れ行き不振となっている。同じ店舗で両モデルを扱うようになってから、余計にアルファードに集中する傾向が強くなっている。法人の役員が運転手付きで乗る場合、以前はクラウンだったのが、最近はアルファードになっている。若者向けのヴェルファイアでは法人向けは似合わない。こうしたことも両モデルの販売格差が生じる要因となっている。
■証言「アルファードで充分」首都圏ネッツ店営業担当者
今年(2020年)5月から、従来のヴェルファイアに加えてアルファードも扱うようになった。その後の販売推移では(各店舗レベルでも)アルファードのほうが売れ行きが良くなっている。うちの試乗車もアルファードで、ヴェルファイアは置いていない。いずれはアルファードに統合されることを見込んでの対応と思われる。ヴェルファイアがなくなってもアルファードで充分にカバーできるので不安はない。ボディパネル、エンジン、価格も同じだから1本化するのはやむを得ないと考えている。
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