3ナンバーの新カローラ、売れ行き下げる?
text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)/トヨタ従来型のトヨタ・カローラは、長年にわたり5ナンバーサイズのセダン&ワゴンとして発展してきた(ミドルサイズ・ハッチバックのルミオンを除く)。
それが12代目の新型では、3ナンバーサイズに拡大された。
まず2018年に5ドアハッチバックのカローラスポーツが3ナンバーサイズで発売され、2019年9月17日には、セダンとワゴンのツーリングもフルモデルチェンジを受けて3ナンバー車になった。
あらためて振り返ると、従来のカローラでは、5ナンバーサイズのセダン&ワゴンであることが大切な特徴だった。
今は大半のセダン&ワゴンが3ナンバー車になり、カローラ以外では、5ナンバー車のセダンがグレイスとプレミオ&アリオン、ワゴンはシャトルに限られるからだ。
そのほかの5ナンバー車は、フィットやヴィッツのような5ドアハッチバックのコンパクトカーになる。
5ナンバーサイズのセダンやワゴンが欲しいユーザーにとって、カローラは貴重な選択肢であった。
またカローラは初代モデルを1966年に発売した後、1969年から2001年までの33年間は、連続して国内乗用車の登録台数1位であり続けた。
したがって今でもセダン&ワゴンの中では、販売が好調な部類に入る。高人気の理由は、5ナンバーサイズによるところが大きい。
新型カローラが3ナンバー車になると、従来型のユーザーが離れて売れ行きを下げる心配が生じる。
カローラはなぜ3ナンバー車になったのだろうか。
5ナンバーサイズに収めるか3ナンバー化か
カローラが好調に売れるのは、従来型からの膨大な乗り替え需要があるからだ。
ユーザーの多くは、運転しやすい5ナンバーサイズのボディに愛着を持つ。
3ナンバーサイズに拡大すれば、ユーザーが離れることも懸念されるため、開発の初期段階では新型カローラを5ナンバーサイズで開発することも検討された。
しかし開発者は「新型カローラを5ナンバーサイズに収まるプラットフォームで造ると、新しいセダン&ワゴンに相応しい走行安定性と乗り心地を得られませんでした」という。
従来型のカローラは、ヴィッツと共通のプラットフォームを使い、運転しやすい5ナンバーボディと広い室内を両立させていた。
その半面、走行安定性と乗り心地は高水準とはいい難く、新型の開発でも5ナンバーサイズでは不満が生じたわけだ。
そこで国内仕様のカローラも、海外仕様と同様、現行プリウスから採用が開始されたTNGAの考え方に基づく3ナンバーサイズのプラットフォームを使うことになった。
ナンバーサイズの弊害 独自ボディで対策
TNGAのプラットフォームを使えば、走行安定性、乗り心地、静粛性などをバランス良く向上できるが、全幅を1700mm以下の5ナンバーサイズに収めることは不可能だ。
3ナンバー車になれば、国内市場では売れ行きが心配される。だからといって5ナンバーサイズのプラットフォームを使えば、先に述べた通り走行安定性や乗り心地に不満が生じてしまう。
開発者は一長一短の難しい選択を迫られた。
そこで生み出された開発手法が、TNGAのプラットフォームを使って走行安定性と乗り心地を向上させながら、ボディをなるべくコンパクトに抑えるものだった。
全幅がワイド化されて3ナンバー車になるのは避けられないが、取りまわし性の悪化は最小限度になる。
そのために国内仕様の新型カローラは、独自のボディを開発した。海外仕様のカローラセダンとワゴンのツーリングスポーツは、全幅が1780-1790mmでホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2700mmだ。
そこを日本仕様のセダンとツーリングは、5ドアハッチバックのカローラスポーツをベースに開発した。
したがってホイールベースは2640mmに収まり、2700mmの海外仕様よりも小回りが利く(その代わり後席の足元空間は狭まる)。
最小回転半径は15インチタイヤ装着車が5.0m、16/17インチでも5.3mだ。
さらに基本骨格には手を付けず、フェンダーやドアパネルの変更で、全幅を1745mmに抑えた。
国内で売られるカローラスポーツの全幅は1790mmだから、日本仕様のセダンとツーリングは特別に幅の狭いボディを与えられた。
この経緯を開発者は次のように説明する。
「TNGAのプラットフォームを使うと、全幅を5ナンバーサイズに収めることはできません。だからといって海外仕様と同じサイズでは、5ナンバー車の従来型から乗り替えるお客様が、使いにくくなる心配があるのです」
「そこでボディの外板だけを変更して、全幅を1745mmに抑えました。この数値は先代(3代目の)プリウスと同じ。先代プリウスは絶好調に売れて、日本の道路環境にも適応しています」
「お客様の年齢層も幅広いです。1745mmの全幅であれば、3ナンバー車になっても許容されると判断しました」
このように新型カローラのセダンとツーリングは、ホイールベースの短いカローラスポーツをベースに、全幅をさらに45mm狭めて開発された。
3ナンバーサイズに拡大したことで生じる弊害をなるべく小さく抑えようと工夫を凝らした。
世代によって受け止め方が異なる3ナンバー
カローラを3ナンバー車にした理由。
それは「5ナンバーサイズに収まるプラットフォームで開発すると、新しいセダン&ワゴンに相応しい走行安定性と乗り心地が得られない」というものだ。
ここで述べている5ナンバーサイズのプラットフォームとは、ヴィッツなどのコンパクトカーに使われるものだ。
仮にトヨタがコンパクトカーよりも上級の5ナンバー車に適するプラットフォームを別途開発したら、国内向けの新型カローラは、走行安定性と乗り心地を向上させながら5ナンバーサイズを守れたかも知れない。
かつて日本のメーカーは、5ナンバーサイズに収まる複数のプラットフォームをそろえ、車両重量や価格に応じて使い分けていた。
トヨタは車種数の多いメーカーだから、2種類の5ナンバープラットフォームを用意する方法もあっただろう。
今のトヨタはダイハツを完全子会社にして、スバル/マツダ/スズキとも提携を結ぶ。この関係を活用すれば、メーカーの垣根を超えて、上質な5ナンバー車のベースを開発できるように思う。
そうならないのは、環境性能の向上や自動運転技術の開発もあって車両開発に費やせる予算が減り、なおかつ国内市場の優先順位も下がっているからだ。国内市場への愛情がもっと深ければ、新型カローラは違うクルマになっていたかも知れない。
その一方で、セダンの位置付けが以前と変わっていることも事実だ。1980年代までは、セダンが実用的なクルマの基本形とされたが、今は抜本的に室内空間を広げたミニバンがある。
背の高いコンパクトカーや軽自動車も、優れた実用性を備えて好調に売れている。今ではセダンはクルマの基本形から、個性派に変わったのだ。
そうなるとセダンには、背の高いミニバン/コンパクトカー/軽自動車とは違う、個性派としての独自の価値が求められる。
それは上質な走りだ。セダンは背が低いから重心が下がり、後席とトランクスペースの間には隔壁があるからボディ剛性を高めやすい。タイヤが転がる時に発するノイズを遮断する上でも有利だ。
つまり「ミニバン時代のセダンの価値」は、優れた走行安定性/乗り心地/静粛性にあり、いい換えれば「安心と快適」になる。
カローラのセダンとツーリングも、この魅力に焦点を絞るとすれば、たとえ3ナンバー車になっても走りの質を高めた方がユーザーから歓迎されるかも知れない。
今は世代によってもセダンのとらえ方が違う。高齢のユーザーから見れば使い慣れた実用的なツール。いっぽうで幼い時から自宅にミニバンがあった30歳以下のユーザーにとっては、個性的なカテゴリーになる。
セダンを取り巻く環境が過渡期にあり、ユーザーによってセダンの価値観も違う。そこまで含めて、セダンを満喫したい。
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