台風の爪痕残る6月最初の週末、鈴鹿サーキットで開催された2023年スーパーGT第3戦のGT500クラス決勝450kmは、77周レース残り17周となった59周目にシケイン手前のブレーキングゾーンで大クラッシュが発生。23号車MOTUL AUTECH Zの松田次生がGT300と絡んでのクラッシュにより、赤旗中断となり、その後、赤旗のままレース終了となった。
日本各地で豪雨被害からの復旧を急ぐ地域も残るなか、快晴に恵まれドライコンディションとなった前日予選日の三重県鈴鹿市は、台風一過による風の影響が色濃く出るトラック上で、いつもどおりノックアウト方式の予選が実施された。
ここで近年鈴鹿を得意としてきたニッサン陣営の1台、24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zの平手晃平がQ2で"1発勝負"のアタックを決め、2016年最終戦もてぎ以来となる2度目のGT500ポールポジションを獲得。しかしセッション後の車検結果により、24号車には『GT500テクニカルレギュレーション1.6.1「ガスバック容量違反」』が発覚。これにより最前列スタートは幻となり、まさかの最後尾スタートから"陣営内の昨季チャンピオンの再現"とばかりに巻き返しを狙う状況となってしまった。
これでポールポジションは前戦勝者の36号車au TOM'S GR Supraの手に渡り、その隣には同陣営の19号車WedsSport ADVAN GR Supraと、トヨタ陣営がフロントロウを固める構図に。
今回も前戦同様450kmの勝負となるだけに、義務付けられた2回の給油を軸としたピット戦略も、77周の均等割りか、引っ張るか、それともミニマムなのか。グリッド2列目に並ぶ100号車STANLEY NSX-GTや、チャンピオンの1号車MARELLI IMPUL Zなど、ホンダ、ニッサンの各陣営も"抜けないコース"での上位進出を狙うべく、タイヤのライフ管理や交換戦略、各回の燃料給油の量などを含め、富士とは異なる鈴鹿のコース特性も踏まえての勝負が求められた。
正午12時より実施された20分間のウォームアップ走行を経て、GT500の全15台がグリッドへ。午後13時30分を前に気温は28度、路面温度は週末最高の46度という、想定より過酷なコンディションのなかスタートを迎えた。
各車とも「ギリギリまで燃料を節約したい」との思いからか、普段より静かな発進となったパレード&フォーメーションラップを経て、決勝の1コーナーへ傾れ込んだ隊列でも大きな動きはなく。最後尾発進だった24号車リアライズの平手がポジションをひとつ挙げたのみで、各車とも粛々と周回を重ねていく。
オープニングを経た2周目には1分49秒444のタイムで首位36号車auの坪井翔が逃げに掛かり、7周目にはシケイン進入のアウト側から、4番手の1号車MARELLI IMPULベルトラン・バゲットが100号車STANLEY牧野任祐を仕留めてポジションを上げていく。
その直後、ヘアピンでGT300車両のタイヤが脱落し、FCY(フルコースイエロー)からSC(セーフティカー)へと切り替わる。しかし序盤7周目では各陣営とも当然ながらピットレーンでの動きはなく、隊列整理からの13周目突入でレースが再開される。
ここで3号車Niterra MOTUL Zの千代勝正が1コーナーで8号車ARTA MUGEN NSX-GTをかわし11番手へ。続くラップでも64号車Modulo NSX-GTをオーバーテイクして、トップ10に入ってくる。また同じ周回では16号車ARTAの福住仁嶺がヘアピンで39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraのインを指しトップ5圏内に浮上する。
さらに千代は16周目に14号車ENEOS X PRIME GR Supraも捉えて9番手とし、僚友23号車MOTUL AUTECH Zの背後に迫ると、24号車リアライズ平手も16周目に37号車Deloitte TOM'S GR Supraを、18周目の1コーナーでは8号車ARTAを捉えるなど、スタート時より路面温度が10℃ほど下がったところで、ニッサン陣営が勢いを取り戻してくる。
続く19周目には8番手の23号車MOTUL AUTECH Zを皮切りに最初のルーティンピットが始まり、続く周回で3番手の1号車MARELLI IMPULと、ニッサン陣営が早めの動き出しを見せると、ホンダの8号車ARTA、トヨタの37号車Deloitte TOM'Sも同じ周回でピットレーンへ向かう。
ここではレース距離3分の1のドライバー最低義務周回数クリアのためドライバー交代はなく、各車ともダブルスティントへ。その後のラップでピットへ向かった64号車Modulo、39号車DENSO KOBELCO SARDも交代なしでコースに復帰。すると24周目のヘアピンで64号車太田格之進との接触により、ダメージを受けた39号車関口雄飛の右ラテラルダクトのカウルがバックストレートで吹き飛ばす。
レース距離も3分の1を過ぎた27周目には、2番手にいた19号車WedsSport ADVANと14号車ENEOS X PRIME GR Supraがそれぞれピットに向かい、阪口晴南、山下健太にチェンジ。29周目に入った100号車も、山本尚貴が残るロングスティントを担う。
100号車のこの動きに首位の36号車も反応するようにピットへ、30周目に宮田莉朋へバトンタッチし、同じ周回では17号車Astemo NSX-GTも塚越広大へと交代する。ドライバー交代を行った36号車の宮田はアウトラップでドライバー交代のない先行ピット組の23号車ロニー・クインタレッリにパスされ、1号車はさらにその前に。同じ交代組からは背後にいたはずの19号車坂口にも先行されてしまう。
この時点で最後まで引っ張り34周を走破して首位まで戻った24号車リアライズ平手がようやくピットへ。全車がルーティンを終えて交代組の19号車坂口が首位にたい、未交代組の1号車バゲット、23号車ロニーと続き、36号車au宮田が4番手につける。
ここからセカンドスティントの焦点は"前半ダブルスティント"で2番手、3番手を走る1号車バゲット、23号車ロニーのふたりがどこまで引っ張って最後のピットを入るかとなり、ここでチャンピオンが先に動き42周目にピットへ。平峰一貴にステアリングを託してフルサービス36.6秒の静止時間でコースへ送り出す。
そこから5周後の47周目に首位争いも動き、ドライバー交代のない19号車に合わせて23号車もピットへ。作業静止時間28.8秒だった19号車に対し、松田次生にスイッチした23号車は46.3秒で復帰していく。
続いてダブルスティントの100号車が48周目に、続くラップで36号車、14号車も立て続けに最後の義務ピットへ向かい、ダブルスティントがクロスしたニッサン勢とどうなるかの勝負に。ここで36号車は先に2回のルーティンを消化した19号車に先行してコースに復帰。だが、36号車は19号車にアウトラップでかわされて実質首位返り咲きはならなかったものの、2台のNissan Zには先行して2番手復帰を果たす。
先頭で義務ピットを残す3号車、24号車のうち後者は55周目に最後のピットへ向かい9番手で復帰。依然として1分51秒から1分52秒台と快調なペースで飛ばす3号車高星明誠がどこまでギャップを築き、どの位置で復帰するかという展開となった59周目。130Rからシケインへ向かうブレーキングゾーンで、実質の表彰台争いを展開していた23号車松田がGT300マシンと絡んで大クラッシュ。SCの宣言からすぐさま赤旗に切り替わり、事故の規模から再開は難しい状況でレースは中断されたままとなっている。
その後、赤旗のままレース終了が宣言され、3号車Niterra MOTUL Zがトップ、2位WedsSport ADVAN GR Supra、3位au TOM'S GR Supraのトップ3となっている。また、大クラッシュに見舞われた松田次生は、意識があることはアナウンスされたが、すぐにドクターヘリで病院に向かった。
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みんなのコメント
ドライバーも問題やけど、運営はもっと問題やと思うけどな・・・