■ カスタムの本場で日本人作品の「シボレー・インパラ」が大注目
今年で52回の開催を迎えたSEMAショーは、自動車関連企業のブースが3000以上も出展される世界最大規模の自動車部品・用品のトレードショーです。出展社の多くは米国企業ですが、日本企業も自動車メーカーを筆頭に、カスタムカーショップやパーツを扱う会社が自社ブースや、多数のデモカーを出したりしています。そして今回、日本のカスタムペイント専門店が出展した芸術品のようなカスタムカーが会場の話題をさらいました。アメリカ人が絶賛した日本人作のカスタムカーとはどんな車なのでしょうか。
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車をモチーフにしたアート作品? 凄まじいまでのインパクトに満ちた「シボレー・インパラ」(1958年)を製作したのは、奈良県にあるカスタムペイント専門店ROHANの井澤孝彦氏です。井澤氏独自の「エングレイビング」という技術と10年間を掛けて原料メーカーと共同開発した世界初の塗料を使って仕上げています。
「エングレイビング」とは、アメリカンカスタムカーの世界では古くからある手彫りの彫刻ですが、ローライダーの鉄バンパーやドアミラーなど狭いスペースに、アクセント的に施工するのが一般的で、井澤氏のインパラのようにボディ全体余すところなく、彫刻を行うカスタムは前代未聞の特殊な技なのです。
バンパーに彫り込むのでさえ非常に時間も手間も掛かる技術をなんとボディ全体で実施。誰もがこの車のカスタムを手彫り+銀塗装によるものだとは到底、思わないでしょう。多くの人が少し凝ったデザインのラッピング? と思うようで車に近づいてみて表面を触って、実は彫刻だということに気づき、「OMG!!」となるわけです。
■2016年のSEMAでは黄金の「GT-R」を出展し世界が注目
実は井澤氏が全身エングレイビングのカスタムペイントカーをSEMAに出展したのは今回が最初ではありません。2016年のSEMAショーに出展した黄金のGT-Rが最初です。(自社ブースではなくアルミホイールメーカーのブースのデモカーとして展示)
このときの会場の反応も凄まじく、筆者(加藤久美子)は何度も写真を撮ろうとブースを訪れましたが、いつ訪れても人だかりができていて近寄ることすらできませんでした。3日目の閉会後にやっと写真に収めることができたのです。
ちなみにこのGT-Rはその後、ドバイ日産のショールームにしばらくの間展示され、石油王たちが購入を争ったとか。マイケルジャクソンの息子もウワサを聞きつけてSEMAの会場に来たというビックリな逸話も残っています。
■全身エングレイビングのインパラを見た来場者の反応は?
インパラが展示されていたブースでは井澤氏のサイン会も開催されました。そこに集まってきた来場者の皆さんにこの車の印象を聞いてみました。
「ラッピングだと思ったら塗装、しかも彫刻されていて本当にびっくりした!」(アラバマ州男性)
「イザワのことは2年前のSEMAで知った。あのGT-Rもすごかったが今回は57年型のインパラでやってくれた! なぜこんなことができるんだ? 尊敬と驚きしかない」(カリフォルニア州男性)
「制作途中の動画を見ていたが、日本人はみなこのような技術を持っているのか? それともイザワが天才なのか?」(オーストラリア男性)
「日本に住んでいる日本人ペインターがアメリカンカスタムペイントの流れを完全に変えた! 最高にクール!」(オレゴン州男女)
絶賛の嵐で、同じ日本人として筆者も誇らしい気持ちになりました。
■2か月後の東京オートサロン2019に出展決定!
SEMAでは例年、ショー最終日の夕方から展示された車が場所を移して展示されたり、ドリフト競技やバイクのジャンプ競技などが実施される「SEMA Ignited」というお楽しみイベントが開催されます。
SEMA自体はトレードショーのため屋内展示スペースには業界関係者以外の入場ができませんが、こちらは一般入場もOKで毎年1万人規模の来場者が訪れます。SEMA Ignitedでもっとも盛り上がるのは、出展されていた車によるパレードランで、銀色に輝くこの「シボレー・インパラ」もランに参加しました。車の形をした芸術作品ではなく、きちんとエンジンが掛かって実際に走れる車であることも、実は凄いことなのです。
そして、本場アメリカで絶賛された「シボレー・インパラ」は、このあと嬉しいことに来年の東京オートサロン(2019年1月11-13日幕張メッセ)「KUHLレーシング」のブースに出展される予定です。オートサロンに行かれる方は世界初の技術を、ぜひご覧になってみてください。
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