紆余曲折の資本提携の歴史をもつスバル
トヨタ自動車が所有していたスバルの株式比率を、16.83%から20%に引き上げたことが報道されました。これによってスバルは、トヨタ自動車の「持分法適用会社」となり、スバルの損益は出資比率に応じてトヨタ自動車の連結決算に反映されるようになりました。
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スバルは、富士重工の社名時代から、中島飛行機を前身として技術力には定評がある自動車メーカーでした。1958年から生産された軽自動車のスバル360などは軽の名車と知られて、マニアの間では通称「てんとう虫」呼ばれて、現在でもコレクターの間では人気の車種として知られています。また、四輪駆動や水平対向エンジンなど、他社にはない技術を持っていることで、「スバリスト」と呼ばれる熱烈なスバル車の愛好者から高い支持を受けています。
もともと日本興業銀行(現みずほファイナンシャルグループ)をメインバンクとしていましたが、経営としては…企業としての変遷には紆余曲折があったようです。その結果、日本興業銀行からの働きかけで1968年に同じ日本興業銀行をメインバンクにしていた日産自動車と提携し、委託生産を請け負うことになった。
日産自動車や日本興業銀行から社長や役員が送り込まれることで、スバルはあまり業績の振るわなかった自動車以外の飛行機・産業機器・環境技術・鉄道車両の各事業にも力を入れていくこととなります。
それでも、自動車に関して1987年には米国生産進出にチャレンジ。単独進出は難しいと判断して、いすゞと合弁でSIA(スバル・いすゞオートモーティブインク)を米インディアナ州に設立し、いすゞはロデオ、スバルはレガシィを生産しました。ちなみに、販売が振るわなかったいすゞはその後撤退しています。
そんな流れの中でもスバルは順調に思えましたが、自動車メーカーとしては100万台超えで国内自動車8社中で最小。2000年には、出資先であった日産自動車が経営不振に陥ってルノーと資本提携。これが影響して富士重工は日産自動車に資本提携を解消されてしまいます。実に30年以上も日産グループの中に位置していたのですが…。
この日産自動車の出資分をアメリカのゼネラルモーターズが買い取る形で20%出資を富士重工にします。晴れてゼネラルモーターズグループ入りするわけです。この時には当時は、ゼネラルモータースグループであったスズキとも株式を持ち合う資本提携関係を結んでいます。また、ゼネラルモーターズ・グループのオペル・ザフィーラのOEM車「トラビック」をスバルで販売しました。
まさに「寄らば大樹の陰」をリアルに具現化していたスバルですが、その安心もつかの間、2005年にゼネラルモータースが販売不振に陥って経営悪化。これを理由にまたもや資本提携を解消されてしまします。余談ですが、ゼネラルモータースは2009年には経営破綻で一時アメリカ国有化企業となりましたが、再建され2013年に国有化ではなくなっています。
そんなゼネラルモータースが手放したスバル株の8.7%を今度はトヨタ自動車が出資。なんとも絶妙なタイミングでトヨタグループ入りしています。当初はトヨタ自動車の出資率は8.7%でしたが、2008年4月に提携拡大が発表。出資比率を持分法適用にならない16.4%まで引き上げていきます。これまでのトヨタ自動車とスバルに加え、トヨタグループのダイハツ工業も加わった業務提携となりました。
ここからが大きく動きます。FR(後輪駆動)のスポーツカー(トヨタ86/スバルBRZ)はトヨタ自動車と共同開発し、ダイハツ工業から軽自動車をOEM供給してもらうことで、スバルは収益性の悪い軽自動車生産を取りやめる事になります。これは本格的に日本メーカー同士で生産すべきクルマを効率よく配分したことになったわけです。
そして今回2019年9月のトヨタ自動車の出資比率20%でのスバルを持株法適用会社化。これによってトヨタ自動車の世界販売台数(ダイハツ工業、日野自動車含む)にスバルが加われば年間1150万台規模となり、ドイツのフォルクスワーゲン、日産自動車・ルノー・三菱自動車の連合を上回ることが見込まれます。
こうなれば、次世代自動運転分野やインターネットに常時接続するコネクティッド・カーの技術開発、米IT(情報技術)大手などとの連携やデータ収集、標準争いでは大きな武器になるはずです。電源プラグや充電規格を業界標準として確立し、アメリカやヨーロッパ各国のライバル社に対する優位性を得ようと試みている感じもします。トヨタグループに属したスバルとしては、いい展開になりそうな感じです。
「100年に一度」と言われる大変革の時代。そんな大きな動きの中にいるスバルですが、これまでの「紆余曲折」な体験が、スバルらしさを失わずに途中に何箇所か設けられた通過確認地点を上手にクリアしていく事に期待を寄せたいところです。
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