約1カ月前の2024年10月15-18日(幕張メッセ)の日程で開催された「ジャパンモビリティショービズウィーク2024」を、若者たちはどう感じたか。「東京モビリティ会議2024withベストカー」というトークセッションを担当したベストカー編集部として、「総括」をお届けしたい。
「ジャパンモビリティショー2024」に若者たちはどう感じたか? 対話と提案で「次世代モビリティ社会」を作る
文:ベストカーWeb編集部、西川昇吾、黒木美珠、板倉拓寿、大坂怜央、後藤和樹、島崎真徳、写真:森山良雄
イベント協賛:トヨタ自動車、マツダ、スズキ
【画像ギャラリー】「東京モビリティ会議2024withベストカー」イベントの様子(9枚)
■「出会いの場」を継続的に盛り上げるために
「東京モーターショー」の時代は隔年(1年おき)開催であったが、2023年に「ジャパンモビリティショー」となって大成功をおさめ、「この流れを止めたくない」ということで合間の年にビジネスマッチングを主体としたイベントを開催することになった。
それがこの「ジャパンモビリティショービズウィーク2024」であり、2024年10月15日(火)~18日(金)、幕張メッセにてITと家電の国際展示会である「CEATEC」と共催というかたちで開催された。
このイベントに、「ベストカー」も「トークイベント主催」というかたちで参加。次世代モビリティ社会では「主役」となる若者たちに集まってもらって、イベント最終日である10月18日(金)、「東京モビリティ会議2024withベストカー」という名称でさまざまな意見を交わしてもらった。
本記事は、その「東京モビリティ会議」の登壇者たちに、「ジャパンモビリティショービズウィーク2024はどうだったか?」と、若者たちが語り合う「東京モビリティ会議2024withベストカーはどうだったか?」を伺った。
■「ジャパンモビリティショービズウィーク2024はどうだったか?」「どうあるべきか?」
【西川昇吾(自動車ジャーナリスト)】
今回のジャパンモビリティショー名称に「ビズ」とあるように、企業と企業が結びついて新たな仕事、ビズを生む場としての機能がなされていた。ニューモデルやコンセプトモデルの発表はないので、一般的な自動車ファンにとっては正直地味に見えるだろう。
西川昇吾(自動車ジャーナリスト)「新たなビズの出会いを生む場は今後も必要」
ただ、日本の自動車、ひいてはモビリティの将来を考える上でとても有意義な場であったことは確かだ。大手自動車メーカーの出展ももちろんだが、スタートアップを始めとした中小企業の出展もされていて、それがコンパクトな場にまとまっていたのが好印象だ。
このようなかたちならば、今までなかった企業同士の出会いが生まれやすい。新たな出会いが日本のモビリティ産業の競争力を加速させていくはずだ。産業用ロボットは以前からあるが、スタートアップブースで見た開発現場で活用されるAI技術は、日本もまだ高い技術力を維持できるはずだと期待させてくれるものがあった。モビリティに関して新たなビズの出会いを生む場は今後も必要だ。
【黒木美珠(自動車ジャーナリスト/Youtuber)】
昨年のJMS2023に比べると、規模感はややコンパクトではありましたが、各メーカーや企業が「これからのモビリティ社会にどう貢献できるか」を簡潔でわかりやすく展示しているのが印象的でした。
黒木美珠(自動車ジャーナリスト/Youtuber)「役割を分担しながら進んでいくことが不可欠」
特にスタートアップ企業の出展が多く、新たな視点や技術の可能性を強く感じました。2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けては、大企業だけでなく中小企業やスタートアップが互いに協力し、役割を分担しながら進んでいくことが不可欠ではないかと思います。
【板倉拓寿(大学生)】
全体的に環境への配慮と持続可能なモビリティに対する強い意識を感じ、イベントから帰る道中には私の中の“自動車観”のようなものが広がっていく感覚を受けました。実際に電気自動車やハイブリッド車のプロトタイプが多く出展されており、未来的モビリティに終始胸が躍り続けていました。
板倉拓寿(大学生)「私の中の“自動車観”のようなものが広がっていく感覚を受けました」
また企業ブースでは、各社のエコロジーとパフォーマンスの両立を目指す取り組み、つまり各々の未来志向を明確に読み取ることができ、具体的な想像ができる良い機会でした。
何よりビズウィークは、業界関係者や技術者が集まるネットワーキングの場としても機能しており、参加者同士の交流が活発というのが一番のセールスポイントだと感じました。新しいビジネスチャンスやコラボレーションの可能性が生まれ、こうして業界全体が一歩ずつ、着実に前進していくのだと実感しました。
総じて、ジャパンモビリティショー2024ビズウィークは未来のモビリティに対する期待感を高めさせる、素晴らしいイベントでした。次回の開催が待ち遠しいです。
【大坂怜央(大学生)】
「豊かで夢のあるモビリティ社会を創りたい」というスローガンを元に、クルマに留まらず、未来に生まれるであろう様々な技術が展示されたとても素晴らしいものでした。ここまで技術は進歩しているのか! と、目を見張るものが多く、この先の動向がとても楽しみになりました。
また、これから先のモビリティ社会を支えていく上で、多種多様な企業や業界が手を取り合っていくことが必要だと考えます。
大坂怜央(大学生)「このイベントに参加しなければ得られない知見も多くあった」
その中で、どうしても必要なのが未来に向けて取り組む企業との交流だと考えます。このイベントでは、より良い社会の実現に向けて技術を開発し続ける企業同士が、業界を超えて交流することができる。その中で、新たなアイデアが生まれてきたり、新しい価値観が生まれたりと、このイベントに参加しなければ得られない知見も多くあったと思います。見る側にとっても、企業側にとっても有意義なものであったと思います。
【後藤和樹(空間デザイナー)】
いわゆるいつものJMS(モーターショー)と比べると、各出展者様のブースの華やかさや、コンセプトカーなどの展示は無く、活気溢れる楽しいイベント感は少ないように感じました。
後藤和樹(空間デザイナー)「いかにしてJMSと差別化を図っていくかが、今後の課題」
しかし、事前情報として、今回のビズウィークはBtoBがメインと聞いていたので、各メーカーの普段の取り組みや、環境対策への配慮など、「ただクルマを作っているわけではない」という点が見られたのは好感が持てました。
ただ、JMSの冠をつける必要性があるのかというと、なんとも言えない気もします。ターゲットが違う点や、展示物の内容からして、そこにあったのは「モーターショーではない別の展示会」だったので、いかにしてJMSと差別化を図っていくかが、今後の課題になっていく気が致します。
【島崎真徳(大学生)】
まず、一般のお客様が多いと感じました。平日にも関わらず来場されたということは自動車業界への興味関心がかなり強いことの現れと考えます。そして、会社関係、一般、学校問わず訪れていた方々の多くが実車の展示されているスペースに多く集まっていたように感じます。
そこにいらっしゃった方々の中には、真剣にメーカーの方と話されていた人も居ましたし、仲間内で嬉々として話していた人も居ましたし、じっくりと自動車を眺める人など沢山の種類の方が居ました。
島崎真徳(大学生)「せっかくなら特別感はある程度必要」
それに比べ、ブースは寂しい雰囲気がありました。人が居ないブース、無言で掲示物を見る人などなど。やっぱりビジネスが目的とはいえ、実車であったり説明員の充実であったりが次回以降の課題ではないでしょうか。やはり実物を前にしたほうがワクワクして話も弾むものでしょう。資料を前にして淡々とビジネスの話をするのは、会社で仕事をするのと大差ないように思います。
せっかく大きな場所を借りて、モビリティ産業の発展を願うのであれば特別感はある程度必要と思います。まだ初回なので多くを望むのは酷ですが、次回以降に期待したいと感じました。
【寺崎彰吾(本企画総合ディレクター)】
今回のイベントは「B to B」ということで「一般ユーザーには来てもらわなくてよい」というような、ある程度割り切った決断があったように思います。ビジネスマッチングの場としてそれなりに機能したのだと期待しています。
各ブースや展示物に関心を示しているお客さんはたくさんいたので、「接着剤」のようなガイドが必要だった気が
そのうえで、「B」と「B」を繋げる接着剤のような存在が必要だとも思いました。各ブースを回って「ここはここと相性がいい」と紹介する人や、それぞれの会社の「強み」をアピールするアイコン表示があったり、マッチングアプリのような機能をもった場があるとよいのではないかなと感じました。
また今回のマッチングの「結果」を示す機会もあるべきだとも思います。たとえば半年後に「このイベントで繋がった企業同士で、こんな成果が出ました」というようなレポートが出る仕組みがあればなと思います(ここらへんメディアが協力できるところかなとも思います)。
■「東京モビリティ会議2024はどうだったか?」「どのようにあるべきか?」
【西川昇吾(自動車ジャーナリスト)】
媒体編集長、ジャーナリスト、現役大学生、空間デザイナー……。自動車とさまざまな関わりをしている人間が集まったが、クルマ、いやモビリティというのはココまで広がりが工業製品であることを改めて感じた。
各種お題に対しても思うことは人それぞれだ。ここまで思いのアプローチが異なる工業製品もそう多くないだろう。筆者の自動車が好きな大きな理由に「工業製品としてこれほど個性に溢れるものはない」というのがある。登壇者それぞれ好きな自動車が異なるし、モビリティへの考えも違ったことはあった。それは自動車やモビリティが単なる移動手段ではなく、個性に溢れた工業製品であるからだろう。自身がこの仕事を好きでしている理由を改めて見つめ直すことが出来た。
ただ、全員共通している思いもあった。それは、日本が世界に誇れるモビリティという産業を衰退させてはいけないということ。そのためにも自動車ジャーナリストとして微力ながら力添えをしていきたい所存だ。
【黒木美珠(自動車ジャーナリスト/Youtuber)】
若いクルマ好き同士で話せる機会は決して多くはないものです。「若い世代は自動車やモビリティについてどう感じているのだろう」と、日々抱いていた疑問が、今回のトークショーを通じて少し解けた気がします。先の未来は、今どんなに予測しても、必ずしもその通りになるとは限りません。
「頼もしさとともに危機感も感じた」と黒木氏
しかし、モビリティ全体について真剣に考えている若い層がいることに、頼もしさを感じると同時に、自分自身の励みにもなり、「呑気にしていると置いていかれる」という少しの危機感も覚えました。若手が教育を受ける場が増えるのは喜ばしいことですが、それだけでなく、若い世代同士がもっとコミュニケーションをとり、互いに刺激し合いながら未来に向かっていけたらと強く感じました。
【板倉拓寿(大学生)】
実際にメーカーに勤めている方やメディアに勤めている方の前で、トークショーといった形で現在のモビリティ社会に対して切り込んでいく、というのは非常に大事なことで、個人的にはもはやメディア主催はもちろん、メーカー主催でユーザーのリアルな声を聴く機会はもっともっと増やして良いのではないかと感じました。
欲を言えば自分を含め、少し遠慮してしまっている点が少なからず存在しており、きっとそれは聞き手にも伝わってしまっているのではないかと感じています。滅多にないチャンスである為、こうした場を利用して現代のモビリティ社会に対して普段感じていること、各メーカーに伝えたいことを声を大にして述べる。それこそが今回の様なトークショーの醍醐味であると感じました。
総じて、モビリティ会議自体には全くもって問題ナシ、寧ろこうした機会をどんどん増やすべきであると考えます。トークショー自体の認知度が高まり、意見を述べたい者が増加、そうすることでユーザーとメーカーがより近づいた関係性を保てるのではないかと感じます。”
【大坂怜央(大学生)】
「将来のモビリティ社会について」や「電動化について」など、さまざまな議題をテーマに対し、自分たちのような若い世代から未来について考える良い機会をいただくことができました。
緊張で頭の中こんがらがって上手く言葉にできなかったですが、司会の塩川編集長をはじめ、登壇者の方々に助けていただきながら、自分自身が思っていることや言いたいことが言えた、とても貴重なイベントだと思いました。
談義する中で、一人一人が違った価値観を持ちながらも共通してクルマというものがただの交通手段になるのではなく、楽しさを持っているものであることを望んでおり、自分自身と考え方がマッチする方々が若者の中にもいることを知ることができました。
クルマ好きという人々がマイノリティになりつつある現代で、我々が思っていることを発信できる貴重な機会を設けてくださり本当にありがとうございました。
【後藤和樹(空間デザイナー)】
(司会の)塩川さんもトークショー内で仰っていたように、現在クルマ社会を牽引していっている方々は高齢化していると思います。さらにはSNS等の発展によって、物事に対して思った事を発信しただけで炎上してしまったり、誹謗中傷を受けたりしてしまう残念な世の中です。
そんな中、少なからずいる若者のクルマ好きに可能性を感じ、光を当ててくださり、世の中に発信できる場を与えてくださったことは、本当に嬉しい限りでした。今のクルマ社会に対して、それなりに思うことはあれど、これを公にする場というのは極々限られており、他にもあまりなかった取り組みに思います。
雑誌や編集、現代のジャーナリスト様の意見だけが、世論の代表というわけではなく、より読者に寄り添った意見が、この討論会には確かにあったと思い、忖度なく思ったことを言える場が、今後も増えていってほしいですし、この取り組みで少しでも楽しいクルマ社会がやってくることを、切に願います。
【島崎真徳(大学生)】
次回も行うのであれば、時間の拡充、各メーカーの若手に登壇してもらうことでしょうか。面白くなると思いますよ。若手からどう自分のメーカーが見られているか、思われているかを上層部が知る良い機会になると思います。
そして、ステージ上の椅子を近づけたり多少半円状にしたりとかどうでしょう。そうしたほうが議論しやすいかなと。後藤さんも仰っていましたが、「塩川さん対誰か」みたいな構図だったと思います。僕はこう思うけど君はどう思う?みたいに話の発展、深化もしようと思えば出来るのではないかと思います。そして話し合いをするなら多少観客から見にくくなったとしても半円状にするのは必要かなと思います。今回私は端の席だったので大した労力なしに全員の意見を聞けました。しかし、板倉さんとか大変だったのではないでしょうか。左右どちらも常に見ないといけなかったですから。そして次回以降会話の深化を志すならばもっと大変になると思います。
「(今回のような「横並び」ではなく)次回は半円状で」と島崎氏。確かに!
以上が次回実現してほしいことですが、全体を見返しても特段欠点もなかったのでベストカーさんの想定、運営能力が高かったと感じます。次回も是非企画されてくださいね。
【寺崎彰吾(本企画総合ディレクター)】
『アメトーク』というバラエティ番組によって「家電芸人」というジャンルが生まれました。家電製品に詳しい芸人さんが、それぞれ好きな最新家電の機能についてプレゼンしてゆく内容です。「このクルマ版が出来たらなあ」と思っていました。
今回、若者たちに自由に「クルマについて」「自動車メーカーについて」語ってもらったことで、そんなかつての願いを思い出しました。よかった点は若い人たちの素直な気持ちを聴けたこと。クルマのコモディティ化が叫ばれるなかで、まだまだ各社、各車の個性を愛する声は大きいんだなと感じられました。
次回の改善点は、どうしても「司会対発話者ひとりひとり」となってしまったこと。もっと発話者同士で議論できたら、盛り上がる話題があっただろうなと思います(『朝まで生テレビ』のような構成が必要かなと思います)。次回似た企画をやるとすれば、Liveでもいいのですが、もっとしっかり時間をとって、それをテーマごとに動画で編集するかたちがいいのではないかなとも思います。
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