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【ヒットの法則251】シトロエンC4ピカソにはミニバンでしか実現できない走りの楽しさがあった

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【ヒットの法則251】シトロエンC4ピカソにはミニバンでしか実現できない走りの楽しさがあった

2006年9月、シトロエンC4をベースにした7シーターミニバン「C4ピカソ」が登場している。先代にあたるクサラ・ピカソに比べるとオーソドックスにも見えるが、実際に走らせてみれば、シトロエンらしくユニークで、しなやかな走り味を持っていることに驚かされた。ここではフランスで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年12月号より)

シトロエンならではの世界が広がるインテリア
MPVとはヨーロッパ地域では「Multi Purpose Vehicle(=多目的車)」と理解される一般名詞。そしてそんなジャンルを生み出したシトロエン自らが「新しいコンパクトMPV」と紹介するのが、2006年9月のパリサロンで披露されたC4ピカソだ。

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従来のクサラ・ピカソが背の高い5シーターで、異なるパッケージングの持ち主であったこともあり、ヨーロッパではC4ピカソがリリースされた後も当分は、クサラ・ピカソの方も継続販売が行われるという。

こうして、C4ファミリーの新たな一員という形態でのデビューとなった新しいピカソ。しかし、どちらかといえばそのルックスは、同じモノスペースカーでもクサラ・ピカソに比べると、むしろ普遍的とも感じられる。

クサラ・ピカソがころんと丸い、何ともユニークで特徴的なプロポーションの持ち主であったのに対し、全長を30cm以上も増しテールゲートもより垂直に近づけたC4ピカソのそれは、端的に言ってよりオーソドックスなミニバンスタイルに近づいた。「シトロエンのミニバンがコレかよ……」という声を上げたくなるファンもきっと少なくないだろう。

けれども、そんな声を上げそうになった人も、ひとたびこのクルマのシートへと腰を落ち着ければ思わず「ニヤリ」とするはず。そこにはいかにもシトロエン車ならではという世界が広がっている。

そうコメントできる第一の根拠は、まずは素晴らしく開けた視界の広がり感である。それは「金魚鉢の中から外界を覗いてみれば、きっとこのように見えるのではないか」とさえ思えるほどだ。

スーパー・ワイドアングル・パノラミック・ウインドスクリーンと、文字にするとかくも仰々しくなってしまうネーミングのウインドシールドは、実際にドライバーの頭上部分までを覆う巨大なもの。見事な3次元の曲面を見せるそれは、うっかり飛び石でも受けてヒビを入れようものならば随分と高額な請求書が回ってきそうなところがちょっと心配でもあるが、そんなこのガラスとそれに続く左右の大きな三角窓とのコンビネーションが、このクルマならではの優れた前方視界を生み出してくれる。右左折時にはそこを通して視界を得ることになる三角窓には、雨天時にはワイパーが欲しくなるくらいだが。

液晶パネルとナビゲーション用モニターからなるセンターメーターを中心としたダッシュボード周りのすっきりしたデザインは、このモデルが全車2ペダル仕様で、かつ空調スイッチ類を左右席用に分けてダッシュ両端にレイアウトとしたことで初めて可能となったもの。ステアリングコラム上に生えた何とも華奢なシフトセレクターや、ダッシュアッパーの収納ボクッスもユニークだ。

そんなこのクルマが「C4ファミリーの一員」であることを主張するのが「回らないセンターパッド」を中央に据えたステアリングホイール。「そこにレイアウトされたスイッチ類が移動をしてしまうことがなく、エアバッグも末広がりの理想的な形状で展開させられる」というのが、ハッチバックモデルで登場の折に耳にしたメリットだ。

スライド可能な2列目シートを最前端にセット(これでも足元には何とか実用的な空間が確保される)すれば、格納時には床下にすっきりと収まる2つの3列目シートにもさほど無理なく大人が座ることができる。

正確なハンドリングとしなやかな足に驚嘆
母国フランスで開催された国際試乗会に用意された試乗車たちは、どれもオプション設定されたリア・エアサスペンションを装着していたが、ミニバンとしては例外的なそんな贅を尽くしたメカニズムが生み出す効果は抜群だ。走り出したその瞬間に、ベースとなったこれまでのC4を凌ぐしなやかなフットワークに驚嘆させられることになったのである。

それは、単にソフトな走り味というだけではない。いかにもシトロン車らしい正確なハンドリングと、そんなストローク感に富んだ乗り味を両立させているところに感心させられる。ちなみに、このリアエアサスはラゲッジルーム内のスイッチによってボディ後端高を10cm以上も下げ、荷物の積載性を向上させる機能も備える。

ところで、従来からのC4シリーズのエンジンと組み合わされた6速の2ペダル式MTが、『オート』モードで使用してもマナーの良い動力性能を味わわせてくれたことにも触れておこう。確かに、変速時に一瞬駆動力が途切れてしまうという現象はその構造上免れない。しかし、シフトプログラミングが適切で「想像もしないタイミングで変速が行われる」という違和感は最小限で済む。

むろん、『マニュアル』モードでパドル(「回らない」設計なのが嬉しい)操作を行えば、意のままのタイミングでのシフトが可能。まさにMTとATの特徴を兼ね備えたトランスミッションがこれということになる。

率直に言って、C4ピカソでのテストドライブはとても楽しい時間だった。「ミニバンには、ミニバンでしか実現出来ない走りの楽しさがあるじゃない!」と、今さらながらこれはそんなことをぼくに初めて教えてくれたモデルであったように思う。

硬めの足まわりでロールやピッチングを抑え、「ミニバンでスポーツカーの走り」を謳うモデルも見受けられる昨今、「しかしそんなのはやはり邪道ではないのか!」と、目からウロコのC4ピカソなのである。(文:河村康彦/Motor Magazine 2006年12月号より)



シトロエン C4ピカソ 2.0i 16V 主要諸元
●全長×全幅×全高:4590×1830×1680mm
●ホイールベース:2728mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1997cc
●最高出力:143ps/6000rpm
●最大トルク:200Nm/4000rpm
●トランスミッション:6速AMT
●駆動方式:FF
※欧州仕様

[ アルバム : シトロエン C4ピカソ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • 広い視界によるドライバーズカーとしての解放感は三菱(ミニカ)トッポの伝統的な売りでもあった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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