「やめろ」と言われたから始めた
その画家に出会ったのは、2023年5月。イタリア・コモの『コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ』会場だった。同イベントは、現存する世界最古の自動車エレガンス・コンクールであり、毎年初夏にBMWの歴史部門の後援で催されている。2023年度は隣接するヴィラ・エルバで、2019年を最後に途絶えていた一般公開も復活した。そこで筆者は、一棟の白いテントを見つけた。中を覗いてみると、往年のBMWにおけるスポーツモデル「3.0CSL」の絵がイーゼルの上に飾られている。そこから視線を下ろして驚いた。なんとアーティストが同じBMWの「502カブリオレ」の絵を制作中だった。這いつくばったかと思えば、ときには立ち上がってさまざまな絵の具を垂らしている。鮮やかな色が次々とキャンバスの上で散ってゆく。当然、本人もアクリル絵の具まみれである。これまでヨーロッパ各地で、さまざまな自動車アートの画廊やライブ制作を訪れたが、ここまでダイナミックな光景に遭遇したことはなかった。
アストンマーティン創立110周年記念イベント「アルカディア東京2023」が浅草寺と富士で開催。限定モデル「ヴァラー」も日本初公開!
彼の名はイアン・クック。BMWの招待アーティストだった。英国第一の自動車産業都市バーミンガムに生まれた彼は、数々の現代美術家を輩出したことで知られるウィンチェスター・スクール・オブ・アートを2004年に卒業。自身のアトリエ「ポッブバンカラー」を拠点にアーティスト活動を開始し、現在に至っている。制作中のイアンの周囲には、本人同様絵の具まみれになったトーイカーが山積みになっている。やがてその理由がわかった。ホイールに絵の具をつけて前後に走らせ、その轍(わだち)を記すのだ。そればかりではない。コントローラーを取るので何かと思えば、ラジコンカーも駆使するのだった。その手法を始めたきっかけが愉快だ。現在のスタイルを確立する前夜である2006年のクリスマス、彼はラジコンカーをプレゼントされた。贈り主は彼のスタジオの様子を知っていたのだろう。「ラジコンカーをスタジオに持ち込むな。絵の具で汚すなよ!」と告げた。しかし逆にイアンは「持ち込んでしまった」のだという。
新しいアクション・ペインティング
前述の公式ウェブサイトで数えてみると、これまでイアンが取り上げたクルマのブランドは4輪・2輪含め80以上に及ぶ。アストン・マーティン、ロールス・ロイス、レンジローバーといった著名なものだけでなく、ベドフォードといった商用車まである。日系もしかり。「ダットサン240Z」といった玄人好みなものを取り上げているのには舌を巻く。各車の特徴やキャラクターは最大限に引き出されている。自動車アートの評価は、それができるかできないかで決まってしまう。作者がどこまでクルマを熟知しているか、乗り物に情熱があるか、そしてそのクルマのある空気感が醸し出されているかが一目瞭然なのだ。そのうえ、一見無造作に飛び散った絵の具が、奇跡ともいうべき躍動感を醸し出している。美術史を振り返れば第二次世界大戦後、絵の具を垂らしたり散らすことで作者の身振り(アクション)を投影させる「アクション・ペインティング」が、米国のジャクソン・ポロックをはじめとする作家によって試みられた。日本でも白髪一雄が天井から下がった紐にぶら下がり、足で絵を描いた。
イアンは、そうした「アクション・ペインティング」の自動車版を見事にやってのけている。自動車の化身であるモデルカーを媒体として、車にとって最大の特性である「ムーブメント」をキャンバスに転写しているのだ。そのことで、オートモーティヴ・アートを単なる形態の複写から脱皮させることに成功している。そうした奇抜な作画手法にもかかわらず描く姿は真剣だ。彫刻家・棟方志功の生前を思わせる。それでいながらコヴェントリーにあるアトリエでは、「事前に連絡してくれさえすれば大歓迎」と至ってフレンドリーだ。目下各国の自動車イベントに引く手あまたの彼。次はどの国の、どのイベントでばったり出会って、再びあのパフォーマンスが見られるのか、今から楽しみである。イアン・クック公式サイト『POPBANGCOLOUR』https://www.popbangcolour.com
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
マジか…? 新制度導入で「車検」通らないかも!? 10月から始まった“新たな車検”何が変わった? 覚えておきたい「OBD検査」の正体とは
ついにトヨタ「新型セリカ」復活!? 次期8代目登場か… 中嶋副社長「セリカ、やっちゃいます。」宣言! 会長も後押し!? ラリージャパンで語られたコトとは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
一般車両侵入でSS12中止のラリージャパン、主催者に約800万円の罰金! 執行猶予付き1600万円の追加罰金も
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
緊急避難なら駐車違反が罰せられないなら「腹痛で路駐してトイレに駆け込んだ」ってあり? 違反が免除されるケースとは
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?