現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則463】アルファロメオ ミトは走り、内外装ともバランスよくプレミアムだった

ここから本文です

【ヒットの法則463】アルファロメオ ミトは走り、内外装ともバランスよくプレミアムだった

掲載 更新 3
【ヒットの法則463】アルファロメオ ミトは走り、内外装ともバランスよくプレミアムだった

2008年、アルファロメオからコンパクトモデル「MiTo」が登場し、日本でも話題となった。全長わずか4mという147よりも小さなコンパクトカーだが、8Cコンペティツィオーネをイメージさせるプレミアム性があった。Motor Magazine誌はイタリアで行われた国際試乗会に参加、ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

プレミアム性をコンパクトなボディで実現
このところフィアット・グループ・オートモービルズ(FGA)が元気である。北米市場には参入していないので、アメリカや日独のメーカーなどと違いサブプライムローン問題の影響を直接受けないということは大きいが、それはそれとして、基本的なモデル戦略が功を奏しているからこその成長に他ならない。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

本丸のフィアットはグランデプントの大ヒット以来、好調を持続、昨年の夏に投入したフィアット500も予定どおり販売を伸ばしており、まさに順風満帆といったところだ。昨年、復活させたアバルトは予想以上に若者に受けて、うれしい誤算だったとも訊く。

盤石なフィアットブランドをベースにして、FGAの成長戦略は次のステージに入る。そこではアルファロメオとランチアの拡大が図られることになる。この2つのプレミアムブランドがうまく成長軌道に乗れば、FGAは北米市場の不振にあえぐ日独米の自動車メーカーを尻目に、業績を大幅に向上させ、その存在感をグンと増すことができるに違いない。

さて、そんな状況下でのアルファロメオ・ミトの登場だが、まさにこれはプレミアムコンパクトの企画の初めに取りあげるにふさわしいモデルである。いま世界の自動車メーカーは環境問題への対応を考えつつ、いかに小さなクルマに付加価値を与え、それ相応の価格設定をして、収益を上げるかに頭を悩ませているが、そうした意味でミトは時代の申し子のような存在だ。

しかもミトに与えられたプレミアム性は、非常に高いものだ。このスタイリングをひと目でも見ればわかるように、ミトはアルファロメオのフラッグシップスーパースポーツである8CコンペティツィオーネのDNAを受け継ぐコンパクトカーだからだ。

実に明快な話だが、よく考えてみるとこれは凄い。アルファロメオの最も高くてゴージャスなクルマのイメージを最も小さくて手頃なクルマに再現したからだ。下手をすれば、それは非常に陳腐なものになりかねない。そういう危険性があったはずだ。しかし、そうはならなかった。アルファのデザイン力によるものなのか。それとももっと幅広いブランド力によるものなのか。

試乗に先立つミートのプレゼンテーションでは、8Cと競演するプロモーションビデオが流されたが、それは実によくできていた。ミトが8Cに遜色ないクルマのように感じられた。「クラスが違いすぎるから逆に違和感がないんだな」などと、わかったようなわからないような理屈をつけて納得せざるを得なかった。8Cのデビュー以来、アルファにちょっと「やられ気味」なのだが、その症状がまた出たのかも知れない。

8Cと同様にアルファロッソのボディカラーがよく似合う
実車を目の前にすると興奮はさらに高まる。4mをわずかに超える全長で幅は1720mmあるので、全体に安定感があるフォルムだ。そうでありながら、フロントグリルとヘッドライトのあたりは8Cのイメージそのままで実にスタイリッシュ、無理にコンパクトにまとめたという感じがしない。

ボディサイドはボリューム感において8Cとは明らかに異なるが、リアエンドはまた丸型テールライトやバンパー形状がうまくまとまっていて、いい雰囲気を出している。アルファロッソのボディカラーがよく似合うのもミトと8Cの共通点だ。

それにしてもなぜ、これほどまでに似たスタイリングを実現することができたのか。その場では考え込むばかりで正解は見つからなかったのだが、日本へ帰ってきて8Cのスペックシートを見ていたら、あることに気が付いた。

実は8Cの全長はもともとそれほど長くないのだ。欧州仕様のデータで4380mm、ミトは4063mmだからその差は317mm。プロポーションという観点から見ると、全幅の違いの方が大きい。8Cが1895mmに対してミトは1720mmなので、差は175mmにもなる。そのためボディサイドのデザインが、もっとも8Cに近づけなかった。

いよいよコクピットに乗り込む。ステアリングホイールやメーターまわりのデザインは8Cとよく似ている。147や159よりも明らかに洗練されており、このテイストは今後、他のモデルへも活かされていくのだと思う。またインパネまわりにはカーボンファイバー調の素材が使われている。本物を随所にあしらっている8Cとは比べるべくもないが、一歩でも近づきたいというミトの気持ちが伝わってくるようで、何とも微笑ましく感じる。

ステアリングホイールにはチルト&テレスコピック調整機能がある。運転席にはシートリフターが付き、前後スライドの調整幅は大きい。また、シート自体は大型で厚みがあり、座り心地がいい。これなら長距離ドライブでも疲れは少ないだろう。よりよいドライビングのために必要な装備にぬかりはないようだ。

リアシートは背面が立ち気味で、前後方向の余裕はあまりないが、30分くらいのドライブなら大人4人乗車でも不満は出ないだろう。ただ5人は厳しい。横方向に余裕がないからだ。仮にミートをファーストカーにしたいファミリーに、スペースのことを訊かれたら、「子供がふたりで小学生ならばなんら問題ないでしょう」と答える。

ラゲッジルームは奥に深い。床下にはテンパータイヤを収納している。ハッチゲートを開くと剛性が高く後突に強そうな構造であることがわかるが、大きな荷物、重い荷物の出し入れは大変かも知れない。容量は270Lだ。参考までにアルファ147は280L、ゴルフは350Lだから意外に広いと言えそうだ。

試乗車は本革シートが装着されていたこともあるが、インテリアは全般にゴージャスで質感も高かった。希にスタイリングは非常にいいのだがインテリアが貧相なクルマがある。しかし、ミトは違う。内外装ともにバランスよくプレミアムに仕上がっている。

軽いことが最大のメリット、ひらりとコーナーをクリア
当初ラインナップするエンジンはガソリン2種、ディーゼル1種。試乗したのはガソリンの1.4L DOHCターボで155psを発揮するタイプだ。1.4Lの過給エンジンというと、フォルクスワーゲンのTSIが好燃費で話題だが、このミトもEU総合モードの燃費は15.4km/Lと非常にいい(参考までに車重1205kgのゴルフ140ps仕様TSIは14.1km/L)。1070kgと車重が軽いことが大きなメリットとなっているのだろう。

走りにもボディの軽さがよく感じられる。ただゴルフの140ps TSIのように低回転からスーパーチャージャーが働き、グイグイとボディをひっぱっていくような感触はない。低回転時は少々もたつくが、回転の上昇とともに活き活きとしてくるという感じだ。マニュアルトランスミッションで、高回転を維持して走る楽しさは十二分にある。

この軽さはコーナリングでも光る。ステアリングホイールを切り込むと、スパっと曲がる。もちろん、それはしっかり感があり粘り強いサスペンションに支えられているからなのだが、それよりもとにかく軽いことのメリットを実感させる、そういうコーナリングフィールだ。

ミトのプラットフォームは、評判のよいグランデプントと共有するが、いろいろな面でアルファを名乗るためのクオリティアップが図られている。典型的なのはステアフィールで、かなり上質だ。アルファDNAというシステムで、エンジンレスポンスやステアリングの重さなどを3段階に調節できるが、それを一番スポーティな「ダイナミック」にしたときのステアフィールは、とくに良かった。「ノーマル」では、手応えが少なくてちょっと軽すぎると思ったが、「ダイナミック」にしたら、がらりとフィーリングが変わった。

試乗はコース、時間ともに満足のいくものではなかったが、それでもミトのポテンシャルの高さは十分に感じられた。

日本へはまずこの仕様、1.4ターボ(MT 左ハンドル)が来春に導入される。そして、大きなニュースなのだが、欧州でもこれから登場する2ペダルのDDCT(デュアル ドライ クラッチ トランスミッション)が、右ハンドル仕様でおそらく2009年終盤には日本へ投入されることになる。

さらに朗報がある。かなり戦略的な価格設定になりそうなのだ。俄に信じがたいが、”「スターティングプライスは200万円ちょっと」という説もある。確かに車格は147より下だから、考えられなくはないが。それにしても「安過ぎる」と感じてしまうのは、ミトの出来映えが素晴らしかったからだろうか。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2008年9月号より)



アルファロメオ ミト 1.4 TB 主要諸元
●全長×全幅×全高:4063×1720×1446mm
●ホイールベース:2511mm
●車両重量:1070kg(EU)
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1368cc
●最高出力:155ps/5500rpm
●最大トルク:230Nm/3000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速MT
●最高速:215km/h
●0→100km/h加速:8.0秒
※欧州仕様

[ アルバム : アルファロメオ ミト はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

【インドで大躍進中】スズキ、インドで四輪車の年間生産200万台を達成 新工場も続々準備中
【インドで大躍進中】スズキ、インドで四輪車の年間生産200万台を達成 新工場も続々準備中
AUTOCAR JAPAN
ホンダ・プレリュードが復活! 次世代2モーターハイブリッド「e:HEV」を搭載して2025年に発売【新車ニュース】
ホンダ・プレリュードが復活! 次世代2モーターハイブリッド「e:HEV」を搭載して2025年に発売【新車ニュース】
くるくら
ホンダ、次世代ハイブリッド「e:HEV」システム公開…燃費10%以上向上へ
ホンダ、次世代ハイブリッド「e:HEV」システム公開…燃費10%以上向上へ
レスポンス
日産が特別な「ビームスエディション」を発表! 「高級ジーンズシート」にブルー×グレーのオシャレアクセントを採用! 反響多数で“市販化”実現のコラボモデル 6車種に設定
日産が特別な「ビームスエディション」を発表! 「高級ジーンズシート」にブルー×グレーのオシャレアクセントを採用! 反響多数で“市販化”実現のコラボモデル 6車種に設定
くるまのニュース
【期間限定生産のスイフト】25年3月発売開始 スズキ・スイフト・スポーツに「ZC33Sファイナルエディション」
【期間限定生産のスイフト】25年3月発売開始 スズキ・スイフト・スポーツに「ZC33Sファイナルエディション」
AUTOCAR JAPAN
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「EU・シーメンスに学ぶ自動車業界のDX成功の鍵とチャレンジ」
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「EU・シーメンスに学ぶ自動車業界のDX成功の鍵とチャレンジ」
レスポンス
ホンダ・レーシング、レッドブルF1離脱のペレスに別れの言葉「多大な貢献をしてくれた」
ホンダ・レーシング、レッドブルF1離脱のペレスに別れの言葉「多大な貢献をしてくれた」
motorsport.com 日本版
約200万円で7人乗り! “国産最安”ミニバン「シエンタ」がスゴイ! 全長4.3m級ボディ&両側スライドドア搭載! “庶民の味方”な「トヨタ車」とは
約200万円で7人乗り! “国産最安”ミニバン「シエンタ」がスゴイ! 全長4.3m級ボディ&両側スライドドア搭載! “庶民の味方”な「トヨタ車」とは
くるまのニュース
過失割合はどのぐらい? バイクがクルマを追い越した際の事故
過失割合はどのぐらい? バイクがクルマを追い越した際の事故
バイクのニュース
ただの「スペイン版VW」ではない 新進気鋭クプラが目指す「刺激的」なSUVとは?
ただの「スペイン版VW」ではない 新進気鋭クプラが目指す「刺激的」なSUVとは?
AUTOCAR JAPAN
日産「スカイライン ジャパン」で『西部警察』の「マシンX」を完全再現!! 全国を探して見つけ出したカンパニョーロ製のゴールドホイールが一番のポイントです
日産「スカイライン ジャパン」で『西部警察』の「マシンX」を完全再現!! 全国を探して見つけ出したカンパニョーロ製のゴールドホイールが一番のポイントです
Auto Messe Web
「一段と格好良くなった」スバル『WRX S4』の新カラー&装備にSNSで反響
「一段と格好良くなった」スバル『WRX S4』の新カラー&装備にSNSで反響
レスポンス
生き残りを賭けて日産自動車とホンダ、経営統合に向け協議へ[新聞ウォッチ]
生き残りを賭けて日産自動車とホンダ、経営統合に向け協議へ[新聞ウォッチ]
レスポンス
レッドブルのホーナー代表、今季限りでの離脱が決まったペレスに感謝「来季我々のチームでレースに参加することはないが……ありがとうチェコ」
レッドブルのホーナー代表、今季限りでの離脱が決まったペレスに感謝「来季我々のチームでレースに参加することはないが……ありがとうチェコ」
motorsport.com 日本版
電動キックボード デビュー前に知っておくべき入門知識3選
電動キックボード デビュー前に知っておくべき入門知識3選
バイクのニュース
運転免許の「更新講習」オンラインで出来る! 自宅で受けられるの「マジで有能」! 4道府県で先行実施中 まもなく全国導入へ!
運転免許の「更新講習」オンラインで出来る! 自宅で受けられるの「マジで有能」! 4道府県で先行実施中 まもなく全国導入へ!
くるまのニュース
レクサス『GX』、1インチのサスペンションリフトが標準に…米2025年モデル
レクサス『GX』、1インチのサスペンションリフトが標準に…米2025年モデル
レスポンス
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場! 新開発の「次世代スポーツハイブリッド」は最高のパワートレインだった!? “操る喜び”追求した新機能「S+ Shift」の走りはいかに?
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場! 新開発の「次世代スポーツハイブリッド」は最高のパワートレインだった!? “操る喜び”追求した新機能「S+ Shift」の走りはいかに?
くるまのニュース

みんなのコメント

3件
  • コンパクトなサイズ、印象的なデザイン、パワフルでシルキーなエンジンなどなど。何よりMTがあるのが素晴らしい!
  • 私はミトより水卜ちゃんが好き!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

329.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

20.0198.0万円

中古車を検索
MiToの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

329.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

20.0198.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村