かつては評価できなかったものが、時間の経過とともによく思えてくることがある。自分自身のものの見方が変わったり、当時は気づかなかった魅力に気づいたりと、その理由は様々だ。
なんとなくだが、評価できないどころか毛嫌いしていたものほど、見方が変わったとき、好きの度合いが深くなることが多いような気もする。
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最初は嫌いだったけど、最近になってそんな風に評価が好転したクルマはあるか? 自動車評論家陣に尋ねてみた。
※本稿は2019年6月のものです
文:ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年7月10日号
■トヨタ 80型スープラ(1993~2002年)
(TEXT/鈴木直也)
頑丈な2JZエンジンを搭載し、チューニングベースとしても高い人気を誇った
〈どこがイマイチだった?〉
現役時代の80スープラは、いわば第2世代GT-Rの引き立て役だった気がする。
すべてが当時の最先端だった第2世代GT-Rに比べると、80スープラは古典的なFRスポーツそのもの。メカニズムも走りも、どうにも古臭く思えてならなかった。
〈一周まわってどこが好き?〉
しかし四半世紀が経って第2世代GT-Rも過去となり、そして最近のスープラ復活ブームのなかで見直すと、アレはアレでよかったなと思い直しています。そう思える年月が経ったということですね。
■スバル 2代目インプレッサWRX(丸目・2000~2002年)
2度の整形を受けた2代目インプ。素のままのキミでよかったみたい
(TEXT/岡本幸一郎)
〈どこがイマイチだった?〉
出た時は悪い意味で衝撃的だった。普通にすればよいものを、なんでこんなヘンテコなデザインにしたのかと思ったもんだ。でも次の「涙目」はまっとうなデザインになったけど面白味に欠けたし、その次の「鷹目」のかわいげのない顔はまるで好きになれず。
〈一周まわってどこが好き?〉
そんなわけで2代目インプを振り返った時に、実はよかったんじゃね? と思うようになったのが最初の「丸目」。個性的で愛嬌もあるし、大いにアリ! ワイドボディのWRXは特に丸目と相性がイイ。
■トヨタ WiLL Vi(2000~2001年)
(TEXT/岩貞るみこ)
異業種合同プロジェクト、WiLLブランド第一弾。見た目がすべてだ
〈どこがイマイチだった?〉
確かに女性はシンデレラ症候群があり、かぼちゃの馬車には憧れましたよ。でも、それをあえて具現化されて「ほれほれ、これどうよ? 好きでしょ?」と突きつけられるほどダサいことはないわけで、WiLL Viが登場した時は、あまりのえげつないやり方に辟易したものです。
〈一周まわってどこが好き?〉
でも、今やクルマは燃費だ空力だ安全だ乗り降りのしやすさだと、お見合いの条件を並べるような状況になってきちゃって。恋に落ちるようなカタチが懐かしいワケですよ。
■ホンダ CR-X デルソル(1992~1998年)
(TEXT/清水草一)
陽気なキャラクターに変わったが、走りのほうはVTECで硬派なまま
〈どこがイマイチだった?〉
デルソルが登場した1992年当時は、まだ「走り至上時代」。それまで2代のCR-Xは、走りやデザイン面でもの凄く評価が高かったから、トランストップを持つセミオープンになったデルソルに対しては、なぜわざわざこんな軟派に! と、クルマ好きは大いにガッカリしたもんだ。
〈一周まわってどこが好き?〉
今や時代は変わりデルソルは時代を先取りしすぎていたことが判明。売れなかったせいで猛烈に希少価値が高まっているのが証拠。今なら羨望のまなざしすら集まるだろう。
■トヨタ MR-S(1999~2007年)
(TEXT/片岡英明)
先代が強烈な武闘派だったため現役時はさほど目立てなかったのが悲しい
〈どこがイマイチだった?〉
トヨタMR-Sがベールを脱いだのは、世紀末の1999年秋だ。この年はホンダS2000やR34GT-R、ランエボVI、S15シルビアなど、パワフルなスポーツモデルが相次いで登場した。だからNAエンジンのMR-Sは、先輩のMR2ほど華やかに感じられなかったのである。
〈一周まわってどこが好き?〉
が、ミドシップで、しかも軽量だから気持ちいい走りを見せ、運転すると楽しい。また、2ペダルの6速シーケンシャルミッションも、今考えると画期的と評価できる。
■日産 V35 スカイライン(2001~2006年)
(TEXT/斎藤 聡)
直6との決別、もっさりしたデザインで当時はあんまり。クーペはカッコよし
〈どこがイマイチだった?〉
インフィニティと統合した最初のモデルってことで、スカイラインと呼ぶには凄く抵抗があった。FMプラットフォームが採用されたことでスカイライン伝統のFRらしい乗り味がガラリと変わってしまったからだ。
〈一周まわってどこが好き?〉
でも、いま改めてスカイラインについて考えると、あの時モダンなプラットフォームへの変更は必要だったし、よりよいハンドリングを作ろうという作り手の熱意が感じられるクルマだった。それがとても好ましく感じられる。
■トヨタ 2代目 MR2ターボ(1989~1999年)
(TEXT/桂 伸一)
初期型の操縦性はトリッキーだったがIII型以降、大きく改善
〈どこがイマイチだった?〉
初代MR2はNAなので穏やかだった。だが2代目に加わったターボは曲者。一般公道は普通に走行できる。が、サーキットで雨ともなると人格は豹変。当時、ジキルとハイドと原稿に書いた覚えがある。アンダーからオーバーステアへの変化が唐突すぎた。
〈一周まわってどこが好き?〉
だが、いま改めて見ると、コンパクトなサイズとターボの刺激は魅力。操安性はタイヤ性能に依存するクルマだが、現代のタイヤ性能であれば難題を収束でき、楽しい走りがクローズアップされるハズだ。
■マツダ ビアンテ(2008~2017年)
(TEXT/松田秀士)
歌舞伎の隈取りを意識した強烈なフロントフェイスが特徴でしたな
〈どこがイマイチだった?〉
デビューした2008年当初、フォード車共用のプラットフォームで3ナンバーサイズの横幅で背も高すぎ、そんなに広さとか大きさを主張しなくてもいいじゃない、という印象だった。顔のデザインは嫌いじゃなかったけどね。
〈一周まわってどこが好き?〉
けどモデル末期に広報車を借りて数日乗って驚いた。なにがよかったかって、運転しやすい。サスペンションもキレイにストローク。しかも頭上を含めスペースが無駄に広大。そう! これが本当のミニバンだと思ったね。今は好ましく思ってるよ。
■ホンダ アヴァンシア(1999~2003年)
(TEXT/渡辺陽一郎)
同様のモデルに日産のルネッサがあったが、どちらもあまり人気では……
〈どこがイマイチだった?〉
1999年の発売時点では、車内の広いワゴン、あるいはハッチバックというクルマ作りが曖昧に感じた。
〈一周まわってどこが好き?〉
しかし今は「もっと大人を愉しもう」というコンセプトが時代に合っている。前後席にセンターコンソールが備わり、特に後席が快適だ。
大切な友人夫妻と4名でドライブに出かける時などに、アヴァンシアは最適だ。ホンダはSUVだけでなくワゴン&ハッチの可能性をもう少し追求してほしい。
* * *
さまざまな理由で現役当時は高く評価されなかったクルマたち。が、ここで紹介されたもののように、時間が経てばそのクルマが持っていた本来の資質が再評価されることもある。ま、クルマからすりゃ、「なら現役時に評価しろよなー」と言いたいところだとは思うけど。
【番外コラム】 編集部が考える最近、妙にカッコよく思えるクルマはコレ!
本誌でおなじみの評論家陣に、最近評価が好転したクルマを聞く当企画。ベストカー編集部からも「最近、カッコよく見えるんだよ」というクルマを2台ほど紹介させてほしい。
一台はプログレ。
セダンの本質を追求したマジメなモデル
トヨタが1998年に発売した小さな高級車だ。デビュー時はその顔つきに疑問符つきまくりだったが、今考えるとこのクルマほど冠婚葬祭のシーンにマッチするクルマはない気がする。
もう一台はマツダのCX-7。
CX-7。スタイリッシュやなーと。
今のマツダのクルマが「魂動」デザインで統一されるなか、時折街中で見ると、妙にカッコよく思える。「コレは和製マカンだ!」と言おうと思ったが、それはさすがに言いすぎかもしれない。スマン。
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