7シーズン目を迎える2025年、MotoEはどう変わるのか
電動バイクレース『FIM MotoE World Championship』(以下、MotoE)のタイトルスポンサーである「Enel(エネル)」が、MotoEのタイトルスポンサーを外れるという報道があったのは、2024年11月下旬のことです。報じたのは、MotoEをフォローする、MotoGP、MotoEのプロモーターであるドルナスポーツに認定されたメディアであるEpaddock.itでした。
Epaddock.itが報じていたところによると、Enelはタイトルスポンサーを外れるだけではなく、MotoEから完全に撤退する、というのです。
イタリアの電力、エネルギー会社であるEnelは、2019年のMotoE初年度からタイトルスポンサーを務め、充電器を供給してきました。
2024年シーズンの「Eパドック」(MotoEのピットが集まる専用エリア)では、チームのピットの裏に充電器が置かれ、セッションが終了するとメカニックがそこにマシンを移動して、充電が行なわれていました。
また、グリッド上での充電においても、Enel充電器が役割を果たしていました。MotoEは、サイティングラップのあとグリッドについてからスタートまで、グリッド上で充電することができるのです。Enelのポータブル充電器はメカニックによってグリッドに運ばれ、MotoEマシンの充電に用いられていました。
つまり、EnelがMotoEにおいて果たしてきた役割は大きいということです。撤退による影響はまぬがれないでしょう。
例えば、2024年11月下旬に発表された2025年シーズンのMotoEカレンダーは、近年の翌シーズンカレンダーの発表時期に比べて、ひと月ほど遅いものでした。さらに、全7戦14レース(1戦2レース制)で、2024年に比べて1戦2レース減少しています。
2025年に7シーズン目を迎えるMotoEのレース数が減少するということは、にわかには信じがたいことです。
2025年のカレンダーは、Enel撤退の影響があったのでしょうか? また、2025年に大きく進化するというドゥカティの電動レーサー「V21L」の開発への影響はあるのでしょうか?
MotoEのエグゼクティブ・ディレクターであるニコラ・グベールさんに、メールで問い合わせを行ないました。その回答をお伝えします。
なお、Enelの撤退について、ドルナスポーツからの正式な発表はありません(2024年12月26日現在)。しかし、「EnelがMotoEから撤退するというニュースを見て、問い合わせしています」というメールに対し、グベールさんから以下の回答があったことで、その情報が間違いではないことの確認としています。
また、2024年11月21日に発表された2025年シーズンのカレンダーのリリースには、すでにEnelの表記はなく、選手権名は『FIM MotoE World Championship』となっていました(2024年シーズンは『FIM Enel MotoE World Championship』だった)。
──2025年シーズンはMotoEの充電設備に問題はあるのでしょうか?(筆者:伊藤英里からの質問。以下、同)
「問題というわけではありませんが、Enelの決定によって計画の再考を余儀なくされました。今後は、バッテリーのない充電器を使用するでしょう。つまり、電力網からのより多くの電力が必要になります」(ニコラ・グベールさん。以下、同)
──2025年シーズンのMotoE開催数が減ったのはEnel撤退が原因ですか?
「(Enelの撤退により)私たちは各サーキットに連絡をとり、より多くの電力を供給してもらうように依頼しました。可能だったところもあれば、不可能だったところもありました。この要素を考慮した結果、(2025年は)7戦の開催となったのです」
──2025年シーズンのレースウイークのタイムスケジュールには影響がありますか?(充電時間への影響など)
「いいえ、タイムスケジュールは同じです」
──「V21L」の開発には影響がありましたか?
「いいえ、マシンの開発には影響はありません。2025年にはマシンの進化があります」
つまり、2025年シーズンのカレンダー(開催地)については、Enel撤退の影響があったということです。サーキットに、MotoEマシンに電力を供給できるだけの送電網が必要だったからです。ただ、マシンの開発としては問題はないということです。
グベールさんは、Enelの撤退についてこう語っています。
「最初に、6年間にわたりMotoEとパートナーシップを結び、特別な素材を開発してくれたEnelに感謝したいです。Enelは部分的に国営企業でイタリア政府が変わった時、Enelの経営陣も変わりました」
※Enelは民営化されているが、2023年12月31日時点のデータによると23.6%の株式をMinistry of Economy and Finance(日本の財務省にあたる)が保持している
「そして、彼らはモータースポーツを離れてサッカーのスポンサーになることに決めたのです。彼らは6年間、MotoEを支えてくれたのですから、不満はありませんよ」
また、EnelのMotoE撤退はマイナスなことばかりではない、とも言います。
「じつは、この件にはポジティブなポイントがあります。というのも、多くのサーキットが、私たちがさらなる電力供給を求めたとき、前向きに反応してくれたからなんです。とても嬉しかったですね。こうしたことは、7年前、私たちが(MotoEを)始めた当時には考えられなかったことです」
「だからEnelは、内蔵バッテリーを搭載した充電器を作ってくれたわけです。これはつまり、電動化に対する考え方が、徐々に変わってきているということなんです」
「2つ目のポジティブな点は、電線から接続するスタンダードな充電器を使用するので、特殊な設備が必要ないということなのです。これは、電動バイクを手に入れたら、標準的な充電器があれば特別なものは必要なく、誰でもサーキットで楽しめる、ということを示しています。私たちは電動バイクの普及に貢献したいので、こうしたメッセージはとても重要です」
確かに、それらはポジティブな点でしょう。特にひとつ目に関して言えば、現在、ヨーロッパのサーキットでは、ほとんどにEVカー向けの充電ポイントが備わっていることからも、電動化に対するインフラが整いつつあることを感じてはいました。
ただ、MotoEはサスティナブルなイメージを必要とするモータースポーツです。送電線からの電力供給となれば、その電力の発電方法はどうなるのでしょうか。Enelの充電器は、追加のエネルギーとしてEパドックの屋根に取り付けられたソーラーパネルを初電源としていたりもしました。
ヨーロッパの一般道路を走っていると、EVカーを日本よりもずっと多く見かけます。国土の4分の1ほどが海面よりも低いオランダは特に多く、イギリスやフランスなども見かける頻度が高いです。
だからといって、電動化に一直線かといえばそうではないでしょう。ご存知のとおり、2023年3月25日、EUは2035年以降の内燃機関の新車販売禁止の方針を撤回し、e-fuelを用いた内燃機関の新車販売を許可、としました。4輪、2輪ともに、新世代の動力源が模索されているのが現状です。
ひとくくりにするには早計かもしれませんが、今回のEnelのMotoE撤退は、電動化(または電動モータースポーツ)に対する風向きの変化のひとつだと捉えられるかもしれません。
2025年、MotoEは7シーズン目を迎えます。注目度、興行的な面白さという意味でも、成熟を始めなければならないでしょう。
Enelが撤退したMotoEの、新たな挑戦を注視したいと思います。
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