100年に一度の大変革期と言われている自動車産業における大きなキーワードとして取り上げられる機会の多い「CASE」。この中の「C」に当たるコネクテッド(Connected)。
いわゆる通信を活用しインターネットに繋がることでドライバーはどのようなメリット受けることができるのか? 現在の日本車に採用されているコネクテッドサービス(&機能)の最新情報を紹介する。
新型ソリオ&レヴォーグ絶好調!!! ホンダ国内販売2位奪還に秘策は!!? ほか国内メーカー&新型動向最新情報
文/高山正寛
写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル、三菱、Mercedes-Benz
【画像ギャラリー】スマホと車、通信の未来はどっちだ!!? コネクテッドサービスの今をギャラリーで見る!!
■世界標準になりつつある「CASE」
今や国内外の自動車メーカーだけでなくサプライヤー、そして自動車業界ではないIT企業まで開発に乗り出し、提携などにより新しいシナジー効果を生み出そうとしている「CASE」領域。
「CASE」というキーワードは2016年に開催されたパリモーターショーでメルセデスベンツが使ったのがはじめといわれる
もともとは2016年9月に開催されたパリモーターショーでメルセデス・ベンツのディエター・チェッチェ会長(当時)が中長期戦略の発表時に使われたのが最初と言われているが、実質ここを起点に次世代の自動車産業はどうあるべきか、を指し示すキーワードとして現在も幅広く使われている。
CASEはConnected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared& Services(カーシェアリングとサービス)、そしてElectric(電動化)の4つの頭文字を組み合わせたもの。それぞれの領域が持つ意味はメーカーごとに少しずつ異なる部分もあるが、おおむねこの流れに沿っている。
そのうちのC=コネクテッドはICT技術、もう少しわかりやすく言えば通信などを活用し、インターネットに接続、膨大な走行データなどを収集・分析し双方向で活用する仕組みである。
ネットワークを活用するという点ではこれまでVICSやETCなどの「ITS(高度道路交通システム)」や専用の通信回線を活用しカーナビにより高精度な渋滞情報などを提供してきた「テレマティクス」などもあるが、それぞれが領域としての方向性は似ていてもコネクテッドの場合は常時ネットワークと接続することで新しい価値を生み出す。
「コネクテッドカー=つながるクルマ」と言われる理由はこの常時接続によるものだ。
■自動車メーカーごとに異なるコネクテッド
それでは現在の国産メーカーのコネクテッドカー事情はどうなっているのだろうか?
●トヨタ:T-Connect
トヨタのコネクテッド技術の歴史は非常に古い。
T-Connectでは、まずDCMありきで標準装備化されている
そのルーツは1997年に誕生した画像検索システムである「GAZOO」だが、これはあくまでも販売店に設置した端末であり、その後は携帯電話と専用カーナビ(メーカーオプション)を組み合わせた「MONET(モネ)」、その後は「G-BOOKシリーズ」と続き、2014年7月に「T-Connect(ティーコネクト)」がスタートし現在に至っている。
T-Connectが従来のG-BOOKと大きく異なるのは取得したデータをトヨタスマートセンターというクラウドサービスに送信し、それを分析し状況に応じて車両側にフィードバックできる点にある。
通信に関してはG-BOOK時代から使われているDCMと呼ばれる通信モジュールを活用するが、G-BOOK時代は車種によって標準、またはメーカーオプションだったのに対し、T-ConnectではまずDCMありきで標準装備化されている。
これにT-Connect対応ナビの装着、または単体契約を行い、常時接続することでコネクテッドカーとして使うことができる。
受けられるサービスも従来からある緊急通報システムである「ヘルプネット」にプラスして事故状況によりドクターヘリの手配を行うサービス。車両盗難を含めた離れた場所に停めたクルマの異常を伝える「マイカーSecurity」は遠隔でエンジンの再始動やステアリングロックの解除も禁止させることができる。
特に盗難の多いランドクルーザーにはリモートイモビライザー機能も専用に搭載する。またスマホとの連携も従来以上に強化しており、専用アプリである「My TOYOTA」を使えば、車両の駐車位置やドアロックの確認、炎天下の日など乗車前にエアコンを外から作動させることもできる。
基本となる「T-Connectスタンダード」と「T-Connectエントリー」に関しては初年度登録日から60ヵ月点検(車検)月の末日までが無料だが、その後は有償となる。
これらの機能に関しては車種ごと対応、非対応があり、一部有償のものもあるので、その部分は事前に確認が必要だ。
●日産:Nissan Connect
日産もテレマティクスサービスの歴史は古く、1997年には「コンパスリンク」、その後2002年には「カーウイングス」をリリースした。
日産は車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」をスカイラインなどに採用
そして2017年には現在の「Nissan Connect」を開始しており、従来から継続される「オペレーターサービス」やプローブ情報を活用した「最速ルート案内」のほか、NTTドコモとパイオニアとの協業により車内でのWi-Fiを使い放題とした「docomo in Car Connect」にも対応している。
またシステム上のソフトウエアのアップデートや地図自動更新などもテスラのようにOTA(Over The Air)技術を活用することで自動更新される。
スカイラインの場合はADAS領域において、高速道路走行時のハンズオフを実現する「プロパイロット2.0」を搭載した車両の場合、3D高精度地図データが必要となる。その場合はOTAも含めて年間1万6000円の利用料金がかかる。
また人気の新型ノートにメーカーオプションの対応ナビを装着した場合は「スタンダートプラン+(プラス)」として年間7920円がかかる。これは前述したコネクトサービスにプラスしてSOSコールを付帯したもの。7920円÷12カ月で計算すれば月額は660円、この金額で安心と安全、さらに利便性も手に入るのだからまずまずリーズナブルと言える。
●ホンダ:Honda CONNECT
ホンダといえば1998年から開始した「インターナビ」、これに独自の交通情報の取得を可能にした「インターナビ・プレミアムクラブ」が有名だ。
新型フィットから「Honda CONNECT」としてサービスが刷新された
特に同サービスは早い時期から自車を一種のセンサーと見立て、走行情報をサーバーにアップさせる「プローブカー」として活用する「フローティングカーシステム」を世界で初めて採用した。これによる渋滞回避能力の高さは当時としては画期的だった。
現在は2020年にフルモデルチェンジを行った新型フィットから「Honda CONNECT」としてサービスを刷新。専用通信モジュールからサーバーにアップされたビッグデータを分析し従来以上のサービスを確立している。
サービスに関しても初回申し込みから12カ月間は基本パックが無料、その後は月額550円となる。さらに追加オプションとしてスマホをクルマのカギとして使える「Hondaデジタルキー」や警備会社のALSOKと提携した駆けつけサービスも別途各月額330円で用意する。
●マツダ:MAZDA CONNECT
マツダコネクトはオーナーの間でも「マツコネ」の愛称で呼ばれている2013年11月に発売された3代目アクセラから搭載されたインフォテインメントシステムのこと。
MAZDA CONNECTはMAZDA3から通信モジュールが搭載され、SOSコールや車両のコンディションモニター、純正ナビの地図更新にも対応
通信モジュールは搭載せず、手持ちの携帯電話などを活用することでハンズフリー通話やSNS、さらに提携するインターネットラジオの聴取も可能にしている。
ただ他社に比べると通信の活用という点ではコネクテッド面がやや弱かった。そこで2019年のMAZDA3からいわゆる第2世代にスイッチ。通信モジュールの搭載によりSOSコールや車両のコンディションモニター、また純正ナビの地図更新にも対応する。
第2世代はトヨタとのアライアンスによる部分もあり、サービス自体も似ているが、独自機能を搭載することで今後も進化が期待できる。
利用料金は3年間無料で4年目以降は料金等は確定していないが、MAZDA3、CX-30、MX-30に続き、マイナーチェンジを行ったCX-5/CX-8にも搭載され利便性を高めている。
●三菱、SUBARU、ダイハツ
前4社に比べるとまだこれからに期待なのがこの3社のコネクテッドだ。
三菱「MY MITSUBISHI CONNECT」というスマホアプリを活用したサービスを北米で展開。国内は今後登場を予定している新型車のコネクテッド機能に期待
三菱は北米ではセーフガードシステムと呼ばれる24時間365日のSOSコールなどや「MY MITSUBISHI CONNECT」というスマホアプリを活用したサービスを展開しているが、国内ではまだ未搭載だ。
エクリプスクロスやアウトランダーの各PHEVにはスマホと連携して、タイマー充電やプレ空調などが行える「三菱リモートコントロール」を設定しているが、そもそも両車には車載通信機が搭載されていない。この場合、Bluetooth接続で届く距離のみになるので、コネクテッドとはまだ呼べるレベルには達していない。
ただ、三菱の場合は日産、ルノーとの三社連合により今後はマイクロソフトの「Microsoft Azure」による共同開発を行う予定だ。少し時間はかかるかもしれないが、これが構築できれば一気に最前線に躍り出る可能性もある。
SUBARUに関しても北米では「SUBARU STARLINK」をコアにスマートフォンとの連携でセーフティやセキュリティサービスを展開している。日本国内では新型レヴォーグに「STARLINK」を組み込んだインフォテインメントシステムを展開しているが、専用の通信モジュールは非設定になる(つまりスマホを使う)。
利用料金も年間5500円だが、新車購入時に初年度登録から5年間サービスを無料で使える。
ダイハツに関しては「ダイハツコネクト」というサービスを展開、基本利用料は0円というのが嬉しいが、対応する専用カーナビまたはディスプレイオーディオ、そして通信のためのスマホ(専用アプリ)はもちろん必要となる。
緊急時の事故や故障などの対応サポートやディーラーからのお知らせなども受け取れるのでコスパは高い。
■スマホ連携は便利だが大きな落とし穴も
国産、輸入車に限らずコネクテッドを活用する際にはスマホがかなりのウエイトとなってくる。車両からの情報やドアロック/アンロックの遠隔操作など、使いこなせばかなり便利なものも今後はますます増えていくはずだ。
しかし「スマホを落としただけなのに」ではないが、スマホを紛失したイコール、クルマの使用権を誰かに奪われてしまう可能性もある。スマホは自車位置の確認もできるので、最悪の場合、その車両を特定し、解錠してそのまま盗まれる可能性もある。
もちろん、これらに関してはもしトラブルが発生したらコールセンターに連絡することでエンジン始動を停止させるサービスを行っているメーカーもあるが、気がつくのが遅くなればなる程リスクは高まる。
もはや生活とは切り離すことのできないスマホでも年間で10万台以上の紛失があるという報告も過去されている。
いずれにせよ、今後進化を続けるコネクテッドカーにおいて、実は最も重要なのはこのセキュリティの部分なのだ。
また何もコネクテッド機能を使わなくてもできる機能、例えば「天気予報」や「ニュース」などのコンテンツは乗車前であればスマホで事足りる。昔であれば、車内で色々できることは重宝されたが、実はコネクテッドカーの最大のライバルはスマホだったりするのである。
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リアルに衛星電波を受信するカーナビのほうがいざというとき頼りになります。