脱輪しそうな状況でも難なく乗り越えていく!
新型ホンダ・ヴェゼルにおいて、ラフロードでSUVらしい走りを堪能するのにぜひとも欲しいAWDは、最上級グレード「PLaY」を除く全グレードに設定されている。なかでも2モーターハイブリッド「e:HEV」のリアルタイムAWDはメカニズムが進化。その予想外の実力とは!?
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4月22日の正式発表前に行われたメディア向け事前説明会の会場には、このe:HEV+リアルタイムAWDが持つ走破性の高さを体感できる特設コースが用意されており、最初は同乗、その後は実際にステアリングを握って試すことができた。
まずは左右にオフセットして配置された台形状のスロープを乗り越えていく「モーグル」から。右側の車輪がスロープに乗り上げると、左側の車輪が空転し始めるが、それをほとんど感じさせることなくスロープを上っていく。やがて右側のスロープを下ると、今度は左側に別のスロープが現れ、左前輪が乗り上げると、右前輪が空転。続いて右前輪と左後輪が浮いた状態となるも、何事もなかったかのように乗り越えてしまった。スロープが思いのほか細く、スロープに乗り上げて車体が傾いたときは、いつ脱輪するか内心ヒヤヒヤしていたが。
もうひとつは、路肩に積もった雪に乗り上げてスタックした状態を模した、窪みにローラーが仕掛けられた台の上にいったん停止してから発進するというテスト。前二輪がローラーにはまった状況からは容易に抜け出せたものの、次に左の前後輪がスタックした状態から脱出しようとすると、しばらくの間ホイールスピンしてしまう。だが、そのままアクセルペダルを踏み続けると、ローラーから脱出することができた。
さて、望外に高い走破性を見せてくれた新型ヴェゼルのe:HEV+リアルタイムAWDだが、昨今のハイブリッドAWDに多い、前後アクスルに別個のモーターを搭載し四輪を駆動するタイプではない。フロントにあるモーター(とエンジン)の駆動力を、プロペラシャフトを介して後輪に伝えるという、内燃機関のみの車両ではオーソドックスな方式を採用している。
だが、その特性は大きく異なる。まず2モーター式のハイブリッドシステムを採用したことで、とくに低中速域はエンジンではなくモーターでの走行が主体となっている。そのおかげで、より素早くリニアに駆動力を生み出すことが可能になった。
人気の最上級グレードへのAWD追加に期待!
また、リヤディファレンシャルのトルク容量が初代より約10%アップし、後輪へ伝えられる駆動力は最大で50%まで拡大。VSA(横滑り防止装置)のブレーキ制御などもチューニングが変更されたことで、よりシビアな状況でもスタックせず走破できるようになっている。
このようなシステム構成とした理由を、パワーユニット開発統括部の上田雅英チーフエンジニアに聞くと、「まずリヤをモーターとしなかったのは、同じ性能をモーターで出すにはサイズが大きくなり、パッケージングとコストの面で不利になります。また、車種によってはプロペラシャフトを通せないことがありますが、ヴェゼルの場合は通せましたので、メカニカルAWDを採用しました」とのこと。
前後駆動力配分を100:0~50:50としたことについては、「前後駆動力配分は前後荷重比に合わせるのがベストと考えていますが、ヴェゼルの前後荷重比は60:40くらいですので、これを基本としています。加速時、とくに発進時には荷重が後輪側に移りますので、それに合わせて50:50まで可能にしました。逆に高速走行時はAWDの必要性が下がりますので、燃費を考えて90:10~80:20くらいに制御しています」と、幅広い速度域や路面状況でベストな配分を実現する狙いがあったようだ。
しかもこのe:HEV+リアルタイムAWD、走行モードを切り替えずNORMALモードのままアクセル・ブレーキ操作を行えば、高い走破性が得られることも大きな美点。ドライバーの知識や運転スキルによらず優れた性能を享受できるシステムに設計したことは賞賛に値するだろう。
ただし、そんな優れたAWDシステムが、最上級グレード「PLaY」に設定されていないのは大いに疑問。「技術的に不可能ということではありません」とのことなので、生産もしくは営業戦略上の都合と思われるが、ユーザーの立場としては一刻も早く全グレードで選べるようにしてほしいと願わずにはいられない。
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