2019年6月30日、ついにホンダがF1復帰初勝利をあげた。2015年にマクラーレン・ホンダとして華々しい復活を遂げてから4年あまり、復帰90戦目にしてようやく表彰台の頂点に到達した。しかしここまでの道のりは決して順調ではなく、また、まだ目標を達成したわけでもない。本当の戦いはここから始まる。(タイトル写真は2019年春に公開された2019年仕様のホンダF1パワーユニット)
パワー不足とトラブルに悩まされた4年、今回の優勝を機に一気に頂点に向かう
2013年5月16日、ホンダは緊急記者会見を開き、2015年よりパワーユニットのサプライヤーとしてF1に復帰することを発表した。2014年シーズンからの大幅なレギュレーション変更の後、1年の猶予期間をもって復活を遂げることになった。
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2015年はかつてともに黄金時代を築きあげたマクラーレンとコンビを組むことになり、世界から「あのマクラーレン・ホンダが帰ってくる」と大きな注目を集めた。パワーユニットは1.6L V6ターボにMGU-KとMGU-Hを搭載するハイブリッドと規定されたが、あえて参戦を1年遅らせての登場はホンダの自信の現れとも映った。
しかし、ライバルよりも1年多い開発期間というメリットよりも、1年少ない実戦経験のハンデは大きかった。
2015年はパフォーマンスと信頼性の不足に悩まされ、名門マクラーレンのシャシ、フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンというふたりの世界王者の力をもってしても成績は低迷、ドライバーは不満を爆発させるばかりだった。パワーが不足し、パワーを上げるとエンジンが壊れるという状況は深刻だった。
2016年も引き続きマクラーレンとコンビを組み、ドライバーをジェンソン・バトンから若いストフェル・バンドーンにスイッチしてのぞんだ。成績はようやく上向き始め、しばしば入賞を果たすようになるが、コンストラクター部門で6位に上がるのが精一杯で、優勝争いに顔を出すことはなかった。
2016年の好感触を受け、2017年もマクラーレンにパワーユニットを独占供給、ドライバー陣も前年と変わらずフェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーンとなった。
ところが事態は思うように好転しなかった。上向いていた流れの中で、「現実目標はまず表彰台」とし、パワーユニットの低重心化/コンパクト化を図った新型を開発したが、マシン全体のパフォーマンス不足は相変わらずで、業を煮やしたマクラーレンが契約解消をほのめかしたり、トラブルの原因を巡って様々な勝手なコメントが飛びがうなど、次第にホンダとマクラーレンの関係が悪化した。
そして2018年からマクラーレンに加えてザウバーにもパワーユニットを供給するとホンダが発表(結局、ザウバーの体制変更もあって実現せず)、一方でマクラーレンが公然とホンダ批判を繰り返すなど、両者の関係は修復できないところまで進んでしまった。
そして。2017年9月、ホンダは2018年よりトロロッソにパワーユニットを供給することを発表、同時にマクラーレンとの契約を2018年限りで終了することが明らかになった。
これを機にホンダは体制を一新、HRD sakura(さくら)が研究開発を統括、新たに現場を指揮するテクニカルディレクターが置かれ、田沼豊治氏が就任した。
2018年からトロロッソへの単独供給を開始、当初こそトラブルに苦しめられたが、夏以降、次第に信頼性が増しトラブルが減少、Q3に進出することが多くなっていった。
そして、2019年はトロロッソとともにレッドブルにもパワーユニットを供給を開始することが決定。ルノーとの関係悪化が伝えられていたレッドブルだったが、ホンダのパワーユニットを選択したことはそのパフォーマンスが向上していることを示すものと理解された。
実際、2019年のレッドブル・ホンダは、早々にメルセデスAMG、フェラーリとともに「3強」を形成した。そして期待が高まったところで、メルセデスAMGを速さで圧倒して優勝した。
レッドブル・ホンダは速いことは速いが、優勝はなかなか難しいのではないかという声が出始めたところでのこの復帰後初勝利は大きい。この流れであれば、これからトントン拍子で勝利を重ねていく可能性が高いと見るのが妥当ではないだろうか。
2014年のパワーユニット大改革から続く「メルセデス黄金時代」にレッドブル・ホンダが終止符を打つことになるのか。ホンダが新しい時代の王者となるのか。大いに期待していいだろう。
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