アルピーヌにとって、F1第3戦オーストラリアGPの決勝レースはまさに天国から地獄のようなレースとなってしまった。2度目の赤旗が出された55周時点で、ピエール・ガスリーが5番手、エステバン・オコンが9番手を走っていたにもかかわらず、ダブルリタイアに終わったからだ。
57周目のリスタートで、ガスリーはターン1でランオフエリアに飛び出てしまった。さらに4番手のカルロス・サインツJr.(フェラーリ)が追突し3番手のフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)がスピンする混乱もあり、コースに復帰したガスリーとオコンがターン2出口で接触したことで2台ともバリアに叩きつけられてしまったのだ。
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結局、こうした混乱により3度目の赤旗が掲示され、順位が元に戻された上でファイナルラップをセーフティカー先導で走行、レースは終了となった。
アロンソとの接触でペナルティを受けたサインツJr.以外は、リスタート前の並びでフィニッシュしたことを考えれば、アルピーヌにとっては悔やんでも悔みきれないクラッシュとなったと言える。
オコンは、謝罪をしてきたガスリーに対して恨みはないと語り、クラッシュを引き起こしかねないドライバーは他にもいたと話した。
「リスタート時の混乱は明らかで、正直なところ、どのクルマと衝突してもおかしくなかった」
「トラックに戻ってくるクルマがいて、言うまでもなくピエールもそのうちの1台だった。でも恨みはないよ」
「彼は僕のところに来て謝ってくれたし、僕が言ったように他の人とのクラッシュもありえたんだ」
彼は日没が迫る時間のリスタートで視界が悪かったことに加え、アルファタウリの1台が”自殺行為”(suicidal)をしていたと語った。
オコンはそのドライバーがニック・デ・フリーズだったとコメントしているが、実際にターン1で横並びになったのは角田裕毅であり、デ・フリーズはさらに後方で追突を受けているため、オコンのコメントは角田のことを指していると思われる。
「僕のタイヤはホットになっていた。スリッピーだとは思わなかったけど、暗くなっていたこともあって、ちょっと難しかった」
「イン側にいたニックのように、自殺行為をしていたドライバーもいた。紙一重の差で大きくゲインしたドライバーもいたが、そうじゃないドライバーもいた」
ただ、このコメントを鵜呑みにして角田を批判するのはアンフェアだろう。確かに角田はオコンのイン側に飛び込みハードブレーキングしているが、ターン1のエイペックスの時点ではオコンと横並び。角田はしっかりとマシンを止めており、接触もなかったように見える。また、オコンはコーナーの立ち上がりでちょうどマシンが半分ホワイトライン内側に残っている。
一方で、ガスリーはターン1のブレーキングで明らかに白煙を上げ、危うくアロンソに追突しそうになりながらもオーバーシュートしてしまっており、その割を食うようにセルジオ・ペレス(レッドブル)もコースオフを強いられている。
その後ガスリーは挙動を乱しながらコースに復帰し、オコンは前を塞がれる形で減速。角田はガスリーの右を駆け抜けており、その後ガスリーとオコンの接触が起こっている。
確かにオコンと角田が接触する可能性は十分あっただろう。ただ、この時のガスリーと角田を比較し、角田のドライビングを”自殺行為”と評するのはいささかオーバーすぎるように思える。
ガスリーはレース後、メディアからの質問にひとつだけ答え「何も言えないほどがっかりしている」とコメントした。
「僕が言いたいのは、今日はフェラーリ1台(サインツJr.)と戦うことになり、フェルナンドと(ルイス)ハミルトンがレースの大部分で僕の側にいることになるとは思っていなかったということだ」
「これは予想外だったけれど、マシンのフィーリングはとてもよかった」
「それはとてもポジティブなことだった。でもレースが終わったあとで、赤旗のことについて何も言うことはない」
「今はただ、レースを終えた彼らを見ているだけで、何も言えないほどがっかりしている」
なお、ガスリーとオコンの事故はレース後の審議対象となった。ガスリーはあとペナルティポイント2点で1レース欠場処分となってしまうため、審議の結果次第では次戦アゼルバイジャンGPを欠場となってしまう可能性がある。
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