優雅なルーフライン 高級感が演出された車内
ルノーから、ラインナップ7番目となるSUVが発売された。全長は4710mmあるが、強く意識されたのはアウディQ3やBMW X2といった、1つ格下のプレミアム・クーペSUV。フランスのブランドを新たな領域へ導けると、首脳陣の期待は高い。
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パワートレインはルノー独自のハイブリッド、E-テック。1.2L 3気筒ガソリンターボエンジンに、駆動用モーターとスタータージェネレーターを組み合わせ、システム総合で199psと41.6kg-mを発揮する。
運転席の下へ積まれる、駆動用バッテリーの容量は1.7kWh。短距離なら、エンジンを回さず走行もできる。
ラファールの特徴といえるのが、ファミリー・クロスオーバーでありながら、南フランスのエレガントさが香るようなルーフライン。長めの全長のおかげで、リアシート側の空間にもゆとりがある。
荷室容量は535L。テールゲートが思い切り傾斜し、高さ方向に制限はあるが、プジョー408より僅かに広い。
インテリアは、巧みに高級感が演出された。石材のような質感でダッシュボード上部が仕上げられ、内装にはリサイクル素材を利用したアルカンターラや、レザーが積極的に用いられている。
ただし、ブラック基調の配色もあって、少し薄暗く感じられた。グロスブラックのパネルは、雰囲気に水を指している。トリコロールのステッチは、目を凝らさなければ気づきにくいかも。
扱いやすい車載機能 不自然なトランスミッション
ダッシュボード中央に大きなタッチモニターが据えられるものの、ルノーは、そこへ過度に多くの機能を集約しなかった。エアコンには実際に押せるハードスイッチが残り、運転中でも気を散らさず操作できる。
ステアリングホイールには、運転支援システムのオン/オフボタンがある。クルーズコントロールとオーディオ用のスイッチも配される。従来通りの場所が好ましい。ステアリングホイール自体は握りやすい太さだが、だいぶ四角い。
確認はこのくらいにして、公道へ出てみよう。エスプリ・アルピーヌのグレードを指定しても、ラファールは速いクルマとはいいにくい。最高出力は199psあるが、車重は1714kgで、不足ないものの余裕は大きくない。
通常はエンジンが停まった状態で発進するため、初動を受け持つのは67psの駆動用モーターだけ。初めからエンジンも加勢すれば、活発に感じられるだろう。0-100km/h加速は8.9秒だ。
1.2L 3気筒エンジンの質感は、他メーカーのユニットと同等。サウンドに特徴があるわけではなく、高負荷時には息苦しいノイズが聞こえてくる。
トランスミッションは、クラッチを備えない特殊なオートマティックで、内燃エンジン側に5速、駆動用モーター側に2速が組まれる。オーストラルでは少し仕事が鈍く感じられたものの、新しいソフトウェアで改善されたようだ。
それでも、変速時には一拍置くような間合いがあり、ショックも小さくない。意図しないタイミングで生じるため、不自然に感じる人もいるだろう。
ボディ中心を軸に旋回 メガーヌ R.S.のよう?
ラファールの操縦性は良好。左右のタイヤの間隔、トレッドはオーストラルより20mm広く、タイヤサイズも10mm広い。ステアリングは30%クイックになり、専用サスペンションでボディロールは10%抑えたと主張される。
最大5度まで角度を変える後輪操舵システムを、エントリーグレード以外で標準装備。小さなハッチバック、クリオ(ルーテシア)に並ぶ、10.4mの最小回転直径を叶えた。
かくして、カーブの途中でアクセルペダルを踏み込んでも、粘るようにラインを維持。加速が始まっても、不安定になる素振りはない。ボディ中心を軸に颯爽と旋回し、トルクベクタリング機能を備えるメガーヌ R.S.のよう。というのは、褒め過ぎかもしれないが。
ステアリングの操作に対し、シャシーは機敏に反応。サスペンションは快適性を維持しつつ、ボディロールは驚くほど小さく、姿勢制御も褒められる。挙動を予想しやすく、安心して先を急げる。
ただし、ステアリングホイールへ伝わる感触は薄めで、運転を存分に楽しめるわけではない。ブレーキペダルの感触は一貫性が弱く、スイッチのように制動力が生じ、低速域では扱いにくく思えた。
ドイツ銘柄からユーザーを引っ張って来れるか?
乗り心地は全般的に快適。起伏が目立つ路面を、ゆったり走るような条件が得意といえる。反面、細かな入力が連続すると落ち着きが薄れる。酷く荒れた区間では、シートベースやステアリングコラムへ振動が伝わることもあった。
価格帯を考えれば、この辺りは改善されるべき。ソフトなスプリングと肉厚なタイヤを組み合わせた方が、上質さは増すはず。高速域では、風切り音とロードノイズも大きめに聞こえた。
追って、ラファールにはプラグイン・ハイブリッドも登場予定。リアアクスル用に駆動用モーターが追加され、四輪駆動で総合300psを発揮するという。動力性能は高まるはずだが、大きな駆動用バッテリーも載るため、走行時の洗練性は向上するだろうか。
ルカ・デ・メオ氏による新体制で、変化を遂げつつあるルノー。販売数を増やすうえで、SUVをフラッグシップ・モデルに据えるという方針は理解できる。新型のラグナが登場しても、人気を集めることは難しい。
気になる部分もなくはないが、ラファールは、競争の激しいクラスで存在感を出せる特徴を持つ。運転を充分に楽しめ、スタイリングも好印象で、英国では価格設定も意欲的だ。
幅広い年齢層から、注目を集める可能性は高い。果たして、ドイツ・ブランドからユーザーを引っ張ってくることはできるだろうか。
◯:リラックスして高効率に長距離移動できる 特徴的なスタイリング
△:ハイブリッドパワートレインの洗練度と物足りないパワー 走行時の質感はもっと磨き込める
ルノー・ラファール E-テック・テクノ・エスプリ・アルピーヌ(欧州仕様)のスペック
英国価格:4万4495ポンド(約890万円)
全長:4710mm
全幅:1860mm
全高:1610mm
最高速度:175km/h
0-100km/h加速:8.9秒
燃費:21.3km/L
CO2排出量:107g/km
車両重量:1714kg
パワートレイン:直列3気筒1197cc ターボチャージャー+電気モーター+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:199ps(システム総合)
最大トルク:41.6kg-m(システム総合)
ギアボックス:5速オートマティック+2速リダクション(前輪駆動)
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