■世界初公開! 中国メーカーの小型EVが日本で発売される「大熊Car」とは
2023年3月12日、ファブレス(生産工場を持たない製造業)メーカーの「アパテックモーターズ」が、福島県大熊町で開催されているイベントにて日本導入予定の小型EVをお披露目しました。
【画像】こりゃ…小さい! 謎の大熊Car世界初公開! 驚きの内外装を写真で見る!(60枚)
アパテックモーターズは東京都品川区に本社を置く日本のEVベンチャー企業です。
「EVの企画、デザイン、開発、製造、販売に関する事業」、「EVのリースに関する事業」、「EVのための充電ステーションの整備事業」を事業内容としており、単にEVを輸入して販売するだけでなく、周辺のインフラ整備やアフターサポートまでを一括で提供することを目指しています。
先日、アパテックモーターズが中国・上汽通用五菱製の小型EV「Air ev」「KiWi EV」のマーケティング調査を行い、日本販売の準備が進んでいることが明らかになりました。
さらに、福島県大熊町の名前を冠した小型EV「大熊Car」の販売準備があることがわかっています。
その小型EV 3モデルは2023年3月12日に「大熊インキュベーションセンター」で開催されたイベント「みんなで作ろうおおくま学園祭 2023」に出展され、日本初の一般公開が実現しました。
「Air ev」と「KiWi EV」はいずれも上汽通用五菱が製造・販売する小型EVです。
米・ゼネラルモーターズや上海汽車の合弁で誕生した上汽通用五菱は以前より小型ミニバンや乗用車を手掛けていたメーカーで、同社の「宏光 MINIEV」は世界中の自動車関連企業がベンチマークとする高い評価を得ている小型EVです。
宏光 MINIEVは2020年8月に登場した当初は、その「45万円(邦貨換算)」という価格もあって爆発的なヒットを記録しました。
しかし、単に低価格というだけで年間40万台から50万台も売れるはずはありません。
無駄を省いた使いやすさと価格以上の高い品質が評価された結果と言えるでしょう。
現在は車両自体の値上げなどで約63万6800円(3万2800元)となりますが、それでも依然として中国本国のベストセラーEVとして君臨し続けています。
日本での販売準備が行われている「Air ev」「KiWi EV」の2車種は、宏光 MINIEVと同じプラットフォームを共用しているのが特徴です。
その中でも「Air ev」は2022年6月にインドネシアにて先行してお披露目、同年11月にバリ島で開催されたG20サミットではオフィシャルカーとしても活躍しました。
このモデルは中国本国に加え、インドネシアではノックダウン生産(部品のキットを輸入して生産する方式)の形で製造されています。
また、同じ上海汽車傘下のイギリスブランド「MG」からは「コメット EV」としてインド市場に、ゼネラルモーターズ傘下の「シボレー」からは「スパーク EV」という名前でエジプト市場などに「Air ev」が投入されています。
いっぽう「KiWi EV」は上汽通用五菱が展開するブランドの一つ「宝駿」下の小型EVです。
2020年1月のローンチ当初は「宝駿 E300」という名前でしたが、2021年8月のマイナーチェンジで「宝駿 KiWi EV」へと改称しました。
中国では「Air ev」が6万7800元(約131万6000円)から、「KiWi EV」が8万7800元(約170万4000円)から販売されており、宏光 MINIEVよりも高い値段となっています。
日本での販売価格はまだ明かされていませんが、少なくとも中国本国での価格よりは高くなるため、日産「サクラ」やトヨタ「C+pod」などが展開する小型EVに対し、どう勝負していくかがカギとなります。
■「大熊Car」とはどんなクルマ? 2年以内に日本国内で製造目指す
一方、この2車種に加えて日本での販売が決定しているのが「大熊Car」です。
アパテックモーターズによって「LCC(低価格競争戦略)モデル」と位置付けられたこのEVは、中国メーカーが開発し、アパテックモーターズにOEMの形で供給、日本で販売されます。
2023年3月上旬から予約が開始され、1台9800円という安価なリース価格もあって、物流業界を中心に1週間で500台の受注がありました。
日本のみならず東南アジアにも投入予定で、特に日本では軽自動車規格に収まるよう、金型レベルからの改修・適合を予定しているとのこと。
また、日本導入当初は中国より輸入する形をとるものの、数年以内には日本国内生産を開始する計画であることも明かされました。
現在、福島県大熊町にてテストコースを含む生産設備の建設が進んでおり、筆者も大熊町で取材見学をしてきました。
もし実現するとなれば、1990年に生産終了した「日産製フォルクスワーゲン サンタナ」以来の、純粋な海外メーカーのクルマが日本で生産される事例(非OEM)となります。
また、中国メーカーのクルマが日本に作られた工場で日本人の手によって生産される初の事例でもあります。
アパテックモーターズは生産設備を福島県大熊町に誘致することで、雇用の創出や地域経済の活性化、地産地消の促進など、長期的なスパンでの復興につなげる狙いがあるとしています。
また、中国企業側にとってもブランドイメージの向上となり、日中間の交流促進へも貢献するとしています。
大熊 Carは近所への買い物や送迎など、近場での使用を想定した電気自動車であるため、急速充電機能は搭載しません。
そのため、「日中に使用、夜間に家庭などで充電」という運用シナリオを想定しており、専用の急速充電設備を新たに設ける必要もありません。
アパテックモーターズは導入におけるハードルを下げることで、今までEVに興味を持たなかった層からの関心や意識を高める狙いがあるとのこと。
同社の代表取締役の孫峰は次のようにコメントしています。
「 私たちの目的は、低コストでEVを提供することで、より多くの人々がEV車両を手に入れることができるようにすることです。
EVの普及率が高まれば、低所得者でも環境にやさしい社会を実現することができます。
我々のターゲット顧客は、レンタカー企業、企業営業用車、リース企業、そして主にZ世代の方が使っていただきたい最初のEVを目指しています。
今回の販売開始により、アパテックモーターズは日系の新興メーカーとして日本市場での地位をさらに強化し、EV車両市場における存在感を高めることが期待されます。
また、製造基地の立ち上げにより、地域経済の発展に貢献することが期待されます。
今後も地域産業振興やSDGs達成に貢献するため、地産地消にも力を入れていくつもりです」
※ ※ ※
アパテックモーターズがマーケティング調査を行い、日本で販売準備に入った小型EV 3車種はいずれも2023年中には販売が開始されるのではないかとみられます。
なかでも日本での使い勝手に配慮される仕様の大熊Carは月額制サービスによって提供されるとしており、新たなビジネス形態の普及促進にも繋がることでしょう。
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みんなのコメント
ゴルフカートより全然マシで
機能的には十分だけど、どんな評価になるかな?
庶民には車に夢を持てる時代は終わった。