この記事をまとめると
■アメリカンV8エンジンの「スモールブロック」と「ビッグブロック」の違いを解説
この見た目なのに公道走行できる! 「総カーボンボディ」「800馬力超え」の最速マスタングが強烈すぎる
■スモールブロックとビッグブロックはシリンダーのサイズが異なっている
■とりわけスモールブロックは高い汎用性から幅広い車種に採用され、いまでも人気が高い
単なる排気量の大小ではないスモールブロックとビッグブロック
アメ(リカ)車といえば「V8」というイメージは、クルマ好きの間では常識と言えるくらいに当たり前の事実ですが、当然のことながらアメ車のメーカーはフォード、GM、クライスラーなどいくつもありますし、メーカーや時代ごとにいろんな種類のV型8気筒エンジンが存在しています。
そのなかでも主要な存在にはメーカー自ら、あるいはファンたちによってペットネームが与えられ、主にその名称で呼ばれているものもいくつかあります。「ワイルドスピード」など、チューニングカーが活躍する映画やドラマのなかでの「このカマロのエンジンは、350のスモールブロックをベースにストローカーキットを……」なんていう会話を聞き覚えのある人もいるでしょう。
ここではその「スモールブロック」と「ビッグブロック」とはいったいなんぞや? というテーマで掘り下げていきたいと思います。
「スモールブロック」と「ビッグブロック」って何のこと?
結論を言ってしまうと、「スモールブロック」、「ビッグブロック」というのはエンジンのサイズを示す言葉です。もっと言うと、GM社のブランドである「シボレー」が開発したV8エンジンを、シリンダーのサイズで大きくふたつに分類したときの呼び名なんです。
「ブロック」とは「シリンダーブロック」のことで、V8ですから片側4気筒ずつをV型に分けて配するシリンダーブロック形状をしています。Vの集合部にはクランクシャフトが収まり、そこからVの字に2分されて交互に4気筒ずつピストンが生えているのが主な構成となっています。
「スモールブロック」とは、4つ並んだピストンの中心間の距離(ボア・ピッチ)が4.4インチ(11.17cm)で設計されたエンジンのことです。対して「ビッグブロック」は、ボアピッチが4.8インチ(12.19cm)となり、より大きな排気量にすることが出来るように設計されています。
このように「スモール」と「ビッグ」の違いはザックリ言ってしまうとブロックの前後長だけです。エンジンの排気量はボア(ピストンの直径)とストローク(クランク軸の往復長さ)によって決まりますので、「スモールブロック」でも大きな排気量はありますし、逆に「ビッグブロック」でも小さい排気量にすることもできます。これはエンジン特性に関わる数値なので、搭載車種に合わせた組み合わせでエンジンが作られています。
「スモールブロック」には、初代の265キュービックインチ(約4.3リッター)から、最大では400キュービックインチ(約6.6リッター)まで、いくつかの排気量のバリエーションがあります。
対する「ビッグブロック」は396キュービックインチ(約6.5リッター)から502キュービックインチ(約8.2リッター)となっています。
50年間基本設計をほとんど変えなかったスモールブロック
そもそもなんでアメ車はV8なの?
クルマに興味がある人でも、なかにはアメ車のほとんどはV8エンジンを搭載していると思い込んでいる人がいるかもしれませんがそれは間違いで、直列6気筒や4気筒もあれば、V型でも6気筒モデルもあります。ただ、そのイメージのどおりにアメ車を代表する車種の多くはいまでもV8エンジンを搭載しています。
ではなぜV8なのでしょう? V8エンジンをアメリカで初めて実用化して搭載したとされているのは「キャデラック」です。単気筒に始まったクルマのエンジンは、パワーとスムースさを求めて2気筒、4気筒と気筒数を増やしていきました。V8が主流になる前は、直列8気筒というエンジンもあったようですが、全長が長すぎて車両の設計を圧迫するため、全長がほぼ半分に出来るV8エンジンが開発されました。
それでも当初は、コスト面や格付け意識で高級車にしか搭載されていませんでしたが、「フォード」が大衆車向けのローコストで製造できるV8エンジンを開発したのをきっかけに、ほかのメーカーにもV8エンジンの波が広がっていき、ほかのエンジンの存在が薄まるくらいに浸透していったようです。
これは筆者の推測ですが、「ハーレー」と言えば「Vツイン」という概念がいまやもう崩すのが不可能というくらいに定着したように、あの独特の鼓動感が魅力だったり、エンジンサイズとパワーがアメリカの国土に対してちょうど良かったりして、V8エンジンがアメリカの消費者の生活や感覚にすっぽりとフィットしたせいだと思います。
シボレー製「スモールブロック」エンジンの魅力
登場した1955年から2000年の少し前まで、現役として採用され続けた超ロングセラーの「スモールブロック(&ビッグブロック)」エンジンですが、驚くことに、その50年近い間に基本構造はほとんど変えずにブラッシュアップされて製造し続けられたそうです。
さすがに点火やインジェクションの制御など、時代に応じた技術は投入されていますが、いまではほとんど見なくなった「OHV(オーバーヘッドバルブ)」という古式ゆかしいバルブ駆動方式を最後まで変えなかったのがいちばん驚く部分です。
1980年代には日本やヨーロッパで性能競争が盛んになり、性能追求に有利なDOHC方式が主流になります。しかし、その頃のアメリカのV8界隈では、そんな性能競争はどこ吹く風。大排気量による大トルクにものをいわせて、広大な直線路をひた走っていたので、古いOHV方式のV8エンジンで十分だったのでしょう(やや偏見アリ)。
そして、「スモールブロック」エンジンが永く愛され続けた理由のひとつに汎用性の高さが挙げられるでしょう。シボレーが開発したとされる「スモールブロック」ですが、搭載された車種はシボレーだけに留まらず、同じ「GM」傘下の「ビュイック」、「キャデラック」、「オールズモビル」、「ポンティアック」、「ホールデン」などの主な車種にも標準モデルとして305&350キュービックインチの「スモールブロック」が採用されていました。もしかしたら開発の時点で汎用化を狙っていたのかもしれません。
そのため、生産が終了したいまも現存数はかなり多く、社外品を含む部品供給の豊富さもあって、いまだに修理して使い続けられているようです。
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みんなのコメント
鼓動もいいし、メカノイズもいいんだよね。