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あえてのFR! そして直6エンジン! 異色のSUV「マツダCX-60」投入の狙いをマーケティング担当者に直撃した

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あえてのFR! そして直6エンジン! 異色のSUV「マツダCX-60」投入の狙いをマーケティング担当者に直撃した

 この記事をまとめると

■CX-60が9月15日から販売をスタートする

直6+FRを蘇らせたマツダに拍手! CX-60はメカニズムも質感も想像を超えたSUVだった!

■マツダのフラッグシップSUVという立ち位置となっている

■高い残価率を誇るのも魅力のひとつだ

 異色のFR駆動を採用のSUV! CX-60のマーケティング戦略とは

 6月24日より予約受注が開始され、9月15日にいよいよ発売を開始する、マツダの新たなる2列シートのDセグメントSUV「CX-60」。フロントエンジン縦置き・後輪駆動を基本とする「ラージ・アーキテクチャー」を初めて採用しただけではなく、価格帯が300万円弱から600万円超と幅広く、また電動車の上級モデルはプレミアムブランドの車種とポジションも価格帯も競合するなど、マツダとしては過去に例のない存在となっている。果たしてその意図するところは。国内営業本部国内商品マーケティング部の神野道弘部長に聞いた。

──まず根本的なことからおうかがいしたいのですが、なぜ敢えてFRを選択したのでしょうか? マーケティングやブランディングの観点から、お答えいただけますか。

 神野 今回、縦置きFRを選んだのは、従来の当社の大型SUVをご検討・ご購入いただいた方のなかに、走りの面で不満を持たれたり、ご満足いただけていない方がいらっしゃることが分かったんですね。ですが今回のCX-60は、そういったお客様にも、乗った瞬間に気持ち良いと感じていただけると思います。私自身もそう感じましたので、走りは絶対に負けないと思っています。

 それを支えているのは縦置きFRレイアウト、前後重量配分が適正化されていることです。また、脈々と人馬一体にこだわり続けてクルマを作ってきた、マツダならではの一台ですので、縦置きFRレイアウトであることをしっかりとお客様に伝えて、振り向いて、乗っていただいて、1ランクも2ランクも走る歓びのレベルが上がっていることを感じていただきたいと思っています。

──CX-60の価格帯は最上級グレードが600万円超と、今までマツダさんのなかでも……。

 神野 ないですね。

──ユーノス・コスモでもそこまで高くありませんでしたが、このCX-60以降はマツダのブランドをもっと上へと高めていくお考えでしょうか?

 神野 元々このクルマの使命が、既存のCX-5のお客様をどう守っていくか、ということにあります。初代CX-5が発売されてからもう10年経っていますので、CX-5からCX-5に乗り換えられるお客様もたくさんいらっしゃいます。ですがその一方で、もう少し上質な大型のSUVを求められるお客様もおり、当社にはその選択肢がありませんでしたので、どうしても他社製のものを選ばれる状況が発生していました。

 そこで、何とかしたいという気持ちがありましたので、まずは少し手を伸ばせば届く価格帯からスタートして、さらに今回はマイルドハイブリッド付きディーゼル、これが他社のストロングハイブリッドの燃費に迫りながら、圧倒的なトルクを確保しており、競争力もあると判断して、CX-5より上のクラスの価格帯にも商品をラインアップできたということですね。

 また、プラグインハイブリッドが、それをさらに上まわる高出力を持ちながら、日常域では約60kmEV走行できますので、通勤などで使われる範囲なら、EVで上質な走りを楽しめ、いざ遠出するときにはパワーのゆとりもあります。プラグインハイブリッドはその分野の中で独自の価格帯が形成されていますので、それを意識した価格設定をしていることも、価格帯が大変幅広くなる結果につながっていますね。

──CX-5ではさらなる上級志向のお客様をカバーしきれないとのことでしたが、CX-8はその受け皿にならなかったということでしょうか?

 神野 2列シートのCX-5に対しCX-8は3列シートということが大きな違いですが、3列目シートは必要ないが荷室がもう少し欲しいという方にもお選びいただいています。とはいえCX-8は3列シートのクルマですから。今回のCX-60は2シートで、全長もさほど長くないサイズの中で走りを極めたという点で、新たなお客様を獲得でき、乗り換えもスムースに行くのではないかと。

──今後はCX-60の3列シート仕様である「CX-80」や、北米などにはそれらのワイド版である「CX-70」と「CX-90」も用意されるという計画がすでに発表されていますが、(ファミリーではなく)パーソナルのモデルとしては、CX-60がマツダさんの新しいフラッグシップに位置付けられるということでしょうか? もちろんそのセダンもあるのでしょうが。

 神野 はい。SUV群のなかではCX-60がフラッグシップになります。

 マツダのフラッグシップを担うまったく新しいSUVだ

──なるほど。では、マツダさん全体のブランド戦略について、改めてお伺いします。今回のCX-60発売を機に新しいステージに入るとのことですが、それは、よりプレミアムな方向にシフトするということでしょうか?

 以前、マツダさんは輸入車で言えばフォルクスワーゲンさんに近いポジションを狙っているというお話もありましたが、今回FRの上級モデルを新規開発したという意味では、アウディさんよりも上を目指しているような印象を受けます。

 神野 それは、私たちが狙ってやっていくことではなく、私たちが目指しているのは、既存のお客様としっかり長いお付き合いを続けていきたい、お客様との絆を大切にするブランドでありたいということですね。CX-5からCX-60に行き、またライフスタイルが変わり、もう少しコンパクトなクルマに戻る……という世界を目指しています。

 ですから決してプレミアム方向に行きたいということではありません。ただCX-60が、上級・上質なものを求めるお客様にも対応できるモデルであることは、間違いないと思います。

──今回敢えてFRを選んだことや、昨今のお店の作り方、カタログやCMでの見せ方を含め、既存のプレミアムブランドと遜色ないどころか上まわっているようにさえ感じられますが……。

 神野 FRを選んだのは、マツダが一番大事にしている、走る歓びを極めるためですね。決してプレミアムに入るための、直列エンジン縦置きFRと、捉えてはいません。実車にお乗りいただければ、マツダが目指しているものを感じていただけると思います。

 他社からマツダ車に乗り換えられたお客様からよくお聞きするんですが、「とくに用事もないのに出掛けてしまう」というんですね。ドライブする、ステアリングを握るのが楽しい、そんな思いになっていただけるお客様が多いと思いますので、そんなお客様にも、このCX-60にお乗りいただければ、さらにそれを感じていただけると期待しています。

──本当にプレミアムブランドを目指すのであれば、このCX-60に安価なグレードを設定しないほうがいいですよね。

 神野 本当にプレミアム路線で行くのであれば、その通りですね。

──CX-60のデザインは、マツダ3やCX-30と比べると、力強さを表現する方向に戻った印象を受けますが……。

 神野 これもエンジン縦置きFRレイアウトから来る造形だと思っています。これまでよりもノーズが長くなり、存在感がまったく違ってきているのではないかと。

──なるほど。一番の目的は、商品のレンジと、カバーできるお客様を広げたいと。

 神野 はい。新世代商品群になってから、当社内で代替えしていただける率は増えてきていますが、それでもラインアップが不足していることで、他社を選ばれるお客様が発生しているのは事実です。そこにしっかりした商品を投入していきたい……というのがCX-60の使命ですね。

──以前はFRの大きいセダンもありましたが、紆余曲折を経て、やがて世のなか全体でSUVがスタンダードになりました。その過程で車種数は確かに減っていますから、それを戻したいということでしょうか?

 神野 もっと上級・上質なものを求められるお客様は間違いなく多いので、そこにしっかり、走る歓びを極めた1台を投入しました。

──グレード構成や価格設定は、どのようなことを狙って決定されたのでしょうか?

 神野 まず、CX-5やCX-8にお乗りのお客様でも少し手を伸ばせば届くことを大事にしています。パワートレイン別の価格についても、価値に見合った価格設定をしなければ……。当社は残価率にこだわっていますので、購入していただいたお客様が次の代替の時にガッカリしないように、しっかり資産として価値が残せるよう意識した価格設定をする、ということですね。

──でも、あまり高くもせず、値引き販売に陥らないようにする、ということでしょうか?

 神野 そうですね。値引き販売すると必ず残価が落ちます。それは結局お客様のためになりませんので、そうならないよう、適切な価格設定を心がけています。CX-60では幅広い価格レンジにするという狙いがもともとあったので、デザインも4つの世界観でしっかり区別してもらいました。

──比較的安価なグレードでも内外装の質感は十分に高く、それが300万円弱から400万円台で買えるということは、コストパフォーマンスは相当高いですよね。CX-5もそうでしたが、その点では圧倒的に強く、他は太刀打ちできないのではないかと感じます。

 神野 ありがとうございます。そんなふうに、残価にこだわっているからこそ、当社では「スカイプラン」という残価保証クレジットを持っています。3年で55%以上という高い残価保証をしていますので、お得な月払いをご提案できるのが強みと思っています。

──最初の車検のタイミングで乗り換えるユーザーは……。

 神野 増えていますね。3年プランをお組みでなくとも、5年で組まれていても、3年目に良い下取価格を提示できれば、「この際乗り換えよう」という方もすごく増えています。

 今年からは7年の残価保証クレジットを追加しましたが、7年間乗るつもりはなくとも、これで月払いが間違いなく減るんですね。それで、3年目でも5年目でも、その段階で残債を上まわる下取り価格を提示できれば、その時がお客様にとっても乗り換えのチャンスになります。

 そうしたことは、もしかしたらお客様にとってメリットのある情報かもしれないので、しっかり伝えていきたいですね。この「スカイプラン」は販売手法として定着してきたので……。

──今回CX-60を投入することで、マツダさん全体のブランド価値が底上げされ、他の車種でも残価が上がると嬉しいですね。

 神野 はい、そうなると嬉しいですね。

──クルマ作りはもちろんお店作り、ブランド作りを含めて、いままで取り組んできたことをより突き詰めたのが、今回のCX-60……という理解でよろしいでしょうか?

 神野 はい、そういうことです。

──そんなCX-60がいよいよ発売されますね。ありがとうございました!

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