クルマ好きなら誰でもワクワクするのがフルモデルチェンジだが、世の中にはフルモデルチェンジ以上にマイナーチェンジが大当たりしたモデルも多数存在する。そこで、ここではマイナーチェンジが奏功した3メーカー4台と今後のセールスに期待したい1台をピックアップ。
マイナーと言ってもビッグマイナーというケースも多々あるが、それはさておき……マイナーチェンジでも販売台数は伸びるという好例を紹介していこう。
テレビで走っているクルマのタイヤが逆回転して見えるのはどうして?
文/FK、写真/トヨタ、日産、三菱
[gallink]
苦境に立たされた現行スカイラインを救ったのは日産エンブレムの復活だった!?
400ps を発揮する3.0リッターV6ツインターボエンジン(VR30DDTT)を搭載した400R。プレミアムスポーツセダンの名にふさわしい走りを実現
2014年2月に発売された13代目スカイラインのV37型。デビュー当時はインフィニティのエンブレムが採用されたことも大きな話題になった。
インフィニティエンブレムの採用は日産が世界に誇る高級車“インフィニティ”の開発で培った高い技術力とデザインの知見を傾注した1台がV37型であることを世に示すことに加え、日本でインフィニティブランドの認知を高めることが主たる目的だったが……。
日産の象徴であるスカイラインの方向転換とも捉えられるフルモデルチェンジは裏目に出て、V37型の販売状況は悪化の一途を辿った。
しかし、2019年7月のビッグマイナーチェンジで状況は一変する。
世界初の先進運転支援技術であるプロパイロット 2.0、圧倒的なパフォーマンスを誇る3.0リッターV6ツインターボのVR30DDTTエンジン、日産ブランドの象徴であるVモーショングリルの採用をはじめ、スカイライン史上最高の400psを実現した400Rの追加ラインナップなどによって商品力は大幅にアップ。 日産エンブレムの復活も功を奏して、受注台数は発表から1カ月半で販売計画の約9倍に近い1760台を突破。マイナーチェンジで華麗なる復活を遂げた。
マイナーチェンジ後も好調なルーミーはヤリスに続くトヨタのドル箱的存在
2020年9月のマイチェンでスマートアシストを全車標準装備に。これが奏功してか、セールスは絶好調。155万6500円~209万円という価格帯も魅力
ミニバンの魅力をコンパクトカーに凝縮したトール2BOXのリッターカーとして、2016年11月にデビューしたルーミー。1.5リッター相当のパワーを誇る1.0リッターターボのゆとりある走りや威風堂々たる迫力あるエクステリアデザイン、コンパクトながら広くて快適な室内空間、使い勝手の良い荷室など魅力溢れるパッケージが人気を集めて、発売から1カ月後の受注台数は3750台の月販目標台数に対して約1万8300台を記録した。
そして、2020年9月には内外装のデザイン変更、進化した予防安全機能“スマートアシスト”の全車標準装備、ウェルカムパワースライドドアやスマートフォンなどの充電用USB端子を標準装備するなどのマイナーチェンジを実施。
日本自動車販売販売協会連合会発表の乗用車ブランド通称名別順位では、2020年1~12月が8万7242台の6位(1位はヤリスの15万1766台)だったものの、2021年1~6月は7万7492台の2位(1位はヤリスの11万9112台)、2021年4~9月も6万6887台の2位(1位はヤリスの10万5943台)とマイナーチェンジ後も好調なセールスを記録。トヨタではヤリスに続くドル箱的存在となっている。
e-POWERの採用で3年連続コンパクトカー販売台数No.1を獲得したノート
ガソリンエンジンにより発電し、その電力を利用してモーターの力で走行するという「e-POWER」搭載車が大ヒット。最上級グレードでも224万4240円というコスパの高さも人気の要因
2020年12月に発売された現行モデルのセールスも好調なノートだが、先代のE12型もまた2017年から3年連続でコンパクトカー販売台数No.1を獲得した人気の1台だった。
そのデビューは2012年9月。日本の自動車メーカーとして初めて女性の開発責任者(水口美絵氏)を起用したことでも話題をさらったが、躍動感のあるエクステリアと上質なインテリアに加え、新開発の直噴ミラーサイクルエンジンに高効率スーパーチャージャーを搭載して平成27年度燃費基準+20%を達成したHR12DDRエンジン搭載車の自動車取得税と自動車重量税が免税となることなども高い評価を得て、発売からわずか2週間で約2万2000台を受注。
その後、2016年11月にはガソリンエンジンで発電し、その電力を利用してモーターの力で走行する新パワートレインの“e-POWER”を搭載したモデルをラインナップに追加。すると、ノートの人気はさらに拍車がかかり、マイナーチェンジ後から7カ月で10万台の販売を達成するとともに、7カ月連続でコンパクトセグメントのランキングでも販売台数1位を記録。日産の屋台骨を支えたといっても過言ではない1台となった。
1年以内に二度の仕様変更や新グレード追加を敢行! エクリプスクロス
フロントフェイスも一新。マイナーチェンジとはいえ、かなりの変更が加えられた。11月25日に再び仕様変更。エクリプスクロスPHEVが進化を果たした
三菱自動車がクルマづくり100周年となる2017年にグローバルで発売したクロスオーバーSUVのエクリプス クロス(国内では2018年3月に発売開始)。
三菱自動車独自の電子制御4輪駆動技術“S-AWC”によって得られる高い走破性と操縦安定性や、新開発の1.5リッター直噴ターボエンジンと8速スポーツモード付きCVTによる優れた走行性能などが高く評価され、2019年次RCJカーオブザイヤーを獲得(2018年11月13日発表)。
しかし、その栄誉とは裏腹にセールス面では苦戦を強いられ、日本自動車販売販売協会連合会発表の乗用車ブランド通称名別順位では、2019年4~9月に4426台で50位にランクインするものの、同年1~12月の通年ランキングでは50位圏外という結果に。
その後、2020年12月にデザインを一新し、ツインモーター4WD方式のPHEVシステムを採用するビッグマイナーチェンジを敢行。前述の乗用車ブランド通称名別順位では2020年12月に前年比693.9%増となる2151台を、また、2021年4~9月も順位こそ48位ながら前年比305%増となる3934台を記録するスマッシュヒットモデルとなっている。
そして、2021年11月25日にはエクリプスクロスPHEVに運転支援機能「マイパイロット」を搭載するなどの一部改良が実施。同時に、ガソリンエンジンモデルには「Gリミテッドエディション」が新設定された。
スタイリッシュに生まれ変わったキャラバンがハイエース一強の牙城を崩す!?
今回のマイチェンで、ガソリン車は「NV350キャラバン」から「キャラバン」に名称変更。バン GRAND プレミアムGXが新設定された
ある時は業務用のバンとして、ある時はアウトドアのお供としてマルチに活躍するハイエース。その最大のライバルであるキャラバン(ガソリン車)が2021年10月に行ったマイナーチェンジで注目を集めている。
今回のマイナーチェンジでフロントグリル&バンパーの刷新をはじめ、ボディカラーの追加、黒を基調に落ち着いた雰囲気を演出するインテリア、メーター回りの刷新、D型の新形状ステアリングの採用といった多岐に渡る仕様変更が行われたキャラバン。全車セーフティ・サポートカーS(ワイド)の対象となり、安全性能も大幅に強化が図られている。
トランスミッションも多段化した7速のワイドレンジによって動力性能と燃費性能を両立するとともに高速走行時の静粛性向上も実現し、新たに追加されたマニュアルシフトモードもストレスフリーのドライビングを提供。
プライベートユースを意識した専用内外装を採用した最上級グレードのGRANDプレミアム GXを新設定するなど日産の力の入れようは相当なものだが、果たして今回のマイナーチェンジがハイエース一強の牙城を崩す起爆剤となるか? 今後の動向に期待したい。
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