現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 世界に誇る縁の下の力持ち! ホンダe:HEV用エンジンの凄さとは?【自動車業界の研究】

ここから本文です

世界に誇る縁の下の力持ち! ホンダe:HEV用エンジンの凄さとは?【自動車業界の研究】

掲載 13
世界に誇る縁の下の力持ち! ホンダe:HEV用エンジンの凄さとは?【自動車業界の研究】

世界トップレベルの熱効率41%を実現!

最近はBEV(バッテリー電気自動車)が話題の中心で、取り上げられることが減ってきたエンジン(ICE:Internal Combustion Engine)ですが、今回はホンダシビックのそれもタイプRではなくe:HEV用に新開発され世界トップレベルの熱効率を実現している「ホンダ2.0L直4直噴アトキンソンサイクルエンジン」のコラムをお届けします。

30年間の応援に感謝を込めて!ホンダ、「TYPE R」シリーズ30周年記念イベントを多数開催!

では、このエンジンの何が『世界に誇る』であるかと言えば数値的には燃費に直結する熱効率、さらにシビックに搭載されていることです。
その高い熱効率を実現する技術の一つにアトキンソンサイクルがありますが、一般的なオットーサイクルが吸気→圧縮→膨張(燃焼)→排気という4つの行程の長さ(ピストンの上死点~下死点の距離)が同じであるのに対し、アトキンソンサイクルでは膨張の行程が圧縮の行程より少し長く、特に低負荷(低回転&パーシャルスロットル)運転時に熱効率が良くなるというのが特徴です。

わかりやすいイメージとしては、風船を圧縮して縮む距離よりも膨張して伸びる距離が長ければ動いた距離(仕事)は増えるので効率が上がるといったところです。

ホンダシビックのe:HEVは、エンジンが発電してモーターで走行するいわゆるシリーズハイブリッド『縁の下の力持ち』型で低負荷の運転領域を多く使うため高い熱効率を実現していると考えられます。
また、厳密にはアトキンソンサイクルをホンダはバルブタイミング(燃焼室への吸気や排気のタイミング)で疑似的に(ミラーサイクル)を実現して以前から採用しています。

コストが掛かる直噴エンジン化を実現

今回、着目したいのは新たに採用された燃料噴射システムの燃焼室内直接噴射、いわゆる直噴化です。直噴とはエンジンの燃焼室へ直接燃料を噴射するタイプを言い、対するはPI(Port Injection=ポート噴射)と言われ、燃焼室へ空気を流入するための吸気ポートへ燃料を噴射するタイプも存在します。
現在は直噴エンジンが珍しくありませんが、従来のPIでも十分に高い熱効率(40%以上)をホンダは実現していたにも関わらず、開発にも製造にも高いコストを要する直噴化を実施したところから、エンジンの将来に向けたホンダの本気度が伺えます。

直噴化の大きなメリットは、熱効率に影響の大きい燃焼の制御を燃料噴射の精緻化で実現するところにありますが、特にPIでは不可能な圧縮行程での燃料噴射を可能にして燃焼が始まる直前まで燃焼室内の混合ガス流動を制御、気化潜熱による燃焼室内温度の低減、ノッキング(不具合)抑制等をすることがあげられます。今回、更にホンダは燃焼の基本であるストイキ燃焼(理論空燃比)を徹底的に追求することで一部領域のトルクを従来比で30%も向上させています。

特に凄いのは、他社のガソリン直噴エンジンの噴射圧は高くても10MPa程度であるのに対して、ホンダのシステムは35MPaもの高圧で燃料の微粒化を実現しているところです。
合わせてタンブル流動(急速燃焼に効果)を生み出す高タンブル形の吸気ポートやタンブル流を保持させるピストン冠面形状等の採用により急速燃焼を実現して高い熱効率と高い動力(発電)性能を両立しています。

 

リーン燃焼を用いずストイキ燃焼を追求

従来から、高燃圧多段直噴システムと成層リーン燃焼(燃料に対して空気が多量で層状に段階燃焼)を組み合わせ高い熱効率(低燃費)を実現するのが効果的であるとされているのですが、PIよりも直噴では難しいとされる(※)NOxやPMといった排ガス対策(リッチスパイク等がより必要)から環境性能もトータルで鑑みてリーン燃焼を用いずストイキ燃焼を追求したエンジンにホンダは仕立てたと推定されます。

(※)直噴はPIに比べて、燃料の噴射から燃焼するまでの時間や体積等の関係から混合ガスが均質化されずNOxやPMの対処面で不利とされています。
更に直噴リーン燃焼は対処が難しく、その裏付けとして実際に平成30年排出ガス規制での直噴ストイキ燃焼エンジンのPM規制に先駆けて、平成21年排出ガス規制から直噴リーン燃焼エンジンのPM規制が導入されており、直噴リーン燃焼のNOxとPMの対策についての難易度が高いことが伺えます。

 

走りや燃費、環境性能に静粛性と欲張りすぎるほどトータル性能を向上

燃費(熱効率)を追求したエンジンは、静粛性や質感(フィール)といった面を割り切って開発されることが多いのですが、ホンダの最新エンジンはそれらの性能を両立しようと開発されていて、その代表例がエンジンの2次バランサー(エンジン回転数の2倍で回転、振動解析に用いられるフーリエ変換時の2次成分をキャンセルすることから2次バランサーと呼ばれる)の採用による静粛性向上です。
熱効率の面でこれは(機械)損失でしかありません。つまり、「ホンダ2.0L直4直噴アトキンソンサイクルエンジン」は熱効率だけを追い求めずにトータル性能を追求して世界トップレベルの熱効率を実現していることが『世界に誇る』日本のテクノロジーと言えるのではないでしょうか。

シビック e:HEVで新しい感動を

今回は、ホンダが将来に向けて開発した最新の「ホンダ2.0ℓ直4直噴アトキンソンサイクルエンジン」を取り上げました。e:HEV用のエンジンでは、多用する運転領域から従来のPIエンジンでも十分であったのに、更にはコスト観点で投資を回収しやすい高級車でもないのに直噴化をして更なる高みを目指していることに感銘を受けます。
又、世界中でたくさん販売されているグローバルブランドのCIVICだからコスト面でも実現できたのでしょう。今回、紹介した技術はほんの一部で、実際には商品開発や生産技術、量産に至るまで公表されない「日本の匠の技」で重箱の隅をつつく、小さいが難しい技術を積み重ねてきたメーカー、サプライヤーとサプライチェーンで世界トップレベルの性能が生み出されていることを付け加えておきます。

シビック e:HEVに乗る際には、そんな『世界に誇る』日本のテクノロジーを思って乗ってみたら新しい感動があるかもしれません。

https://www.honda.co.jp/factbook/auto/CIVIC_eHEV/202206/4220630-civic.pdf

(ABeam Consulting)

文:LE VOLANT CARSMEET WEB 橋爪一仁
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

日産から謎の新型NISMOコンセプトモデルが出た!──GQ新着カー
日産から謎の新型NISMOコンセプトモデルが出た!──GQ新着カー
GQ JAPAN
ツインターボ化とド派手なエアロで“魔改造”! スイスのチューナーが手がけた世界10台限りの「スペシャルなランボ」とは
ツインターボ化とド派手なエアロで“魔改造”! スイスのチューナーが手がけた世界10台限りの「スペシャルなランボ」とは
VAGUE
VW『ID.Buzz』で自動運転サービス、2026年春ノルウェー・オスロで開始へ
VW『ID.Buzz』で自動運転サービス、2026年春ノルウェー・オスロで開始へ
レスポンス
トヨタ新型「RAV4」ついに発売! 価格は450万円スタート「GR」「PHEV」は“一旦おあずけ”
トヨタ新型「RAV4」ついに発売! 価格は450万円スタート「GR」「PHEV」は“一旦おあずけ”
乗りものニュース
リヤドア付き「ただし右側のみ」のフィアット500があるってマジ!? 日本人が知らないチンクの日本導入は難しい?
リヤドア付き「ただし右側のみ」のフィアット500があるってマジ!? 日本人が知らないチンクの日本導入は難しい?
WEB CARTOP
ラーメン店探しの新革命!? 位置情報や好みの味から旨い店がすぐ見つかる!? 「Tokyo Ramen of the Year」が超便利!!
ラーメン店探しの新革命!? 位置情報や好みの味から旨い店がすぐ見つかる!? 「Tokyo Ramen of the Year」が超便利!!
ベストカーWeb
450万円から! トヨタ「新型RAV4」発売! 約7年ぶりの全面刷新で「3つの異なるボディ」&“HEVとPHEV”を設定! メーカー初の「ソフトウェア」採用でV2Hにも対応!
450万円から! トヨタ「新型RAV4」発売! 約7年ぶりの全面刷新で「3つの異なるボディ」&“HEVとPHEV”を設定! メーカー初の「ソフトウェア」採用でV2Hにも対応!
くるまのニュース
トヨタ「RAV4」発売 7年ぶり全面刷新で性能大幅向上 初の新ソフト基盤「アリーン」採用も 450万円から
トヨタ「RAV4」発売 7年ぶり全面刷新で性能大幅向上 初の新ソフト基盤「アリーン」採用も 450万円から
くるまのニュース
ルノー『5』EV、15か月で生産10万台達成…欧州電動Bセグ販売首位
ルノー『5』EV、15か月で生産10万台達成…欧州電動Bセグ販売首位
レスポンス
JAF、謎解きコンテンツ「JAFからの挑戦状」実施へ…東京オートサロン2026
JAF、謎解きコンテンツ「JAFからの挑戦状」実施へ…東京オートサロン2026
レスポンス
『ケータハム・プロジェクトV』最新プロトがオートサロン2026で初公開へ。セブンのレース用車両も
『ケータハム・プロジェクトV』最新プロトがオートサロン2026で初公開へ。セブンのレース用車両も
AUTOSPORT web
立川~日野をつなぐ新ルート!「中央南北線」計画はどこまで進んだ? 多摩川に新たな架橋「富士見橋」の構想も【いま気になる道路計画】
立川~日野をつなぐ新ルート!「中央南北線」計画はどこまで進んだ? 多摩川に新たな架橋「富士見橋」の構想も【いま気になる道路計画】
くるくら
約270万円! 日産の「新“3列・7人乗り”コンパクトミニバン」がスゴい! 全長4.4m級で「セレナより小さい」“スライドドア”モデル! 精悍「黒マスク」の“アウトドア”仕様もカッコいい「NV200バネットワゴン」に注目
約270万円! 日産の「新“3列・7人乗り”コンパクトミニバン」がスゴい! 全長4.4m級で「セレナより小さい」“スライドドア”モデル! 精悍「黒マスク」の“アウトドア”仕様もカッコいい「NV200バネットワゴン」に注目
くるまのニュース
古河ユニック、車載専用型ユニックキャリア2機種を刷新…乗り込み角度3度を実現
古河ユニック、車載専用型ユニックキャリア2機種を刷新…乗り込み角度3度を実現
レスポンス
ホンダが旧型車向けのヘリテージサービス「Honda Heritage Works」を2026年4月より開始
ホンダが旧型車向けのヘリテージサービス「Honda Heritage Works」を2026年4月より開始
@DIME
体制変化を経たレッドブル。王座奪還に向け、F1新時代の2026年は代表らの実力が試される1年に【トップチーム密着】
体制変化を経たレッドブル。王座奪還に向け、F1新時代の2026年は代表らの実力が試される1年に【トップチーム密着】
AUTOSPORT web
HKS「Mastery ECU」シリーズ、『GR86/BRZ』用フェーズ3がボルトオンターボキットに対応
HKS「Mastery ECU」シリーズ、『GR86/BRZ』用フェーズ3がボルトオンターボキットに対応
レスポンス
ニューウェイ代表就任はアストンが不振だから? アロンソは否定「ローレンス・ストロールが何を考えているのか常に共有されている」
ニューウェイ代表就任はアストンが不振だから? アロンソは否定「ローレンス・ストロールが何を考えているのか常に共有されている」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

13件
  • 欧州主導のEVゴリ押しもすぐに行き詰って、結局こういうのが勝つ気がする。
  • ホンダは自動車メーカーではなく本田技研工業株式会社という技術メーカー。
    その技術メーカーが出している車がホンダ車。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

193 . 7万円 235 . 2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

38 . 0万円 280 . 0万円

中古車を検索
ホンダ シビックの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

193 . 7万円 235 . 2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

38 . 0万円 280 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村