この記事をまとめると
■プジョーから登場したクーペSUVの「408」に飯田裕子さんが試乗した
「カッコイイ」で買って乗ったら「ちっちゃっ」! 今流行のクーペSUVは「リヤ窓」のチェックを忘れずに
■大きすぎず小さすぎずなボディは流麗なフォルムに凛とした佇まいの躍動感あるデザイン
■メインで試乗した純ガソリンのGTは必要十分なパワーとしなやかな足まわり
まるで生き物のような躍動感あふれる美しいスタイリング
プジョーから408という新たな街の遊撃手となりそうな個性派モデルが登場した。408はセダンの品の良い佇まいを醸し出す4ドアクーペのような、実用派に支持されるSUVのような、そんなクロスオーバーだ。個性が強いだけではないのがフランス車。実用を犠牲にはしていない。
モデルラインアップはGTとAllure(受注生産の純ガソリン車)があり、パワートレインは1.2リッター3気筒ターボの純ガソリン車のほか、GTは1.6リッター4気筒ターボにモーターを組み合わせるPHEVが選べる。今回はGTモデルをメインに試乗した。
プジョーには508というフラッグシップモデルが在り、408は407の後継として登場したのかと思ったら、この先の電動化も踏まえ、この大きすぎずコンパクトすぎない「4××」のクラスに投入された、これまでとはキャラクターの異なるまったく新しいモデルだという。407は2010年代前半に生産が終了しているから、空白の十数年間を経て、新しい時代にマッチしたさまざまなニーズをカバーする=遊撃手的なモデルを誕生させた、ともいえるかもしれない。
エクステリアデザインは精悍さのなかに凜とした美しさが感じられる。そんな印象をまず強く抱くのはフロントマスクだ。GTグレードのフレームレスグリルはボディカラーと同色の躍動感も特徴的なグリッドデザインで、質感も高い。左右の薄型マトリックスライトは涼しげに輝き、ライオンの牙をモチーフにしたLEDデイタイムランニングライトがダイナミックなフロントマスクを引き締めている。こんな風に紹介をしていると、フロントマスクが生き物のように表情が豊かに思えるほどだ。
ボンネットのシャープな抑揚もこの顔つきにピッタリ。また、低く伸びやかに傾斜するルーフラインが特徴的なボディサイドは、プレスラインはもちろん、ガラスエリアも陰影の表現の一部として計算されているのではないかと思うほど、眺め甲斐がある。
リヤには角度の浅めなライオンの爪LEDランプが配され、後ろ姿でもプジョーとわかる存在感を示している。その上の「ツン!」と突き出たリヤスポイラーは空力のための性能パーツであるのはもちろん、見た目にも有ると無いのでは格好良さ加減も変わってくる。
すると、「ホイールデザインはこうなりますか」、とダーク色で引き締められた足もとまで確認したくなった。408は細部までこだわりが感じられるデザイン性も魅力のモデルだろう。
街の遊撃手と言いたくなったのは個性的なデザインのみならず、新種のクロスオーバー車のボディサイズもある。全長4700mm×全幅1850mm×全高1500mmは、たとえばクラウンクロスオーバー(個人的にデザインに好感を抱く)の全長4930mm×全幅1840mm×全高1540mmよりも小ぶりであり、地上高を170mmと高めに取りながら、全高の1500mmが立体駐車場の利用も叶う高さとなっている。自宅はもちろん商業施設などの高さ制限のある駐車場を敬遠せざるを得ない人々にとって、408の登場は選択肢が拡がるのではないだろうか。
ただし、最小回転半径は5.6mなので決して小まわり性能に優れるとは言い難い。それでも、ボンネットの両端の上がり具合も含め、運転中のボディにはスクエア感も抱けることから扱いやすさは感じられた。
ブラックを基調としたインテリアは、デジタル化が進むプジョーのなかでも昨年発表された新型308と同様の小径ステアリングの上から見るデジタルヘッドアップインストゥルメントパネルを備え、そして中央にはコネクテッド機能を持つインフォテインメントシステム「i-Connect Advanced」を搭載。ちなみにハンドルの上から目の前の情報を見るi-Cockpitはプジョー独特ゆえ、ぜひドライビングポジションをセットして確認してみることをおすすめしたい。
インストゥルメントパネルは表示のカスタマイズが可能で、一般的な運転情報のほか、ナビやラジオ、PHEVはエネルギーフローなども選択できる。GTのメーターは3D表示が採用されていた。
ラインアップのメインとなるGTは、装備面ではフル装備モデルとなり、運転支援機能こそAllureと性能に差はないが、画像がクリアで見やすい360°ビジョンやシート&ステアリングヒーター(ほかにも色々あるけれど)などが標準装備となる。やはりGTを選びたくなってしまいそう。
ちなみに、受注生産のAlleure(ガソリン車のみ)は429万円、GT(ガソリン車)は499万円、GTのPHEVは629万円で、唯一サンルーフ付きが選べるファーストエディションはGT PHEVのみの設定で669万円(金額はすべて税込み)である。
個性的なだけじゃない実力も伴ったしなやかな走り
今回は1.2リッター3気筒ターボエンジンを搭載する純ガソリン車のGTをメインに、PHEVモデルも参考試乗をすることができた。
1.2リッターターボエンジン(132馬力/250Nm)+8速ATの試乗車は、担当編集者とカメラマンの男性たちを伴う3人乗りだった。地上高170mmを保つ「408の足もとはいかに?」と走り出すと、じつに滑らか。平坦な街なかでの加速は十分。8ATのシフトアップもスムースかつ速やかで一定速度での走行もしやすく、扱いやすさを感じることができた。
高速のランプウェイの登坂路の加速にも不満なし。走行中の再加速についても大人3人乗車ではややマイルドな盛り上がり方ではあったったものの、少しの不満も不安も抱くことはなかった。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リヤはトーションビーム式となり、19インチのミシュランe-PRIMACYタイヤを履く。コーナリングを走り慣れた高速のランプウェイで試したが、接地性に優れていて安定感も十二分。狙ったラインを腰のあるしなやかな印象とともに通過した。
特筆すべきは乗り心地の良さだ。まず立体形状でサポート性にも優れるフロントシートはもちろん、リヤシートは178cmの長身の男性の頭上、足もとにも十分なスペースが保たれ、座面の奥行きもしっかりとある。乗り心地を含むリヤシートの高い快適性も408の特徴と言えるだろう。
参考までに同業者に相乗り試乗させていただいたPHEVモデルは、1.6リッターターボエンジン(132馬力/250Nm)にモーターの駆動アシスト(81馬力/320Nm)もあるおかげで発進がさらに軽やかだった。車重はこちらのほうが300kg弱も重いが、実際のドライブではシャープな加速と軽快なドライブフィールという印象を強めてくれる。静粛性もより高く、車重がポジティブに働いてドッシリとした重厚感も動的性能に加わり、上質な印象だ。
ピュアなガソリンモデルでプジョーらしい腰のあるしなやかな走りを選ぶか、エレガント&スポーティな雰囲気で楽しむかは悩ましい。
しいて言えば、PHEVの燃費の17.1km/L(WLTC)は少々ものたりない。日本には国産メーカーの燃費に優れたHEVも多いし、さらにいえばルノーのHEVも20km/Lを上まわるからなおさらだ。1.2リッター3気筒ターボはWLTCで16.7km/L。走行シーン別でふたつのパワートレインを比べても、ガソリンの郊外モードが16.4km/Lに対しPHEVが18.3km/Lである以外はあまり差がない。
デザイン買いをするなら価格面で優るガソリンを選ぶのも賛成だけど、PHEVは補助金や税制優遇もある。自宅で充電(6kWチャージャーなら2時間半で満充電が可能)をしながら日常使いをすれば、最大66kmまでEV走行もできるから、使い方によってはPHEVも検討する価値があるのではないだろうか。静粛性や乗り心地などの快適性=上質感はやっぱりPHEVが勝る。
ちなみに燃費性能にも優れるディーゼルは、いよいよ本国でもラインアップされなくなってしまったそうだ。代わりと言ってはなんだけど、BEVモデルのe-408の登場があるらしい。
ボディカラーは4色。試乗車のエリクサー・レッドは日射しにパキッと照らされるとエネルギッシュ&スポーティな印象を抱く一方、曇り空の下でもボディの陰影が味わえてエレガントだった。
また、プジョーといえばブルーへのこだわりが強いが、この408には新色の「オブセッション・ブルー」が採用され、これがまた色の変化も美しく楽しめるブルーだった。陽の光や見る角度によってエメラルドグリーンに見えたのだけれど、説明によると直射日光では金色がかったブルーにも見えるらしい。
408GTはグリルまでボディカラーと同色でデザインされているので、ボディカラーの違いによる印象の変化もハンパない。さすが408の主力モデル=GTというわけでカラーバリエーションも4色が用意される。
フランス車のプジョー、走りもデザインもパッケージングもまさに街の遊撃手と言えそうでしょ。
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みんなのコメント
因みに街の遊撃手はISUZU ジェミニのキャッチコピーね
全幅1850で遊撃手は無いけど