既存モデルをすべて置き換えて登場
ロータス最後となる内燃エンジン・モデルも、大きな成功を掴むだろう。エリーゼとエキシージ、エヴォーラという、既存モデルをすべて置き換えて登場するのが、最新のエミーラだ。
【画像】新生 ロータス・エミーラ・プロトタイプ 競合するスポーツモデルと写真で比較 全139枚
これまでのロータスも素晴らしかった。だがエミーラには、それ以上が求められている。
英国東部、へセルの本社には、多額の費用を投じ最新鋭の生産ラインが用意された。複数のワークショップ間を、組み立て途中のエミーラを載せた台車が自律的に走るという。年間で、最大4500台の生産が可能になる。
エリーゼS2と並行してオペル・スピードスターを生産していた、20年ほど前のロータスでは、考えられない規模の生産能力といえる。間もなく到来する純EV時代に備えるべく、今後の開発資金を獲得するうえでも、新モデルの存在は極めて大きい。
難しいことは置いておいて、エミーラのステアリングホイールを握った筆者は、これまでのロータスに通じる馴染み深いものを感じた。この第一印象に、喜ぶ読者は多いはず。
1960年代にへセルへ拠点を移して以来、ロータスはジャーナリストを招待し、自社のテストコースで試乗会を開いてきた。今回、いつもの場所で試乗させていただいたエミーラは、試作車。完成した状態ではない。
ロータスのディレクター、ギャヴァン・カーショー氏も、強く念を押す。社内でVP2レベルと呼ばれるプロトタイプで、運転支援システムの開発に用いられている車両だという。
トヨタの3.5L V型6気筒スーチャーは継続
それでも、スタイリングやメカニズムは、2022年後半から納車が始まる量産車に近い。インテリアも、一部の表面素材や仕上げは確定していないようだが、造形的なデザインは終わっている様子。
シャシー・チューニングも、ほぼ完了した状態だろう。ただし、ドライブモードの「トラック」は無効で、走行中に警告灯が点灯するかも、と事前にカーショーは話していた。
このエミーラが搭載するエンジンは、エヴォーラからのキャリーオーバー。トヨタ由来の3.5L V型6気筒エンジンにスーパーチャージャーがドッキングされたもので、ここでは405psを発揮する。
トランスミッションは6速マニュアル。機械式のリミテッドスリップ・デフが組まれ、後輪を駆動する。
タイヤは、公道向けのグッドイヤー・イーグルF1を履き、ソフトなツーリング・サスペンションがボディを支える。オプションで、サーキット向きのミシュランのカップ2とスポーツ・サスペンションも選べるそうだ。
試乗日の天気は雨がちで、風も強かった。穏やかな足まわりは、適正だったといえる。
新しいエミーラは、これまでと明確に異なるロータスでもある。前CEOのフィル・ポパム氏は、次期モデルはポルシェ718ケイマンに対抗できる実用性と快適性、ドライビングマナーを備えたスポーツカーになると話していた。
遥かに実用的で製造品質も高い
強く期待させる発言だったが、ロータスとしては、というエクスキューズが付くのではと筆者は疑ったことも確かだ。だが、718ケイマンが属するカテゴリーの水準を、不満なく達成できていると思う。
まだプロトタイプながら、エミーラは遥かに実用的で使い勝手が良さそうだし、製造品質も高い。サイドシルはコンパクトで、乗り降りしやすく、ドライビングポジションも快適。フロントフェンダーの頂点が視界に入る前方の景色は、従来どおりだが。
内装トリムも、過去のロータスにはなかったほど豪華。あちこちへステッチが施されている。ステアリングホイールはアルカンターラ巻きで、スポーク部分にはコントロールパネルが内蔵されている。
ステアリングコラムは、同じグループにあるボルボ由来のようだ。だが、専用グラフィックが描かれるモニター式メーターパネルは、独自のアイテムのように見える。
エアコンの操作系には、実際に押せるハードボタンが残された。送風位置を変えるボタンに印された、ヘルメットをかぶったアイコンが可愛い。
今回、筆者がヘセルのテストコースで運転を許されたのは、45分。エミーラは、エヴォーラより大人なクルマに感じられた。同時に冒頭で触れたとおり、動的能力の部分では馴染みのある部分も多かった。扱いやすさも受け継がれている。
もちろん、スーパーチャージド・エンジンはキャリーオーバーだから、明らかに印象は近似している。メルセデスAMG由来の4気筒ターボが搭載されるエミーラも登場予定だが、トヨタ製の3.5L V6ユニットは、以前からロータスの心臓になってきた。
この続きは後編にて。
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