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新型「86/BRZ」の開発をあえて公表? トヨタ・スバル新たな提携の真相とは

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新型「86/BRZ」の開発をあえて公表? トヨタ・スバル新たな提携の真相とは

■トヨタとスバルの長期提携で新型「86/BRZ」はどうなる?

 トヨタとスバルは、両社の長期的提携関係のさらなる発展・強化を目指し、2019年9月27日に新たな業務資本提携に合意したと発表しました。

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 自動車業界に大きな変化が訪れているなか、両社は「絆を更に強め、力合わせる必要がある」と考え、新たな業務資本提携に合意しましたが、どのような変化があるのでしょうか。

 2005年にトヨタとスバルが業務提携を結んでから、スバル米国工場(SIA)でのトヨタ「カムリ」受託生産(2016年5月まで)やトヨタからスバルへの車両供給(デックス/トレジア/ジャスティなど)、さらに「86/BRZ」の共同開発と協業に取り組んできています。

 資本提携の内容は、トヨタがスバルの決議権比率20%に達する株式数を取得したことで、スバルはトヨタの関連会社となります。

 そのなかでも、注目されるのが「トヨタ86/スバルBRZ 次期モデル共同開発」です。

 現行モデルは2012年に登場。車両企画/デザインはトヨタが担当、開発/生産はスバルが担当と、両社が持つ技術と情熱を惜しみなく注ぎFRレイアウトを採用したライトウェイトスポーツカーです。

 数値よりも官能性、速さよりも気持ちよさを追求し、基本性能を徹底的に鍛え上げた86/BRZは、日本はもちろん世界でも受け入れられました。

 また、「スポーツカーは育てていく必要がある」という考えから、毎年進化・熟成がおこなわれてきましたが、登場から7年が経過していたこともあり、次期モデルの噂も出ているタイミングでした。

 巷では「トヨタとスバルの仲が悪い」という噂話が生まれ、「次期モデルは存在しない?」、「次期モデルは各々で開発」という情報が流れたこともありましたが、今回の発表でホッとした人も多いでしょう。

 次期モデルの検討は2016年から2017年頃から水面下でスタートしていたといいます。では、次期モデルはどのようなモデルになるのでしょうか。

 プラットフォームは現行モデルを踏襲するようですが、サスペンション周りは一新されるようです。ある関係者は「現行モデルにSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)のアイテムを組み合わせたテストカーに乗ったら、コーナリング性能の高さに驚いた」と語っています。

 パワートレインは、年々厳しくなる環境対応と性能を両立させるために、現行モデルとは違うユニットになる可能性が高いです。

 予想としては、北米向けSUV「アセント」に搭載される2.4リッター自然吸気エンジンか、スバルの次世代ダウンサイジングターボシリーズのひとつといわれる1.8リッターターボエンジンなのかもしれません。

 スバルの関係者は「プロジェクトはスタートしたばかりですが、じつはそこに関してはあまり心配していません。BRZはFR駆動でもシッカリスバルの味になっていました。ただ、いままでよりも両社の血が色濃く混ざるので、より面白い物に仕上がるのではないかと思っています」と語っています。

 現行モデルの開発秘話では、最後の最後に86/BRZで走りの味付けを分けたことが話題となりましたが、次期モデルは、「トヨタ・スープラ/BMW・Z4」の開発で培ったノウハウや知見を応用することで、その差はより大きくなるのではないかと予想しています。

 86にはよりトヨタらしさを、BRZにはよりスバルらしさが盛り込まれていることを期待したいところです。

■トヨタとスバルの新しいAWDモデルとは

 トヨタとの関連会社になることで「スバルらしさが薄れるのでは?」という心配をする人もいますが、恐らくそんなスバルになることをトヨタが望んでいないことは、業務提携の内容を見ると一目瞭然です。

 その内容は「もっといいクルマづくりの追求」と「協業拡大」の2点ですが、筆者(山本シンヤ)がこれまで取材してきたことを元に、もう少し具体的に解説したいと思います。

 まず、「もっといいクルマづくりの追求」の具体例のひとつめは、「両社の強みを持ち寄り、最高に気持ちのいいAWDモデルを共同で開発」です。

 スバルは長年AWDにこだわり研究・開発をおこなってきました。とくに1989年に登場した初代「レガシィ」の登場以降、「AWDは曲がらない」という定説を覆し、AWDは悪路走破性だけでなくオンロードでの高速走行にも役立つことを証明しました。

 スバルのAWDは、用途に合わせて4つのシステムが用意されていますが、どれも基本的には機械的なシステムになり、電子制御に頼らず基本素性の良さ(水平対向エンジン+シンメトリカルAWD)とこれまでの実績を活かした走りの良さは納得ですが、新技術の積極的な活用は少なめで、どちらかいうと保守的なのも事実です。

 一方、トヨタもさまざまなモデルにAWDは設定されていますが、「ランドクルーザー」などに代表される道なき道を走るヘビーデューティユースや乗用車でも雪道用といった実用向けが主で、スバルのようなオンロードの高速走行向けは「セリカGT-FOUR/カルディナGT-FOUR」(共に現在は生産終了)くらいです。

 トヨタの豊田社長は、先代「スープラ(80系)」で運転訓練をおこなっていたことは有名ですが、じつはAWDの運転訓練は「インプレッサWRX STI」でおこなっていました。豊田社長は「ラリーの練習に励んでいた経験から、スバルの素晴らしいAWD技術を肌で感じてきました」と語っていますが、その裏を返すと「セリカGT-FOURでは通用しない」と感じていたのかもしれません。

 そういう意味では、失うモノがないトヨタのAWD技術は攻めの姿勢です。WRCで培った技術を直接的にフィードバックさせた量産車(次期ヤリスGR ?)が控えているのに加え、すでに発売中の新型「RAV4」は前後トルク配分に加えて後輪トルクを左右独立で制御する「ダイナミックトルクベクタリングAWD」や最新のハイブリッド技術を応用してハンドリング性能を高めた新型E-Fourを採用し、SUVながらオンロード性能も重視したモノになっています。

 気になるのは「最高に気持ちいいAWDモデルを共同で開発」の意味です。一見、86/BRZのような兄弟車を作るように思えますが、筆者は「共同開発」ではなく「共同で開発」と記されているところに注目しました。

 恐らく、出てくる商品は全くの別の物になると思いますが、各々のモデルを開発する際に「トヨタ/スバルの垣根を越えておこなう」という意味に解釈しています。つまり、トヨタのAWDにスバルの知見やノウハウを投入、逆もしかりといえます。

■ハイブリッドシステムがカギとなる協業拡大

 一方、「協業拡大」についてですが、その具体例ひとつめは「THS(トヨタハイブリッドシステム)の搭載拡大」です。

 スバルの水平対向エンジンは、長年の進化により燃費改善がおこなわれていますが、年々厳しさを増す規制をクリアするためには電動化がマストといわれています。スバルは独自開発したe-BOXER(1モーター)を展開していますが、それだけでは限界があったのも事実です。

 すでに北米de
は「クロストレック・ハイブリッド(日本名:XV)」にトヨタから供給されるTHS(2モーターのストロングハイブリッド)をベースにしたプラグインハイブリッドモデルが発売されています。

 このモデルは元々ZEV規制対応用に開発され月産300台というレアモデルでしたが、今回の発表で一転してスバルの電動化のメインストリームを担うことになるのです。すでにモノは存在していますので、日本でもそう遠くないタイミングで発売されるでしょう。

 実際に乗った人によれば、「補助的なアシストのe-BOXERに対し、力強さとスムーズさはこれまでのスバル車にはない感覚」だそうです。また、走りに関しても“スバルらしさ”は損なわれていないようです。

 電動化といえば、今回の業務資本提携発表の3か月前の2019年6月にスバルのAWD技術とトヨタの電動化技術を活用した「EV専用プラットフォーム」および「EV車両開発」にも取り組むことを発表しています。

 スバルの吉永前社長はかつて「スバルらしさは水平対向エンジン、シンメトリカルAWDだと思われることが当社にとって一番マズイ」といっていましたが、結局はこのふたつに引きずられています。

 しかし、この共同開発EVにはどちらも採用されていません。つまり、「スバルらしさ」をどのように表現するかが気になるところです。

 もうひとつは「コネクテッド領域での協調、自動運転分野での技術連携」です。

 トヨタは、「クラウン」や「カローラスポーツ」を皮切りに「コネクテッド事業」を本格スタートし採用車種を拡大しています。

 一方、スバルは北米で「スターリンク」と呼ばれるコネクテッドサービスを展開しており、日本に導入予定といわれていますが、これらを密接に連携させていくと思われます。過去にスバルは、トヨタのG-BOOKを採用するも途中でやめてしまったことがあります。

 運転支援システムに関しては、現時点でトヨタセーフティセンスよりもスバルのアイサイトに一日の長があると感じていますが、その先(=自動運転)となると全方位で開発をおこなうトヨタの強みが光り、運転支援システムではトヨタ/スバルは全く連携がなかったと聞きますが、今後は密接な関係になるのでしょうか。

 このように、両ブランドの独自性を尊重しながら次のステージに向けて結びつきを強化した今回の業務資本提携。これにより両社共に「もっといいクルマづくり」を「継続的」に行える土台作りできたといってもいいかもしれません。

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