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“軽”では得られない魅力とは?──新型ジムニーシエラ公道試乗記

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“軽”では得られない魅力とは?──新型ジムニーシエラ公道試乗記

2018年7月に、軽規格の「ジムニー」とともにフルモデルチェンジを受けた「ジムニーシエラ」は、新開発の1.5リッター直列4気筒エンジンが大きな特徴だ。

ジムニーシエラ(以下シエラ)は1993年に発売されたのち、いったん名前はなくなったが、2002年にジムニーワイドから、再びシエラに戻された経緯を持つ。海外で「ジムニー」というとこのモデルを指すことが多い。

これは最強の実用車か、男のオモチャか──新型ジムニー公道試乗記

街中で使うには軽規格のジムニーより、こちらのほうが一般にはいいかもしれない。オフロードの走行性能などは、2車ほぼ同一だが、よりパワフルなのが特徴だ。

シエラのボディサイズは全長3550mm、全幅1645mm、全高1730mm、ホイールベース2250mmと、軽規格のジムニーに対してそれぞれ155mm、170mm、5mm大きくなっている。ホイールベースは不変だ。

ほかのクロカン型ヨンクと比較して圧倒的にコンパクト(たとえばトヨタ ランドクルーザーは全長4950mm、ホイールベース2850mm)な点が、世界中でシエラを選ぶ理由になっているという。

「シエラが使われる(“乗られる”ではないところに注目)のは、熱帯の森林や雪山の道なき道ということも少なくないです」。開発を指揮したスズキの米澤宏之チーフエンジニアは言う。

ボディサイズが大きかったりホイールベースが長かったりしては、切り返しで苦労したりすることもある。シエラがいたずらに大型化しないのは、悪路での取り回し性を重視した結果でもある。

基本デザインは軽のジムニーと同じだ。同じタイミングで開催された試乗会の会場では、ナンバープレートが黄色なのがジムニーで、白色はシエラと肝に銘じていないと、わからなくなるほどだった。

なにしろ剛性が先代より50パーセント向上したというラダーフレームのシャシーも共用だ。外観上の大きな識別点は、合成樹脂性のオーバーフェンダーぐらいだ。

同じようなクルマが2台あるのも不思議だが、日本の山間部などでは、シエラよりさらにコンパクトな軽規格ボディがありがたがられるだろうし(実際、ジムニーのほうがアプローチアングルなどはより深い)、軽と普通乗用車では税金も大きく変わるので、少なくとも国内マーケットでは2車の棲み分けは出来るだろう。

実際にシエラを試乗した印象をひとことでいうと、ジムニーよりゆったりしている。重量もジムニーより50kg重い1090kgということもあるのか、乗り心地はより重厚だ。

ジムニーはボディマウントに使うブッシュ類の特性を見なおし、縦方向の揺れをなるべく吸収しようとしている。シエラでも同様の印象でラダーフレームを持ったクロカン型4WD車としては異例なほど快適に座っていられる。

1.5リッターの余裕は大きい

走りはシエラのほうが優位だ。

トルクがジムニーの96Nm@3500rpmに対してシエラは130Nm@4000rpm。したがって低速域での使い勝手もいい。ここが優位点である。

アクセルペダルの踏み込み量に対しての力の出方も、よりナチュラルで運転しやすい。ことオフロード車ではトルクにまさる性能はない、ということをあらためて感じさせる。

性能については、しかしながら、ほかにも書くべきことがいろいろある。

サスペンションの動きがより自由になり、かつ車輪の接地性が高まるラダーフレームにこだわっていること。もうひとつのこだわりは、確実に操作できる昔ながらのレバー式副変速機のセレクターの採用だ。

くわえて、機械式ディファレンシャルギアの代わりに「ブレーキLSDトラクションコントロール」によって空転した車輪にブレーキをかけ、接地している車輪にトルクをしっかり配分する電子制御機構も搭載した。シエラでオフロードを走る機会はなかったが、ジムニーの経験からすると、かなり使えるシステムだと思う。

シエラは、クロカンヨンクとしての基本性能もしっかり持っているのだ。

ぼくが乗ったのは4段オートマチック変速機搭載車だった。苛酷な道を行くときはマニュアルよりもオートマチックがいい、とはかつてランドローバーの開発者から聞いたことだ。

となると、乗るならオンロードでも安逸なオートマチックがごく自然な選択といえるかもしれない。

ドライブトレーンは発進加速がよく、ごく低回転域でトルクがたっぷり出る。このへんもオフロードではありがたいだろう。

オンロードではただし加速していくと、途中でトルクが落ち込む場面がある。時速でいうと50kmあたりの実用域で、もう少し力が出ればと思わせられるのだ。

ごく低回転域では書いたようにトルクがしっかり出るし、いっぽうオンロードでいちど高速走行に移ってしまえば問題を感じることもないはずだ。

今度は、より広範囲の回転域に対応するツインスクロール式のターボチャージャーの採用なども、市街地での走行を考えたら、検討する課題にあがるかもしれない。

今回車体外板色に「インビジブルカラー」(つまり背景に溶け込む色)として「ジャングルグリーン」が設定されているのは興味ぶかい。

スズキの開発者によると、ドイツをはじめ欧州ではハンターにもシエラは愛用されているのだとか。森のなかに隠れる性能も大事なのだ。

というわけで、使ってナンボのクルマである。それゆえ趣味性が高い。汚れていたりヘコんでいたりしても、それが勲章になる。

スポーツカーとシエラが車庫にあれば、まさに男ウケしそうなライフスタイルだ。ふたつの共通点は生活を楽しくしてくれることなのである。

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