2024年FIA F2第9戦ブダペストのフィーチャーレースで7レースぶりの入賞を果たした宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)は、レースウイーク明けに行われた取材会で「路面の見た目は綺麗でしたが意外とバンプが多く、コーナーによってはグリップするところ、しないところもあり少し特殊でした」と、ハンガロリンクの印象を話した。
「レイアウト的には右、左と続くかたちでしたので、いかに一周でリズムを掴み、走り切るかが難しいポイントでした。日本のサーキットでたとえれば鈴鹿サーキットに似ている感覚です。ただ、バンピーな路面でブレーキロックもしやすいという点では、ここもまた日本にはないようなコースだったなという印象ですね」
【宮田莉朋F2密着】オーバーテイクショー炸裂。7レースぶりの入賞の価値と自信/第9戦レビュー後編
そんな特殊かつ、抜けないハンガロリンク攻略の鍵となった部分について、宮田は「ハンガロリンクの縁石は特徴的でした」と話す。
「他のコースだと赤と白の縁石の外側はギャップ(高さや幅)の大きい縁石があります。そのギャップの大きい縁石に乗ると車体が亀の子状態になったり、タイヤのグリップを失いやすかったりします」
「ただ、ハンガロリンクの場合は赤と白の縁石の外側はコンクリートの比較的フラットな舗装で、赤と白の縁石で滑ったタイヤを止めてくれるようなものになっています。そのためみんな、コーナーの出口でもそこに狙いを定めて、コンクリートの部分をしっかりと“使って”いたりしました」
わかりやすいのはターン5だ。なお、ターン5のコンクリート舗装のさらに外側には、幅の広く縦に長い人工芝があり、F1の予選Q3ではこの人工芝が引き金となって角田裕毅(RB)がクラッシュすることになった。
「コンクリート舗装の部分を使えると、そこでグリップが生まれるのはハンガロリンクの特徴です。そこを使うことができれば、タイヤのデグラデーション(性能劣化)が厳しくなっても助けてくれると、スプリントレースの際に気づくことができました」と、宮田。
そうして迎えたフィーチャーレースで18番手スタートの宮田は、2度目のセーフティカー(SC)導入時にフレッシュなオプションタイヤ(ソフト/レッド)に履き替え14番手でコースに復帰すると、プライムタイヤ勢(ハード/ホワイト)を6台かわすオーバーテイクショーを演じ、8位でチェッカーとなった。
ただ、国際映像ではそのオーバーテイクショーの模様が映らなかったこともあり、改めて宮田にオプションタイヤへ履き替えた後の様子を聞いた。
「ちょうど前に同じくオプションタイヤを履いたクッシュ・マイニ選手(インビクタ・レーシング/アルピーヌ育成)がいて、彼が抜いた車両をその次の周のターン1で抜くという感じで、1台づつかわしていく感じでした。場合によってはマイニ選手がターン1で抜いた車両を自分がターン2でかわすこともありました」
ターン1とターン2で着々と順位をあげた宮田は7レースぶりの入賞を果たした。ただ、宮田は嬉しそうな表情を見せることもなく「彼(マイニ)が抜いた車両を、全部同じ周回中に抜いていたら(さらにポジションを上げることができたかもしれない)、という思いはレース後に抱きました」と、自身の走りを振り返っていた。
FIA F2も残るは5戦10レースとなった。7月26~28日に開催されるFIA F2第10戦の舞台は、5月に宮田がスポット参戦したWEC世界耐久選手権第3戦の舞台でもあったベルギーのスパ・フランコルシャンとなる。アコーディスASPチームのレクサスRC F GT3で6時間レースを戦った宮田は10位でチェッカーを受け、選手権ポイントも獲得した。
「WECで走ったスパですが、GT3のようなハコ車とFIA F2のようなフォーミュラでは乗って見える景色もまったく異なります。そのため、GT3での経験がフルに役立つかは、走ってみなければわかりません」と、宮田。
「GT3での経験が役立ったとしても楽な戦いになるとは思っていません。依然として初めてのコースに挑むという感覚で臨むことになるでしょう。とはいえ、一度は実戦を経験した場所です。楽観視はしていませんが、落ち着いてレースに臨めるとは思います」
また、7月26~28日のスパはフリー走行と予選が行われる金曜日、スプリントレースが行われる土曜日に降雨の予報が出ている。なかでも土曜日の日中は降水確率が70~80パーセントと高めであり、スパ・ウェザーがレースの勝敗に影響を与える可能性も出てきている。
「スパは天候が変わりやすいコースです。その天候の変化にもチームとともに臨機応変に対応して、いい週末になるように頑張るだけかなと思っています」と、宮田。
1年前、2023年のFIA F2第11戦スパの予選では、セッション時間の経過とともに雨脚が強まりを見せ、ほぼアタック順で予選順位が決したことも記憶に新しい。今年もスパ・ウエザーが翻弄する一戦となれば、タイトル争いにも影響の出るレベルの番狂わせが起きても不思議ではない。
難コースと不確定な天候のなかで、全日本スーパーフォーミュラ選手権とスーパーGT GT500クラスのダブルチャンピオンがどのような戦いを見せるのか。次戦のFIA F2も見逃せない一戦となりそうだ。
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