現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 小林可夢偉が授けた“1杯のビール”。SF初テストで好走の元チームメイト「誰だってハッピーになる必要がある」

ここから本文です

小林可夢偉が授けた“1杯のビール”。SF初テストで好走の元チームメイト「誰だってハッピーになる必要がある」

掲載
小林可夢偉が授けた“1杯のビール”。SF初テストで好走の元チームメイト「誰だってハッピーになる必要がある」

 12月6~8日に行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同/ルーキーテスト。最終日は決勝出走が4戦未満の“ルーキー”のみが参加を許され、12名が鈴鹿サーキットを走行した。この日が初めての走行機会となるドライバーも多くいるなか、安定したスピードを見せ、最終セッションではトップタイムを奪ったのが、VANTELIN TEAM TOM’Sから参加したベン・バーニコートだった。

 セッション終了直後にピットを覗くと、エンジニアとのミーティングの後、自らの名前が最上段に記されたタイミングモニターを嬉しそうに撮影するバーニコートの姿があった。

「良い意味で“クレイジー”」「F1に近いクルマ」「岩佐との差を感じた」【SF Mix Voices ルーキーテスト】

 1996年生まれ、イギリス出身のバーニコートは2016年にヨーロッパF3へと参戦。同時にGTレースでも活動を開始し、2022年からはIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDプロクラスでバッサー・サリバンのレクサスRC F GT3をドライブしている。

 2年目となる2023年には、ジャック・ホークスワースとともにタイトルを獲得。同時にヨーロピアン・ル・マン・シリーズの一部イベントにはAFコルセからLMP2プロ/アマクラスに参戦し、プロトタイプカーでも経験を積んでいる。

 さらにバーニコートは11月、WEC世界耐久選手権のルーキーテストに参加。ホークスワースとともに、トヨタGR010ハイブリッドをドライブする機会が与えられていた。

 2022年からトヨタ=レクサスファミリーの一員であるバーニコートのスーパーフォーミュラテスト起用は、2023年のIMSAタイトルを獲得していることなどを考えても不思議ではない。

 バーニコートはさらに、WECチーム代表兼ドライバーを務める小林可夢偉ともつながりがある。2022年7月、ホークスワースの怪我により可夢偉がIMSAのモスポート戦に代役出場したが、このときチームメイトとなったのがバーニコートだった。

 そんな過去を考えると、今回のSFテスト起用にも一役買っているのでは……と思い2日目の昼に可夢偉に聞くと「いや、全然知らなかったです。僕も国内では“ドライバー”なので、逆に隠されてましたね」と語る。

「でもベンって、(ジョージ・)ラッセルとかと近い世代なんですよね? だから(スーパーフォーミュラに)乗っても全然おかしくないんじゃないかと。今回はまだ会ってないです。写真で見て『あ、いるんだ』と」

 そして可夢偉は昨年のモスポート戦について、バーニコートとのエピソードを教えてくれた。

 このとき、走行初日のプラクティスでバーニコートがクラッシュ。可夢偉にしてみれば、未知のサーキットと初めてのクルマにも関わらず、レギュラードライバーのクラッシュにより走行時間が削られるという痺れる状況となってしまったのだが、そこは百戦錬磨のベテラン。かける言葉が違う。

「彼、すごい落ち込んでいたんです。真面目に『どうしよう……』って。だから『落ち込んでるときは、ビールを飲んで早く寝ろ』って言いました。そしたら、本当に飲んでましたね」と可夢偉。

「ビール1杯では酔っ払わないですから。それで気持ち良くなって、リラックスして、次の日に備えろ、って意味なんです。そしたら、次のレースからもそうしているみたいで、たまに(ビールの)写真送ってくるんですよ(笑)。『まだやってるか?』って、聞いておいてください」

■TGRとのつながりは「ますます強まっている」

 というわけで、この話をテスト3日目の走行を終えたバーニコートに向けてみると、セッショントップタイムで浮かんでいた笑顔が、さらに緩んだ。

「可夢偉と一緒にレースをすることができたのは、素晴らしい体験だった。あのときはジャックの怪我があってチームがすごく悲しい状況だったけど、そこで可夢偉がものすごくいい仕事をしてくれたんだ」とバーニコート。

「彼はそれまでRC F GT3をドライブしたことがなかったのに、最初からとても速かった。でも僕がクラッシュしてしまったことで、難しいレースウイークにしてしまったね。しかも可夢偉はトヨタファミリーの中でも重要な立場にいる人物だというのに、その目の前でクラッシュしてしまったのは少々バツが悪かった」

「ちょうどクラッシュする前夜、僕らは一緒にディナーを食べたのだけど、そこでは僕ひとりだけがビールを飲まなかったんだ。そして、次の日にクラッシュ。そこで可夢偉から教えられたんだよ。それ以来、チームのみんながビールを飲むときは、僕も飲むようにしている」

「彼から教わったのは、こういうことだ。ハイレベルなプロフェッショナル・レースの世界では『すべてを完璧にこなす必要がある』と考えてしまいがちだ。だけど、一日の終わりには、誰だってハッピーになる必要がある。ハッピーになるために、1杯のビールを飲めばいい、ってね」

 なお、バーニコートによれば、今回のスーパーフォーミュラのテスト参加は、11月上旬のWECのルーキーテストよりも前に決まっていたとのこと。

「僕はここ2年、アメリカでのレクサス・レーシングのドライバーだし、新しいGT3車両の開発にも関わっていることで、日本のトヨタGAZOO Racingとのつながりはますます強いものになっているんだ。だからテストについても今シーズンのある時点から話し合ってきた。彼らは『スーパーフォーミュラやスーパーGTに興味はあるか』と聞いてきたから、『もちろん』と返事をしたんだ」

「そして僕らがIMSAでタイトルを獲った後、彼らは僕をスーパーフォーミュラとWECのテストメンバーに選んでくれたんだ。だからこの1カ月は本当に素晴らしい経験になったよ」

 2024年はIMSAでのタイトル防衛に集中するというバーニコートだが、近い将来にはGTの世界でも、スポーツカーやフォーミュラの世界でも、ステップアップできる環境は整っていると言える。この顔を覚えておいて、損はないだろう。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「最悪の出来事だ……」ヒョンデ、タイトル王手ヌービル苦しめたWRCラリージャパンでのトラブルを謝罪。ターボ関連の疑い
「最悪の出来事だ……」ヒョンデ、タイトル王手ヌービル苦しめたWRCラリージャパンでのトラブルを謝罪。ターボ関連の疑い
motorsport.com 日本版
「すごい衝突事故…」 東富士五湖道路が一時「上下線通行止め!」 ミニバンが「横向き」で“全車線”ふさぐ… 富士吉田で国道も渋滞発生中
「すごい衝突事故…」 東富士五湖道路が一時「上下線通行止め!」 ミニバンが「横向き」で“全車線”ふさぐ… 富士吉田で国道も渋滞発生中
くるまのニュース
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
レスポンス
「アルピーヌA110RGT」が初のヨーロッパラウンド以外となるラリージャパン2024に参戦!
「アルピーヌA110RGT」が初のヨーロッパラウンド以外となるラリージャパン2024に参戦!
LE VOLANT CARSMEET WEB
バイクニュース今週のダイジェスト(11/18~22)
バイクニュース今週のダイジェスト(11/18~22)
バイクブロス
超クラシック! ホンダが新型「ロードスポーツ」発表で反響多数! ロー&ワイドの「旧車デザイン」に「スタイル最高」の声! 女性にも人気らしい新型「GB350 C」が話題に
超クラシック! ホンダが新型「ロードスポーツ」発表で反響多数! ロー&ワイドの「旧車デザイン」に「スタイル最高」の声! 女性にも人気らしい新型「GB350 C」が話題に
くるまのニュース
上質な乗り心地が最高! 軽二輪クラスのスクーター5選
上質な乗り心地が最高! 軽二輪クラスのスクーター5選
バイクのニュース
タイヤに記された「謎の印」の意味とは? 気になる「赤と黄色マーク」の“重要な役割”ってなに? 気づけば消えるけど問題ないのか?
タイヤに記された「謎の印」の意味とは? 気になる「赤と黄色マーク」の“重要な役割”ってなに? 気づけば消えるけど問題ないのか?
くるまのニュース
メルセデス・ベンツの新世代4名乗りオープンカーのCLEカブリオレに高性能バージョンの「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」を設定
メルセデス・ベンツの新世代4名乗りオープンカーのCLEカブリオレに高性能バージョンの「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」を設定
カー・アンド・ドライバー
アキュラIMSA車両ドライブしたフェルスタッペン、デイトナ24時間は出ないの?「出るには十分な準備をしたいけど、今は不可能だ」
アキュラIMSA車両ドライブしたフェルスタッペン、デイトナ24時間は出ないの?「出るには十分な準備をしたいけど、今は不可能だ」
motorsport.com 日本版
約183万円! 三菱「新型“5ドア”軽SUV」発表に反響多数! 「走りがいい」「好き」の声!半丸目もカッコイイ「ミニ」が話題に
約183万円! 三菱「新型“5ドア”軽SUV」発表に反響多数! 「走りがいい」「好き」の声!半丸目もカッコイイ「ミニ」が話題に
くるまのニュース
新車99万円! ダイハツ「“最安”ワゴン」どんな人が買う? イチバン安い「国産乗用車」は装備が十分! 超お手頃な「ミライース」支持するユーザー層とは
新車99万円! ダイハツ「“最安”ワゴン」どんな人が買う? イチバン安い「国産乗用車」は装備が十分! 超お手頃な「ミライース」支持するユーザー層とは
くるまのニュース
2025年は赤・黄・黒の3色 スズキ「V-STROM 250SX」2025年モデル発売
2025年は赤・黄・黒の3色 スズキ「V-STROM 250SX」2025年モデル発売
バイクのニュース
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
レスポンス
KTM1390スーパーデュークGT発表!カテゴリーで最も過激なスポーツツアラーを標榜するGTが1390系エンジンでバージョンアップ
KTM1390スーパーデュークGT発表!カテゴリーで最も過激なスポーツツアラーを標榜するGTが1390系エンジンでバージョンアップ
モーサイ
新しい2.2Lディーゼルエンジンと8速ATを搭載したいすゞ「D-MAX」および「MU-X」がタイでデビュー
新しい2.2Lディーゼルエンジンと8速ATを搭載したいすゞ「D-MAX」および「MU-X」がタイでデビュー
カー・アンド・ドライバー
新型「メルセデスCLA」のプロトタイプに試乗!次世代のメルセデス製電気自動車の実力やいかに?
新型「メルセデスCLA」のプロトタイプに試乗!次世代のメルセデス製電気自動車の実力やいかに?
AutoBild Japan
紀伊半島の「最南端」に大変化!? 無料の高速「串本太地道路」工事進行中! 関西エリアの交通を一変する「巨大ネットワーク計画」とは
紀伊半島の「最南端」に大変化!? 無料の高速「串本太地道路」工事進行中! 関西エリアの交通を一変する「巨大ネットワーク計画」とは
くるまのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村