三菱にとって国内では2014年2月発売の「eKスペース」以来4年ぶりとなる新型車として発売された小型クロスオーバーSUV「エクリプスクロス」を、郊外の一般道および高速道路を中心に約400km試乗。ダウンサイジングターボエンジンを搭載する直接のライバル、トヨタC-HRターボおよびスズキ・エスクード1.4ターボと比較する。
まずはボディサイズを比べると、
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三菱エクリプスクロスGプラスパッケージ(4WD) 全長×全幅×全高:4405×1805×1685mm ホイールベース:2670mm トレッド前/後:1545/1545mm 最低地上高:175mm
トヨタC-HR G-T(4WD) 全長×全幅×全高:4360×1795×1565mm ホイールベース:2640mm トレッド前/後:1540/1540mm 最低地上高:155mm
スズキ・エスクード1.4ターボ(4WD) 全長×全幅×全高:4175×1775×1610mm ホイールベース:2500mm トレッド前/後:1535/1505mm 最低地上高:185mm
エクリプスクロスが最低地上高を除くすべてにおいて最も大柄である一方、エスクードが見た目から受ける印象よりも遥かに小柄なことが分かる。
そのためエクリプスクロスは、三菱車らしいガンダムルックを先鋭化させた攻撃的なクーペスタイルから想像するより室内は狭くなく、身長176cm・座高90cmの筆者が後席に座っても辛うじて後頭部がルーフに当たらない程度のヘッドクリアランスは確保されている。
後方視界への配慮も行き届いている。車両後端に向かって斜め下への落とし込みが大きいバックドアには上下分割式ウィンドウが採用されるとともに、Cピラーは過度に太くなっておらず、リヤドアウィンドウも後方まで伸びた形状となっているため、車庫入れや縦列駐車も苦にならない。
前方視界も、インパネを水平基調にし、ボンネットを運転席から見やすい形状とし、ドアミラーもドアパネル直付けにするなど、細部まで工夫に富んでいるが、一刻も早く改善してほしい点が1つある。それは、ドライバーの目に近いインパネ上部に、ピアノブラックやシルバーの加飾パネルが上を向いた状態で装着されていることだ。
晴天時はそれらのツヤが太陽光を強烈に反射するため非常に眩しく、視界を遮り集中力を削ぐ大きな要因になる。安全性に直結する問題だけど、最低でもピアノブラックのツヤをもっと抑えてほしい。
C-HRとエスクードのパッケージングについては下記の記事に詳しいが、エスクードはスクエアなボディ形状を活かして小柄ながら視界・室内空間とも広く、C-HRはそのアグレッシブな外観と低い全高の通りに視界も室内空間も狭い。
後席をすべて使用した状態の荷室容量も、エクリプスクロスが341L、C-HRは312Lなのに対しエスクードは375Lと、より大柄な2台を大きく上回っている。
だが、見た目の質感とデザイン性の高さに対する機能性の両立、という面では一昔前のチューニングカーのようなエスクードと、「無難」の一言に尽きるエクリプスクロスを、C-HRが遥かに凌いでいる。この一点を決め手としてC-HRを選ぶユーザーがいたとしても何ら不思議には思わないほど、その差は圧倒的だ。
3台のメカニズムの違いは? そして実際の走りは?
そして走りのメカニズムも、3台とも似ているようで大きな違いが見られる。まずエンジンは、
というように、排気量とパワー・トルクの大きさがほぼ比例している。だが実際の加速は、エクリプスクロスとC-HRが緩慢なものに終始し、エスクードは対照的にホットハッチのような活発さを見せてくれる。
これは、エクリプスクロスとC-HRのトランスミッションがCVTでエスクードは6速ATとなるうえ、車重がエクリプスクロスは1550kg、C-HRは1470kgと重く、エスクードは1220kgと圧倒的に軽いことが大きな要因に挙げられるだろう。
しかもエクリプスクロスとC-HRは、加速の悪さにしびれを切らしてアクセルを3割以上踏み込むと、CVTがすぐさまローギヤに制御されエンジン回転が3000rpm以上に上昇し、さらにステップ変速を始めてしまう。そのため必然的に、オンオフスイッチのようなアクセル操作と加速を常に強いられる。
これでは一体、何のためのダウンサイジングターボとCVTなのか。車重に対し絶対的な排気量が不足しているのは明らかである。そして、低回転域のターボラグを減らしNAエンジンのような扱いやすさと燃費を得るための技術も、ほとんど意味のないものにしてしまっている。
シャシーに目を移すと、サスペンションはフロントが全車ストラットで、リヤはエクリプスクロスがマルチリンク、C-HRがダブルウィッシュボーン、エスクードがトーションビームとなっている。
なおタイヤは、エクリプスクロスが225/55R18 98Hのトーヨー・プロクセスR44、C-HRが225/50R18 95Vのミシュラン・プライマシー3、エスクードが215/55R17 94Vのコンチネンタル・コンチエココンタクト5を履いていた。
だが、こうしたシャシー側の素性よりも、軽量・低重心・高剛性な最新のプラットフォームを採用していることの方が、遥かに走りへの影響は大きいのだろう。それに該当するC-HRとエスクードが、軽快かつリニアなハンドリングと、量・スピードとも抑えられたロール特性、そして路面の凹凸をキレイにいなし、車体をフラットに保ちながら乗員には不快な振動や突き上げを伝えない、上質な乗り味を実現していた。
対するエクリプスクロスは、ステアリング切り始めの反応こそ良いものの、舵角を増していくと急激にロールが深まるとともに、強いアンダーステアに見舞われる。
エクリプスクロスはRVRおよびアウトランダーとプラットフォームを共用しており、さらにそのルーツは2007年発売のギャランフォルティスまで遡るのだが、エクリプスクロスは3点留めのストラットタワーバーなどでフロントセクションの剛性を構造的に高めつつ、各ドアの開口部やリヤフロアには「アウトランダーPHEV Sエディション」の約1.5倍に及ぶ構造用接着剤を使用。ボディの連続性を高めており、その効果はアウトランダーよりも確実に出ているのだが、リニアなハンドリング特性を得るには至っていない。
この3台の中からどれを選ぶかは、こうした小型クロスオーバーSUVに「最低限の悪路走破性」以外の何を優先的に求めるかによって大きく変わる。
そのキーワードは大きく分けて、スタイル、居住性、走り、の3つ。このうちどの2つを取るかで、選ぶべきクルマが決まってくる。
結論、スタイルと居住性ならエクリプスクロス。スタイルと走りならC-HR。居住性と走りならエスクードである。
【Specifications】
<三菱エクリプスクロスGプラスパッケージ(F-AWD・CVT)>
全長×全幅×全高:4405×1805×1685mm ホイールベース:2670mm 車両重量:1550kg エンジン形式:直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ 排気量:1498cc ボア×ストローク:75.0×84.8mm 圧縮比:10.0 最高出力:110kW(150ps)/5500rpm 最大トルク:240Nm(24.5kgm)/2000-3500rpm JC08モード燃費:14.0km/L 車両価格:309万5280円
<トヨタC-HR G-T(F-AWD・CVT)>
全長×全幅×全高:4360×1795×1565mm ホイールベース:2640mm 車両重量:1470kg エンジン形式:直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ 排気量:1196cc ボア×ストローク:71.5×74.5mm 圧縮比:10.0 最高出力:85kW(116ps)/5200-5600rpm 最大トルク:185Nm(18.9kgm)/1500-4000rpm JC08モード燃費:15.4km/L 車両価格:279万9600円
<スズキ・エスクード1.4ターボ(F-AWD・6AT)>
全長×全幅×全高:4175×1775×1610mm ホイールベース:2500mm 車両重量:1220kg エンジン形式:直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ 排気量:1371cc ボア×ストローク:73.0×81.9mm 圧縮比:9.9 最高出力:100kW(136ps)/5500rpm 最大トルク:210Nm(21.4kgm)/2100-4000rpm JC08モード燃費:16.8km/L 車両価格:258万6600円
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