手頃なプライスで楽しめるモデルが必要なのでは
先月半ば、中国第三の都市である広州市で開催された広州モーターショーを取材した。中国のモーターショーは4月に隔年で開催される北京と上海が非常に大きなイベントであるため、毎年行われるものの広州モーターショーはワールドプレミアもそれほどないローカルなモーターショーなのは否めない。
しかしローカルなモーターショーといっても広州市はトヨタやホンダなどの中国での合弁先の1つとなっている広州汽車の地元であるのに加え、市内に日産の工場もあるなど自動車との関わりが強い都市という背景もあり、モーターショーの規模は東京モーターショーの3番から4倍で1日ではとても回り切れないほど。
超高級車もフェラーリこそ出展がなかったものの、ロールスロイス、ベントレー、マクラーレン、ランボルギーニなどはブースを構えており、相変わらず強力な中国市場の勢いを感じた。
筆者が中国のモーターショーに行ったのは7年振りで、7年も間が空くと、かつては「パクリのオンパレード」と揶揄された中国車が日本にいると実感はないにせよ、今ではダウンサイジングターボなどのメカニズムを当たり前のように使い、全体的なクオリティも劇的に向上。一時期の韓国車のような驚異を強く感じた。さらに世界的な人気となっているSUVに加え、中国でも日本のようにミニバンも人気のジャンルになりつつあり多数展示されていたことなど、中国の自動車事情の大きな変化に驚かされた。
その中でも筆者がとくに印象的だったのが中国の北京汽車が広州モーターショーで発表したLITE(ライト)だった。
多数の展示車が置かれ、ブースの主役となっていたLITEは、スマートフォーツーにリヤデッキを着けたような2人乗りの小型電気自動車(ボディサイズは全長2986mm×全幅1676mm×全高1492mm)だ。モーターはリヤに置かれるRRで、三菱i-MiEVの上級グレードと同等となる16.2kWhのバッテリーは床下に置かれ、前後にラゲッジスペースを持つ。スペック的な性能は一充電の航続距離150km以上、最高速110km以上と公表されており、機能的にとくに驚くものはない。
しかし、メッセージやLITEなどの車名などを表示できる前後の液晶パネルを持つスタイルやメーターも含めると合計3つの液晶を備えるインテリア、12星座と同じ12色から選べるボディカラーなど、全体的な雰囲気が明るく、楽しげに見えるところが筆者は気に入った。
日本では一時期「若者のクルマ離れ」と言われ、若年層のクルマへの関心の薄れが深刻だったが、最近はそういった傾向はなくなりつつある。東京モーターショーや東京オートサロンに代表されるクルマ関係のイベントへの若年層の入場も増え、自分のクルマを欲しがっている若者も増えつつあると聞く。
クルマに乗りたい若者が増えているなら、若者向けのクルマが欲しいところだが、若者向けのクルマに必要な要素とは何だろう? 筆者は自立自動ブレーキのような安全装備や動力性能などの各部の性能はそれなりに充実させた上で、広い室内スペースを持ち、各部のクオリティはほどほどでいいから、価格が安く、明るく楽しそうな雰囲気を備えることではないかと思う。
そういった意味では広州モーターショーで見たLITEから学ぶべきものがあるように強く感じた。
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