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『ニッサン・スカイラインGTS(HR33)』プライベーターが見出したFRマシンの可能性【忘れがたき銘車たち】

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『ニッサン・スカイラインGTS(HR33)』プライベーターが見出したFRマシンの可能性【忘れがたき銘車たち】

 モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、全日本ツーリングカー選手権(JTCC)を戦った『ニッサン・スカイラインGTS(HR33)』です。

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 BNR32のスカイラインGT-Rなどが活躍し、一世を風靡したグループAから一転、1994年より世界規格である2.0リッターNAの4ドアセダンで争われるようになった全日本ツーリングカー選手権(通称JTCC)。このJTCCにニッサンはプリメーラおよびサニーというFF車を投入し、1994年のシリーズ元年を戦っていた。

 しかし、ニッサンはテストの段階からFR車の可能性を探っていた。グループAに使われていたR32GT-Rのボディに、プリメーラと同じ直列4気筒NAエンジンのSR20型を搭載した車両を製作した。

 このFR試作車両は、FR車はFF車に対して100kgのウエイトがハンデとして加算されるルールにおいて、それを覆すだけのメリットを見出すことができなかった。そして、ニッサンはFF車で戦い続けることを決めた、という経緯があった。

 だが、そのニッサンのFR試作車の走りを見て、その良さからニッサンのFR車でJTCCに挑む決断をした男がいた。その男の名は、近藤進治。当時、富士スピードウェイ西ゲートの横にあったレーシングガレージ、近藤レーシングガレージの代表である。

 近藤は、かつて日本よりF1へと挑んだプライベーター、マキF1や童夢が初めてル・マン24時間レースへと挑んだプロジェクトにも参画していた。1976年には、富士スピードウェイで開催されたF1世界選手権inジャパンにおいて、コジマF1が予選中に大破し、ひと晩でマシンを修復して、決勝に出走したという伝説……この時、修復の舞台となったのが近藤レーシングガレージであった。

 そんな日本のレース史を語るうえで欠かせない存在の近藤がJTCCに挑むFRのベースマシンとして選択したのは、R32のスカイラインだった。FRのGTSと4WDのGTS-4を中古で購入し、2種類のマシンを仕立てる計画を進めていた。そう、当初からR33で進んだ計画ではなかったのだ。

 しかし、参戦にあたってR32は4ドア車の公認を取得していないという壁が立ちはだかってしまう。それでも諦めることなく奔走したが「現在生産されている車種でない」という理由で、その願いは叶うことはなかった。R32の製作は、完成直前まで進んでいたが、日の目を見ることはなかった。

 これで、JTCC参戦計画は頓挫したかに思えたが、ニッサンからR33のホワイトボディが提供されたことや静岡県小山町やファルケンタイヤの協力などもあり、“現行の”スカイラインであるR33をベースに、JTCCマシンを製作する方針に転換した。

 JTCC用として製作されたR33スカイラインには、SR20型エンジンを搭載。エンジンはKA24型やRB20型という選択肢も用意していたようだが、最終的にはスーパーシルビアレース用のパーツを組み込んだSR20DEを採用するに至った。

 組み合わされるトランスミッションには、ノーマルのケースにこれもスーパーシルビア用のギヤを組み込んだものを装着していた。サスペンションは、N1耐久シリーズのスカイラインGT-R用のものを使用。ブレーキには、フロントにグループCカー用のAP製4ポッドキャリパーを流用するなど、他のレーシングカーから多数の部品を流用し、レーシングカーが仕立てられたのだった。

 こうして完成した近藤レーシングガレージのR33は、1994年の第5/6戦十勝ラウンドでデビューを果たす。しかし、そもそもコンパクトなボディのR32で思い描いていた理想は、大柄なR33では実現しなかった。

 さらに、自動車メーカーのワークスが群雄割拠するJTCCで上位入賞を目指すのは、かなりの難関であり、デビュー戦とチームにとって2戦目の第13/14戦筑波ラウンドでは、両方ともに嘆願書によって決勝になんとか出走する……という状況だったのである。

 そんななかでも改善の努力は怠ることはなかった。十勝ラウンドの後には、ラリー用のヒューランド製トランスミッションをモディファイして搭載したり、チームにとって最後のレースとなった富士スピードウェイで開催された第17/18戦インターTECでは、東名自動車よりパワーアップしたエンジンの供給も受けた。

 そんな数々のモディファイの甲斐もあって、インターTECでは予選1回目において38台中22位のタイムをマーク。第17戦で23位、第18戦では28位で初めての完走を達成した。しかし、その挑戦も翌年に続くことはなかった。出だしからさまざまな壁にぶつかりながら乗り越えてきた近藤レーシングガレージの奮闘は、この年限りで幕を閉じた。

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