キャンピングカー登録 「構造要件」とは?
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
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「キャンピングカー」と呼ばれるクルマには特種用途車両として
・8ナンバー登録される車両
・ナンバーはそのままで車中泊ができる最低限の装備(シートの上に置くベッドボードなど)などを備えた車両
の2種類がある。
前者の8ナンバー登録されるキャンピングカーについて「構造要件」が大幅に変更された。
国交省から2022年3月1日に「自動車の用途等の区分について」(国自整第278号)という通達が出されており、この4月1日より歴史的快挙! とも言われるキャンピングカーの構造要件が大幅に改訂される。
構造要件とはキャンピングカー登録をするために必要な装備や仕様のこと。就寝定員やベッドのスペース、炊事設備などについて細かく規定されている。
今回の改訂では、主に、就寝定員の数え方と室内高に関して大幅な緩和が実施されているが、これまで(3月31日)とこれから(4月1日~)ではどのような内容が変更されるのだろうか。
キャンピングカーの構造要件については、過去、何度か改訂がおこなわれてきており、現在の構造要件は2001年10月に改正され、2003年4月から適用となっている。
この時の構造要件の改正は「8ナンバー」の不正取得を防止することが主目的であった。
1980年代半ばから90年代にかけて、今で言うところのSUVやステーションワゴン、大排気量のアメリカ車に対しキャンピングカー(や放送宣伝車)の装備をつけて8ナンバーを取得。
ふだん乗るときはそれらの装備を外して車検時に再度装備をつけて車検を通す……このような不正行為がおこなわれていた時代があったのだ。
当時は、8ナンバー車の税金や保険が大幅に安かったため維持費を安くする目的で8ナンバーを取得する業者やユーザーがとても多かった。
構造要件が今よりずっと緩かったのでトヨタ・ランドクルーザー80のような車種でもキャンピングカー登録が簡単にできていたのである。
4月1日からの変更点を新旧で比較してみる
8ナンバーを不正取得するケースが後を絶たないことからその後、キャンピングカーの構造要件は厳格化されることになった。
例えば、検査後にキャンピング設備を簡単に取り外せないよう溶接やボルト、リベットなどで固定することとし、キャンプに必要な設備に関する諸々の条件も厳しくなった。
2001年10月に発表され、2003年4月1日から適用となったのが現在の構造要件である。
それでは、21年ぶりの改訂となる新構造要件はどのような内容になっているのだろうか? 新構造要件では主に就寝定員と室内高に関して大きな変更がある。
就寝定員について
旧乗車定員の3分の1以上(端数は切り上げ)を就寝定員とすること。乗車定員3名以下の場合は「2名」の大人用就寝設備を有すること。
新乗車定員の3分の1以上(端数は切り捨て)を就寝定員とすること。乗車定員3名以下の場合は「1名」の大人用就寝設備を有すること。
つまり……?就寝定員が乗車定員の3分の1以上であることは変わりないが小数点以下は「切り上げ」となる。
つまり乗車定員7名のクルマなら7÷3=2.3333…で、旧要件なら3名となるところが2名。乗車定員5名なら5÷3=1.666…で1名でOKとなる。
軽自動車をベースにしたキャンピングカーの場合は、乗車定員が4名の場合4÷3=1.3333でこちらも就寝定員は1名分で良いことになる。
新要件では乗車定員3名以下の場合の就寝定員は1名で良いとされているので、定員2名の軽貨物車をベースにしたキャンピングカーにおいても1名分の就寝スペースを確保すれば構造要件を満たすことになる。
ちなみに就寝設備はキャンピングカーに必須の装備であるが、就寝定員1名分(大人)の就寝スペースは180×50cm、子どもの場合は150cm×40cmでこれが2つあれば大人就寝定員の1名分と数えることができる。
なお、就寝設備として認められるベッドは平面かつ専用装備であることが条件なので、座席をフルフラットにしてそのままベッドとして使う場合や、座席の上に簡易なマットなどを置いて使う場合などは就寝設備としては認められない。
室内高の規定も柔軟に 40cmの変化は大きい
また、今回の改訂では室内高の規定も大幅に緩和されている。
以下でじっくりと見ていこう。
まずは旧規定から。
旧
洗面台や調理台を利用するスペースの室内高は床面から上に160cm以上を確保する
新
洗面台や炊事設備調理台の上面が床面から上方に85cm以下であれば120cm以上を確保
つまり……?
これは洗面台や調理台などキャンピングカーの構造要件に必要な設備が85cm以下の高さであれば、室内高が160cm→120cmを確保すればよいという意味。
40cm低くなったことで、恩恵を受けるクルマも多くなるだろう。
具体的に今回の構造要件の変更で影響を受けるキャンピングカーとは?
もちろん、8ナンバー登録のキャンピングカー全体に関わる構造要件なので、どのようなクルマがベースであっても就寝定員や室内高の高さなどが「緩和」されるわけだが、ざっくり言えば、ベース車が小さいクルマほどありがたい改訂になると思われる。
つまり、軽ワンボックスや小型ミニバンなどである。
製造業者はどう感じているのだろうか? 話を聞いた。
キャンピングカー製造業者「自由度が広がる」
「軽キャンパーにとっては、歴史的快挙! ともいえる改訂です。軽は乗車定員が4名でこれまでは最低でも就寝定員2名分のベッドスペースを確保しなくてはいけませんでした」
「それが撤廃されて就寝定員1名でも8ナンバー登録が可能になることで車種やレイアウトの自由度が広がります」
「そして、シンクや洗面台前の室内高についてもこれまでは基本160cm以上の高さが必要でしたが、これがシンクや洗面台の高さがJIS規格の85cm以下であれば、120cm以上に緩和されました。(なお、キャンピングカーの洗面台や炊事設備の多くは75cm以下)」
「120cmであれば、軽ワンボックスのノーマルルーフ仕様であっても確保できるので、8ナンバー登録が難しかったり、手間が掛かったりする車種が大幅に減るメリットがありますね」
ところでなぜ、このタイミングでキャンピングカーの構造要件が改訂されることになったのだろうか?
管轄する国土交通省自動車整備局に聞いてみた。
なぜ今、構造要件が改訂されることになった?
「構造要件については平成13年から現在の通達になっています。それ以前も『就寝定員が乗車定員の3分の1』という条件はありましたが、指導要領程度の基準であり正式に構造要件として扱われることになったのは平成13年でした」(国土交通省自動車整備局)
「その当時は大型のキャンピングカーを想定した基準でした」
「しかし、この20年でキャンピングカーの使われ方も随分と変化があり、都市圏に住んでいる方々が自然の中でゆったり過ごすときにキャンピングカーを使うケースも増えています」
「その場合、あまり大きなキャンピングカーでは保管場所を探すのも大変ですし都市圏の狭い道路では移動も困難になりそうです」
「そこで、これまでは8ナンバー登録が難しかった軽自動車など小さめの車両をベースにしたキャンピングカーを想定して、就寝定員や室内高などの構造要件を緩和することにしました」
「ただし、特種用途車として8ナンバー登録する場合、特種用途のための専用設備を小さく(少なく)しすぎると、ただの乗用車や貨物車と変わらなくなってしまいます」
「キャンピングカーとして使うための基本の設備について業界団体と検討した結果、今回の改訂に至りました」
前述したキャンピングカーの製造業者によると、オーナーからの要望も少なからずあったという。
「堂々と8ナンバー登録して乗りたい、使いたい」
「軽乗用車ベースのキャンピングカーの場合、ベッドやシンクなどを備えていても、8ナンバー登録ができない車種は車検のたびに取り外して受ける必要がありました」(キャンピングカー製造業者)
「厳密にいうとこれは二次架装として違法改造になる場合もあります。お客さんの側から『堂々と8ナンバー登録して乗りたい、使いたい』という要望はありました」
「まあ、貨物車なのにリアゲートの周辺に大きなシンクやベッドの設備があると、貨物の出し入れがしづらくなり、貨物車としての構造要件を満たさないことにもつながります」
「現実としてこれまでの構造要件を軽自動車で満たすのは困難でした。安心安全に乗ってもらうためには今回の改訂は歓迎です」
なお、8ナンバー登録と言えば車検/税金/保険などの費用のおいて大きなメリットがあったが、今は「車種や重量などにもよるが、おおむね2割安くなる程度」とのこと。
8ナンバー登録にすることによる諸費用面ではそれほど大きな恩恵はないにしても、何より正々堂々と8ナンバー乗れることのメリットが大きいと言えそうだ。
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みんなのコメント
とにかく重量がありすぎるから登坂車線のある所では荷物満載の大型トラックといい勝負。
燃費も街中7~9㌔高速12㌔・・・エアコンOFFでね。
今はVOXY・HVで車中泊してますが、走行安定性は抜群、燃費は倍になり、なぜか任意保険が安くなった。
車検代や税金が高くなったけど、ガソリン代でペイになった。