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自動運転にAI人工知能は何故必要なのか?【ボッシュ・モビリティエクスペリエンス2017レポートvol.3】

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自動運転にAI人工知能は何故必要なのか?【ボッシュ・モビリティエクスペリエンス2017レポートvol.3】

■Bosch mobility experience2017 report @Boxberg vol.3

2017年夏に開催したボッシュのモビリティ エクスペリエンスだが、これまで当サイトの「雑誌に載らない話」で、そのイベントの狙いや主旨を説明してきた。ここからはいよいよ、具体的なソリューションや現在の進捗状況を踏まえた、新しい技術についてお伝えしよう。その最初は、自動運転に必要とされるAI=人工知能についてだ。
<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

自動運転が未来の自動車社会に欠くことのできない技術であることは、これまでのレポートでお伝えしてきた。現実にもレベル2といわる運転支援システムは、各社で搭載が始まっており、より高度な運転支援システムを求める声も上がっている。

アクセル、ブレーキ、ハンドル操作の3つがすべて自動で操作されれば「自動運転している」ような気がするが、現実には高度運転支援システムであり、自動運転とは位置づけられない。それはなぜか。

自動運転と聞けば、読んで字のごとく自動で運転されるものだと思うのが当たり前だが、現実の道路で人は運転操作の中に「予測」ということをしながら運転している。その予測があるからこそ、事故が起こらず、安全に走行しているのだが、現在の技術では、予測は行なわれず、目の前の事象に対して人より速く反応できるため事故回避できるというレベルであるわけだ。

ボッシュ・モビリティエクスペリエンス2017でのディルク・ホーアイゼル博士は、AIの必要性を講演していた。

■AI人工知能は何故必要か?
駐車している2台のクルマの間からボールが通りに転がり出てきたとき、われわれドライバーは次の予測をする。数秒後に子供がクルマの間から飛び出してくることを予測し、車速を落とす。多くのドライバーがこうした対応を取っていると思うが、現在の運転支援システムには、この予測機能がないため、車速を落とすことはない。

この時、万が一子供が飛び出した時に、緊急停止ブレーキが働くとしても、それがぶつからずに止まれるだけの十分な時間と距離があるのか?という状況次第で結果が変わってくる。したがって、現在の自動運転技術と言われている機能は、限定的な機能であることがよく理解できると思う。

こうした状況で車両が交通状況を解釈し、他の道路利用者の行動を予測できるようにするには、AIの搭載が不可欠だということだ。人工知能を搭載した車両は、人間よりも反応が速いだけでなく、より防御的に運転する可能性が高くなるからだ。

したがって搭載可能なAIの開発は急がれるが、ボッシュでは、現在およそ3000人のエンジニアが自動運転の実現に向けて研究を重ね、そしてダイムラーとの共同開発を提携している。また、今後5年間でボッシュのAIセンターには3億ユーロの投資を行ない、拠点を置くインド、米国、ドイツには100人のエキスパートエンジニアが研究開発にあたるとしている。

■AIに必要な3つのステップ
AIが人間のドライバーと同等に起こることの予測ができるようになるには、基本的には3つの重要なステップをクリアする必要があると前述のホーアイゼル博士は説明する。

第一のステップは理解力。センサーが何を検知しているかを理解する必要があるわけだ。ディープラーニングという言葉を聞いたことがあるだろう。ディープラーニングはAIを勉強させることだ。人は、小さな子供であっても数台のトラックを見れば、それがトラックであることを認識するようになるが、コンピュータは、トラックと認識できるようになるには、何百台ものいろいろな角度から、形を見なければトラックと認識できるようにはならない。そして、AIが実際の道路上で実用に耐えるには数百万もの画像を選別し、クルマ、トラック、歩行者、自転車、樹木などすべてのものを確実に識別できるようになる必要があるわけだ。

第二のステップは、クルマが意思決定できるようにすることだ。クルマを見て理解するだけでは十分ではない。数秒ののちに最も起こりそうなことを予測することを学ぶ必要がある。AIは誰かが数秒後に前方に現れる確率を計算し、適切なタイミングでブレーキをかけるということが要求されることになる。つまりパターン認識である。

第三のステップでは、高精度マップの必要性だ。正確な自車位置をつかむこともとても重要だ。つまり、数センチ単位での精度で正確に把握できる必要があり、車両は数十億におよぶレーダーのリフレクションポイント(反射)の情報に基づいて道筋を再現し、夜間や視界が悪い時でも自車位置を正確に特定する必要がある。2m自車位置がずれていたら、交差点を曲がることはできないからだ。

ボッシュでは、高精度マップと正確な自車位置(ローカリゼーション)に関し、TomTom、百度(バイドゥー)、AutoNavi、NavInfoと共同で高精度マップの作成に取り組んでおり、また、車両が捉えたセンサーデータをベースにクラウドのデジタルマップに反映し、絶えず更新することが必要になるわけだ。Tom Tomとはレーダーセンサーのデータの活用をした「Radar Road Signature」の開発に成功している。

これまで、地形情報を得るためにはカメラの画像データが用いられてきたが、ボッシュの「Radar Road Signature(レーダーロードシグネチャー:レーダー波道路情報)」は、レーダー波によって得られる数十億に達するリフレクション(反射)ポイントで構成し、レーダー信号がガードレールや道路標識などあらゆるところに当たると、道筋に沿ってそれらの対象物を再現し、地形情報を生成できるわけだ。

こうすることで、数センチ単位での自車位置精度が高められる。このレーダーロードシグネチャーに関してはテスラの試乗車があり、実際にテストコース内になるが、ローカリゼーションとリンクした自動運転を体験している。こちらはvol.5でレポートをする。

こうして開発が続けられている自動運転車は1秒に1GB(ギガバイト)という膨大な量を生成しており、従来のコントロールユニットでは対応しきれない状況でもある。そのため、ボッシュは半導体工場の建設にもすでに投資をし、新たな工場建設をドレスデンで行なっている。その成果に関し2020年初頭までにAIオンボードコンピュータを量産化できる見通しだと発表もした。

■AIオンボードコンピュータとは
この開発しているAIは、複雑な交通状況でも、また、初めてクルマが経験する状況でも、自動運転を誘導するとしている。そのためにコンピュータは最大で300億回/毎秒の浮動小数点演算能力が必要とされ、AIは新しい状況に遭遇するたびに、学習を重ねていくことになる。

遭遇し学習したデータはニューラルネットワークに蓄積していき、蓄積した知識を解析し、コンピュータの学びが正確かどうかを検証する。ニューラルネットワークは、脳機能にある特性を計算上のシミュレーションによって表現することを目指す数学モデルのことで、さらに人工的に生成した知識構造を別のAIにもコピーし、アップデートしていくことが可能になるということだ。こうしたAIのコアオンボードコンピュータの構築は、ボッシュはNvidiaと協業して行なっている。

ホーアイゼル博士によれば、自動運転に不可欠なこととして、オンボードコンピュータが人間よりも優れて予測ができるようになる必要があるということで講演はまとめられた。


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