現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 政治の影響でBEVが左右される諸外国! 対照的に際立つ日本の自動車市場の健全性

ここから本文です

政治の影響でBEVが左右される諸外国! 対照的に際立つ日本の自動車市場の健全性

掲載 更新 57
政治の影響でBEVが左右される諸外国! 対照的に際立つ日本の自動車市場の健全性

 この記事をまとめると

■アメリカのBEVメーカー「フィスカー」が経営破綻した

世界的なガソリン価格の高騰はBEV派の陰謀? BEVはエンジン車より女性にモテる!? クルマ業界のEVにまつわる「都市伝説」

■フィスカーの経営破綻はBEVの販売低迷の象徴ではなくSUVの不具合が原因とされる

■政府からの横槍が少なく民間主導でBEV普及が進む日本は健全な市場を維持していると感じる

 EVシフトの踊り場報道に違和感

 アメリカのBEV(バッテリー電気自動車)メーカーとなる、「フィスカー」が6月17日にアメリカ連邦破産法11条の適用を申請し経営破綻した。これを報じたある日系メディアは報道の最後に「ここ最近の世界的なBEV販売低迷の象徴」といった内容で締めくくっていた。しかし、専門メディアや米系メディアはSUVタイプモデルの不具合による販売低迷がとどめを刺したといった報道をしており、フィスカーの経営破綻がいまのBEV全体の販売低迷を象徴しているというようは捉え方を必ずしもしていないところは非常に興味がもてた。

 BEVが盛んにラインアップされ、それ相応の販売を行っていた地域は需要一巡や補助金終了などの影響もあり、確かに需要が鈍っているという事実は否定できないだろう。

 中国メーカーがとくに積極的に進出している東南アジアのタイでも、そろそろいち早くBEVに乗っていたユーザーの乗り換えが本格化してくる。そもそもタイでも高価格帯となるBEVを購入できる層は一定所得以上の階層に限られている。複数保有しているなかの1台として中国メーカーのBEVに乗る人も多い。

 また、タイでは9割超ともされるぐらいローンを利用しての新車購入が多く、再販価値のより高いクルマを購入して支払い途中で残債整理し、比較的短期間で乗り換えを繰り返すことも珍しくないと聞いている。そうなると、中国メーカー車に限らず、BEVの再販価値への不安が一気に現実のものとなっていくのではないかと、地元事情通から聞いたことがある。

 中国BYDオート(比亜迪汽車)は、日本市場などタイ以外の地域でもブランドステイタスの構築をはかる意味からも、確かな販売ネットワークの構築や認定中古車などの再販リスクへの対応にも積極的に取り組んでいる。

 中国と並んでBEVに熱心なのが欧州地域といえるだろう。おもに自動車産業の盛んな西ヨーロッパ諸国の動きが目立つが、「ICE(内燃機関)技術で圧倒的優位性を誇る日本メーカー潰し」ともいわれる、違和感の目立つ前のめりなBEV普及施策を進めていた。

 6月6日から9日に実施された欧州議会選挙では「極右勢力」の躍進が目立つ結果となった。極端な環境政策や移民政策などそれまで極右勢力と対峙する革新勢力の推し進めた政策の結果、とくに西ヨーロッパ諸国の庶民はそれに「ノー」をつきつける格好で自国第一主義などを掲げる極右勢力が今回台頭したとされている。

 そして、今後欧州議会で極右の発言力が高まっていくなかで、いままでのアグレッシブな欧州のBEV普及戦略も大幅な軌道修正、つまりいまも回帰傾向はあるがさらにICEへの回帰が進むのではないかとされている。

 ICE以上にBEVの普及には政治が絡んでいる

 また、その流れとは別に意外なほど欧州、とくに西ヨーロッパ地域の消費者に受け入れられつつある中国メーカーのBEVに対する関税引き上げなども進んでおり、欧州におけるBEV普及はまさに踊り場にきているといえよう。

 一方のアメリカは、今年の秋の大統領選挙次第でBEV普及政策が大きく変わるかもしれない。「もしトラ」、「マジトラ」などともいわれる共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏の次期大統領就任が高いとされている。トランプ氏はすでに大統領に就任したときには、いままでの民主党バイデン政権が推し進めてきたBEVに関する政策を大幅に見直すとしている。

 何がいいたいかというと、ICE車についても環境規制などにおいて政府介入というものを強く感じるが、BEVについてはその普及についてまで「政治」の存在が大きい。政府のさじ加減次第で普及スピードなども大きな影響を受けてしまうのである。

 中国メーカーのBEVが安価なことについてはさまざまなことが取りざたされているが、その優秀性もあるから、欧州では関税引き上げなどで流入を可能な限り食い止めようとしているのだろう。

 かつて1980年代あたりの日本車も「政府が極端な補助金を出している」といったことまではいわれなかったものの、欧米では「こんなに環境性能を中心に良質で優秀なクルマが、これだけ安価に作ることができるわけがない」と、いわれないバッシングを受けていたことと、いまの欧米での中国メーカーのBEVに対する動きは、どこかオーバーラップして見えてしまう。

 BEVと政治というのはICE車よりも密接な関係があると見ている。自動車産業が盛んな地域では長期的に見れば、「100%BEV化」なのかはともかく、新たな成長産業として政府は注目し、日本車に対抗したいとも考えているのも間違いないだろう。

 一方の日本国内では政府が何を目指しているのか、その方向性がいまひとつ定まっていないなか、民間主導でBEV普及が進んでいるともいえ、消費者判断にゆだねる部分が多いようにも見える。こういった環境は、諸外国よりある意味健全なものとも感じてしまう。

 燃費や燃焼効率に優れたICE、そしてそのICEをベースにしたHEV(ハイブリッド車)をラインアップする日本車が圧倒的に売れている日本市場では、BEVを選ぶ理由はなかなか見いだせない。販売現場で聞いても、「いったんBEVを購入したあと、HEVに戻る人もいる」との話もあり、まさに潮流としては「BEVまっしぐら」ではなく、個々の消費者の価値観のなかでしか選ばれていないようなものを感じる(補助金に引かれてということもあるようだが……)。

 政治の世界での勢力図次第でBEVの普及が左右されるというのは、あまり健全な状況には見えない。政治との距離感が諸外国よりあり(いまの日本の政治の混迷ぶりのなかではなかなか政治の目も届かない)、環境性能にすぐれたBEV以外の自動車が豊富に存在するなかで、賢明な消費者が自分の愛車を選んでいくと、「世界的にもBEVの分野では取り残され気味」などとも表現できる状況にはなるものの、いまの日本の状況が健全な市場環境を維持しているとも表現できるのかもしれない。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
ベストカーWeb
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
AUTOSPORT web
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
ベストカーWeb
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
Auto Messe Web
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

57件
  • ******
    菅総理の頃に総理が勝手にBEV化を宣言、推し進めようとした時、自工会の当時会長だった豊田元社長が記者団に明確な反対意見をしていた。
    トヨタは特に好きなメーカーでは無いが、この時の自工会会長が豊田氏で良かった。
    ゴーン氏が会長であったなら、今の日本も欧米と同じく路頭に迷ってだんだろうな
  • dog********
    同じ記者が書いてるとは思わないけど、
    さすがにもう「BEV絶賛 日本は遅れてる」というストーリーは無理になってきて
    手のひら返しのような記事が増えてきましたね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村