来季2024年のインディアナポリス500マイルレースに向け、今年1月に4台目のラインアップにビッグネームを加えることを発表していたアロウ・マクラーレンSPは、先の8月11~13日にインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)で開催されたNASCARカップシリーズ第24戦『ベライゾン200アット・ザ・ブリックヤード』の現地にて、2021年カップシリーズ王者カイル・ラーソンがドライブするダラーラDW12の本戦仕様カラーリングを披露した。
2024年の同日に、インディアナポリス500とコカ・コーラ600へ同時参戦するというラーソンの計画は、アロウ・マクラーレンSPとヘンドリック・モータースポーツ(HMS)が協業するシボレーエンジン搭載の北米最高峰シングルシーターと、同じくその晩にシャーロットでレースを戦う“パパイヤオレンジ”が散りばめられたNext-Genシボレー・カマロZL1の5号車の2台が公開されたことで、より具体性と現実味を帯びることとなった。
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2014年にカート・ブッシュが最後に挑戦したインディ/シャーロットのダブル以来となるこの計画に関して、当のラーソンは「それが本当に現実であるのか、という点についてはまだ固まっていない」と明かした。
「今日のような日にクルマを公開し、こうして小さなステップを踏むことで計画がより現実的に見えるのは間違いない。オフシーズンに入って状況が落ち着けば、さらに興奮だけでなく徐々に緊張感も増してくると思う」と“J.J.”ことジミー・ジョンソンに続くオープンホイール・デビューを目指すラーソン。
来季5月の現地では、パト・オワードにフェリックス・ローゼンクヴィスト、そして2016年のインディ500覇者であるアレクサンダー・ロッシと共闘する予定のラーソンだが、今回のプログラムでも陣頭指揮を担うHMS代表のリック・ヘンドリックも“メモリアルデイ”に向け双方のイベントに赴く。
「驚異的なスピードと評判を誇る、ワールドクラスのチームと提携できると思うと本当にワクワクするね。私はとてもとても幸運だと感じているよ」と、ペイントスキーム発表の席上で挨拶したヘンドリック代表。
「当初は自分たちで枠を所有しダラーラを走らせたいと考えていたが、それを機能させるにはパートナーが必要だった。そこでギャビン(・ウォード/アロウ・マクラーレンSPレーシングディレクター)と彼のチーム全員、そしてザク(・ブラウン/マクラーレン・レーシングCEO)がとても親身になって助けてくれたんだ」
「もちろん、カイルは私に多くのプレッシャーを掛けて後押ししてくれたし、私はストックカーに慣れているけれど、そこも大丈夫だ。シボレーとともにこの挑戦ができることに本当に興奮しているよ」
■最大ブレーキ圧力2800ポンドに「正気の沙汰じゃない」とラーソン
すでにインディカーのシミュレーター体験を済ませたと明かしたラーソンだが、北米のモータースポーツ専門サイト『racer.com』に対し「快適ゾーン内で始まった事態は、すぐに別のレベルに達した」と、衝撃の時間を振り返る。
「ミドオハイオでの訓練に参加したが、最初は制御不能になって芝生のなかに突っ込むだろうと思っていたんだ(笑)。でもすぐに『よし、うまくやれている気がする』と感じてリズムに乗れたんだ」と続けたラーソン。
「エンジニアたちはしばらく黙っていたけど、彼らはすぐ『やぁ、すべてがうまくいっているようだね』と声を掛けてくれた。でも『ブレーキングゾーンに取り組み続けて。OK、ブレーキ圧はさらに上げてもいいし、もう少し奥で深く踏んでみよう。ああ、少し良くなった』って。思わず僕は『あとどのくらい必要?』って聞いたんだ。すると彼らは『そうだな……あと1000ポンドはブレーキ圧が必要』だって言うんだ。その瞬間、僕は『えっ?』ってなったよ(笑)」
「つまり、最大ブレーキ圧力は2800ポンドほど。正気の沙汰じゃないし、そんなに何かを強く踏んだことはない。例えば、ここ(IMSのロードコース)でターン1に入るとき、最大ブレーキ踏圧は800ポンドほど。だから、ペダルを強く踏み込み、すぐにペダルを放すことを頭のなかで理解しようとするだけじゃなく、そもそもペダルをキープすることを含めて、僕にとっては非常に困難だった。最後まで完全に理解することができなかったし、理想の最大ブレーキ圧に近づくと“ヘタになった”ようにさえ感じたよ」
そんなカップ王者ラーソンの“カルチャーショック”経験は、チームメイトの登場でクライマックスを迎える。
「その後、フェリックス(・ローゼンクヴィスト)が現れて、僕よりもずっと速かったからイライラし始めた(笑)。データを見ると、まさに目からウロコだったね」と続けたラーソン。
「ダウンフォース量やブレーキングパワーについては以前から聞いていたが、彼らがステアリングの後ろで何をしているのか、テレメトリで見たことはなかった。だから、それは間違いなく興味深かった。あれほどハードにプッシュしながら、彼らがどれだけ一貫性を保つことができるかを見られたのは、かなりワイルドで間違いなく目を見張るものだった」
こうしたすべての新しい経験こそ、ドライバーとしての自身の将来に「大きく役立つはず」だと確信を深めている。
「経験全体の結果が何であれ、僕はこの経験からより良いレーシングドライバーになるつもりだ。シミュレーターに費やした短い時間でさえ、僕はすでにそれを達成していると思うよ」
ラーソンは10月にIMSの4.5マイルオーバルで義務付けられている新人オリエンテーションで、シミュレーションを超えた次のステップに進むこととなる。
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