■「アイコニックSP」の根幹となる「ロータリーEV」とはどんな仕組みなのか
マツダは2023年10月25日、「ジャパンモビリティショー2023(JMS2023)」会場でコンパクトスポーツカーコンセプトの「MAZDA ICONIC SP(以下、アイコニックSP)」を世界初公開しました。
マツダ独自のロータリーエンジンを搭載するアイコニックSPですが、果たして市販の可能性はあるのでしょうか。
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JMS2023で最も話題をさらったといってもいい、マツダのアイコニックSP。
アイコニックSPは、美しい造形であることはもちろん、なんと2ローターのロータリーEVシステムを想定したコンセプトカーということで、たくさんの来場者に注目されていました。
これに先駆け、2023年9月に国内で発表された「MX-30ロータリーEV」は、「8C」型1ローター式ロータリーエンジンを新開発したことで「マツダのロータリーエンジンが復活する!」と、大きく報じられています。
とはいえロータリーエンジンが直接クルマを駆動するわけではなく、いわゆる電気自動車のレンジエクステンダー(航続距離を伸ばすための発電機能)としてバッテリーを充電するためのものだったためか、ファンもそこまで盛り上がっていたようには感じませんでした。
しかしJMS2023のアイコニックSPは、2ローターになったとはいえ、レンジエクステンダーである仕組みは変わっていないにも関わらず、たくさんの注目を集めたのはとても良いニュースだと思います。
単純に航続距離や環境性能を追求するモデルだけではなく、軽量コンパクトなロータリーエンジンの特性を活かし、マツダらしい美しいスポーツカーにも転用できるという可能性を示してくれたことが、ファンの心に響いたのかもしれません。
たとえモーターで駆動することになっても、「マツダなら楽しいクルマの未来を作ってくれるかも」という期待を抱かずにはいられないコンセプトカーでした。
そんなアイコニックSPはあくまでも“コンセプトカー”であり、本当に実現するかどうかはまだ分かりません。
しかし、JMS2023会場でマツダ社員が口を揃えて言っていたのは「応援してください!」という言葉。
つまり、アイコニックSPの話題が盛り上がれば盛り上がるほど、そしてファンの欲しいという要望が増えれば増えるほど、それが現実に近づくという意味なのだと思います。
また、アイコニックSP自体が話題になることも大切ですが、すでにロータリーEVを搭載しているMX-30ロータリーEVの販売台数を伸ばすことがより重要となるはずです。
はたして、アイコニックSPの根幹ともなる仕組みを搭載したMX-30ロータリーEVとは、どんなクルマなのでしょう。
未来の可能性を探るためにも、改めて試乗してみることにしました。
■滑らかにチューニングされたロータリーEVの加速感が心地良い!
ベースのMX-30は2019年10月に世界初公開され、2020年10月にまずマイルドハイブリッド仕様の発売を開始。その後、100%EV(電気自動車)仕様のリース販売が2021年1月より始まっています。
これまでの、統一感があるスタイリングを採用している他のマツダSUVとは外観デザインの雰囲気がガラリと変わって、良い意味でシンプルな印象を受けます。
インテリアにはコルクやペットボトルのリサイクル素材をうまく組み合わせるなど、個性をもたせながら上質な空間作りもなされています。
開発者から「MX-30は、モデルさえ知らなかった人が、ディーラーなどでデザインに一目惚れして購入することもある」と聞きましたが、近くで触ってみると、それが理解できるモデルだなと思いました。
ただしこれまでは観音開きのドアや独自のパワートレイン、価格の兼ね合いもあって、他のマツダのSUVモデルより販売が伸び悩んでいた印象でしたが、ロータリーEVの登場によって、再度その魅力が見直されそうな気がします。
早速、MX-30ロータリーEVを発進させてみると、まずはモーターの滑らかな加速感が素直に気持ちいいと感じました。
MX-30で先行発表されていたEVモデルは、他社のEVとは違い急激に加速しないのが特徴で、この特性を受け継いでいます。
アクセル開度にあわせて滑らかにトルクがあふれてくるので、エンジンよりもレスポンスは良く、モーターよりも違和感がない、ちょうど良いパワー感にチューニングされているのです。
「モーターならもっと力強く加速させて欲しい!」という人もいるかもしれませんが、個人的には自分の身体にぴったり合う感覚が心地良かったです。
走行モードは、「ノーマル」「EV」「チャージ」の3つが用意されています。
「ノーマル」は、基本的にはEV走行しつつ、電池残量が半分以下になるとエンジンをかけて充電し、「EV」は電池残量ギリギリまでEV走行をします。そして、「チャージ」は積極的にエンジンをかけて充電するモードとなります。
「ロータリーエンジンが始動したらどうなるの?」ということは、誰もが気になるところだと思います。
満充電されている時には、かなりの距離を走らないとエンジンはかかりませんが、ノーマルモードで電池残量がある場合でも、アクセルを奥まで踏み込めば始動するようになっています。
エンジニアいわく、シングルローターのロータリーエンジンは、偏心運動の振動を他のローターで打ち消すことができず、8C型は排気量が830ccと大きいこともあって、それなりに音が出てしまうそうです。
しかし、ノーマルモードで走っている際には、低速時にはエンジンが始動しないようになっていたり、アクセルを踏み込んだ時や他の走行音が大きいシーンでうまくエンジンをかけてくれるので、そこまで音を気にすることはありませんでした。
そのいっぽうで、チャージモードにすると、強制的にエンジンをかけて充電するので、ところ構わずエンジンが高回転で回っていると「EVにしてはうるさいかも……」と感じます。
RX-7やRX-8のように、気持ちいいロータリーサウンドを期待している人には、念の為「全くの別物だ」とお伝えしておきます。
ただ前述のように、ノーマルモードで走っている場合であればシーンに合わせて音が調整され、より静かにEVらしく運転できるので安心してもらって大丈夫です。
■ロータリーEVの高い完成度に「アイコニックSP」への期待も高まる!
今回、MX-30ロータリーEVを運転してみて感じたのは、ロータリーがどうこうよりも、レンジエクステンダーを搭載したEVとして、とても完成度が高いということです。
モーターのトルクの出し方だけではなく、走る、曲がる、止まるの部分は「さすがマツダ」としみじみ実感するほど優秀です。
そしてロータリーEVとなったことで、航続距離もガソリン満タンなら約700kmまで伸びています。
ちなみにMX-30 EVの一充電走行距離は、WLTCモードで256kmでした。
元々デザインも秀逸で、乗り味も乗り心地も良かったモデルが、さらに航続距離も伸びて400万円台から購入でき、補助金によってはさらに安く手に入るのなら、むしろお買い得とさえ思ってしまいました。
マツダファンが期待する意味での「ロータリーエンジンの息吹を感じられるモデルか」といえば少し違うかもしれませんが、8C型はマツダの現代の技術を詰め込んだ革新的なロータリーエンジンであることは間違いありません。
※ ※ ※
アイコニックSPの市販化にたどり着くには、まださまざまなステップが必要かもしれません。
しかしMX-30ロータリーEVに触れてみて、改めてMX-30というクルマの魅力に気付かされるとともに、MX-30ロータリーEVから新たなファンが生まれたり、ロータリーEVが熟成されていくことで、アイコニックSPのような新たな未来が拓けると、大きな希望を抱くことができました。
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みんなのコメント
要はお化けみたいに出る出る言っときながら結局出ない…的な。
こういう車が出ても興味がない人と、興味があっても買わない人だ。