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290万円以下のクラシック・スポーツ MGC トライアンフTR4 A 1960年代の2台

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290万円以下のクラシック・スポーツ MGC トライアンフTR4 A 1960年代の2台

1960年代後半の英国製スポーツカーの明暗

MGCとトライアンフTR4は、1960年代後半の英国製スポーツカーの明暗を表している。いずれも、先進的とはいえない量産車由来のドライブトレインを美しいボディで包み、1200ポンド前後の英国価格で提供されていた。

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TR4は1961年から1967年に約6万9000台が売れ、確実な成功を掴んだ。その内の6万3000台は北米市場へ輸出された。ジョヴァンニ・ミケロッティ氏によるイタリアンなスタイリングが、アメリカ人ドライバーの心を射止めた。

英国価格はMGBより100ポンド高かったが、滑らかに回る2138ccの4気筒エンジンと、1965年以降は独立懸架式になったリア・サスペンションが価格差を正当化した。基本的にはTR3の進化版だったが、最高速度177km/hを実現していた。

その頃の英国市場では、オースチン・ヒーレー3000などの大柄なスポーツカーと、1798ccで160km/hを叶えていたMGBといった小柄なスポーツカーの間にTR4は納まった。巧みにモデルギャップを埋めていた。

強化される北米の安全規制がなければ、後の親会社のブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)は、このヒエラルキーへメスを入れなかっただろう。しかし、MGブランドから3.0Lの後継モデルが誕生することになる。

1967年の発表時から、6気筒のTR5とMGCは同じBMC傘下で対立関係にあった。結果として、アンダーステア傾向の強い特性などでMGCの評価は伸び悩み、2年で終了へ追い込まれてしまう。

見た目も、MGBと殆ど変わらなかった。ボンネット・バルジと大径ホイール程度の差だった。

当時の厳しい評価に疑問を抱く能力

今振り返えると、当時の厳しい評価には疑問を抱く。MGBに154ポンドを上乗せすれば、最高速度193km/hと6気筒エンジンが手に入った。フロント・サスペンションはトーションバー式で、MGC独自の設定だった。

確かに、メインベアリングを7枚持つエンジンは、最高出力が5ps落とされたオースチン・ウエストミンスター由来のユニットで回転が鈍い。だが、充分な価格価値を備えていたといえる。

他方でTR4の人気が後押しし、6気筒エンジンのTR5はヒーレー3000を失ったドライバーを満たした。1969年までにMGCは8999台しか売れていないが、TR5は1967年から1976年までに約10万6000台がラインオフしている。

現在、1万8000ポンド(約289万円)を用意すれば、悪くない状態のMGCを英国で探せる。ライバル関係にあったTR5は、同年式では5万ポンド(約805万円)を下らない。

そのかわり、4気筒エンジンのTR4や改良版のTR4 Aなら予算に軽く収まる。6気筒のMGCとは個性が大きく異なるけれど。

TR4はセパレートシャシー構造で、その起源が1950年代にあることをうかがわせる。ウッドパネルのダッシュボードは、豪華で居心地が良い。MGCは、ブラックのレザートリムで仕立てられシックだ。

ゆったり走る特性を活かし、メルセデス・ベンツSLのようにまとめていれば、MGCの運命は違っていただろう。手頃で豪華なグランドツアラーとして。しかし、ヒーターですら15ポンドのオプションだった。

ドライバーの腕を試すような能力

TR4 Aのリア側には、小さなベンチシートが備えられ、子どもなら座ることができる。サリートップと呼ばれるソフトトップは、フレーム付きのMGCより開閉が簡単。アルファ・ロメオ・スパイダーのように、片手での開閉は難しいが。

TR4はリジッドアクスルだが、改良版のTR4 Aはセミトレーリングアーム式へアップグレードされている。直接比較しなければ違いを体感しにくいが、ドライバーの腕を試すような能力を秘めている。

ステアリング・フィールは自然。手のひらには、タイヤへの入力によるキックバックが伝わるものの、シャシー特性はニュートラル。コーナーでは、意欲的にラインを選べる。

セパレートシャシー構造が生むスカットルシェイクも、筆者は気にならなかった。トライアンフの個性として受け入れられる。

乗り心地はフラットで硬め。背骨に振動が伝わるほどではないものの、モノコック構造で遥かに剛性の高いMGCほどサスペンションは仕事をこなせない。気がつけば、大きな路面のくぼみは避けて運転していた。

ロングストローク型の4気筒エンジンは、ノイズが大きく荒っぽい。ハイリフトカムが組まれ、低速域でのトルクと引き換えに高回転域でのパワーを得ている。ドライバーの気持ちを掴むように。

4速MTには、2速から4速で選択できるオーバードライブが備わり、実際は7速のようにも楽しめる。どんな場面にも適したギア比が用意されている。

穏やかで洗練された雰囲気を放つMGC

MGCへ乗り換えると、6気筒らしい滑らかなエンジンの質感へ惹かれる。反応はおおらかで曖昧だ。重たいフロントノーズは、タイトコーナーで外側へ膨らもうとするが、アクセルペダルの加減でテールを振り回すことも不可能ではない。

ただし、大きなステアリングホイールのロックトゥロックは3.5回転とスロー。素早く腕を動かす必要がある。

5000rpmまでしか回らないが、不満ない加速には3500rpmもあれば充分。反応がタイトとはいえないものの、シルキーな味わいのまま、低速域まで粘り強く対応してくれる。ロングなギア比を補うように。

0-97km/h加速は10.0秒。1967年当時の動力性能としては、不足ないものといえた。

2台とも握りやすい位置へシフトレバーが伸び、変速時にギアの回転数を合わせるシンクロメッシュは丈夫。リズミカルに次のギアを選べる。

スタイリングは甲乙つけがたい。TR4 Aのクリクリしたヘッドライトが心へ響く一方で、MGCのクリーンなボディラインも捨てがたい。ボンネットの膨らみや、MGBより大きなホイールも悪くない。

イタリア車やドイツ車が高価だった時代に、MGCは巡って来たチャンスを活かせなかった。少なくない小さな弱点は、修正されることもなかった。追い打ちをかけるように、優れた日産フェアレディZ、ダットサン240Zが日本から北米へやってきた。

エンジンの印象は6気筒の方がベター。それを踏まえて、穏やかで洗練された雰囲気を放つMGCへ筆者は傾いてしまう。弱者を応援したくなる気持ちも加わって。

協力:サイモン・ナトール氏、ケン・ブリットン氏

MGCとトライアンフTR4 A 2台のスペック

MGC(1967~1969年/英国仕様)

英国価格:1102ポンド(新車時)/3万ポンド(約483万円)以下(現在)
販売台数:8999台
全長:3886mm
全幅:1524mm
全高:1219mm
最高速度:193km/h
0-97km/h加速:10.0秒
燃費:6.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:1116kg
パワートレイン:直列6気筒2912cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:147ps/5250rpm
最大トルク:23.4kg-m/3400rpm
ギアボックス:4速マニュアル

トライアンフTR4 A(1965~1967年/北米仕様)

英国価格:801ポンド(新車時)/3万5000ポンド(約563万円)以下(現在)
販売台数:2万8465台
全長:3962mm
全幅:1461mm
全高:1270mm
最高速度:177km/h
0-97km/h加速:11.4秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:1222kg
パワートレイン:直列4気筒2138cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:105ps/4700rpm
最大トルク:18.2kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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